フロリダ州、北東部にある小さな街、バナール。
その頃、その街の近くに、マルコポーロパークという名のアミューズメントパークを建設する計画があり、その中の日本村の設計士の仕事を得て、フロリダに単身赴任した。
あやふやな会社だから、南カリフォルニアに家内と2人の娘を残して来た。
社長のバブ バーンズと私と秘書の3人きりの会社だから、いつ消えるのかわからない。
私の給料はカリフォルニアの倍あったので、半分を家内に送り、私は残りの半分を使ってフロリダで生活していた。
車もガソリンもアパートも会社持ちだから、食べるだけにしか金はかからない。
建設予定地の土地は広い。
何しろ6000エーカーもある。
1エーカーが1200坪だから、6000エーカーの広さがわかるだろう。
人を受け入れない未開の地で、中には毒蛇や熊、猪、鹿の他に鰐、亀もわんさかいて、底なし沼に入り込めば、1人では出られなくなるという土地だ。
設計図のための測量さえ、ままならない。
その森にというか、フロリダに精通しているジェシーを、私の案内人につけてくれた。
ジェシーは黒人で、その街から出たことのない男だ。
訛りもひどく、カリフォルニアで日系二世とメキシカンの間で仕事して、英語がカタコトの私は、会話が出来ない。
筆談しようと思ったが、ジェシーは文盲だからそれも出来ない。
背が高く40半ばで片目がつぶれているので、私を斜めに見る。
人相が悪く愛想もないので、初めの印象は凶悪犯のようにも見える。言葉も少ない。
だが、少しずつジェシーを知ってくると、素朴でよく働くいい男なのだ。
つくづく、人を見た目で判断出来ないと思った。
ジェシーは刃渡り60センチほどの蛮刀を持っていて、それで椰子や樹木を叩き切って、森に路をつけてくれる。
老木を大切にしながら、森の奥へと入って行った。
ブルドーザーのオペレーターも黒人で無口だか、言う通りに仕事をしてくれる。
彼の名前はショーリーだが、ほとんど1日ブルドーザーの上にいる。
大切にしている樹木を上手に残してくれるのと、沼にはまり込まない技術を持っていた。
ブルドーザーが陸亀や蛇、ワニを追い出して、ジェシーが捕らえて料理して食べる。
私は何でも試して食べるので、ジェシーも喜んでいた。
最初3人で始めた現場も、働く人間が20人30人と増え、日本建築が始まる頃は100人余りが働いていた。
私は全てに関わっているので、目が回るように忙しい。
日本からも後輩が手伝いに来てくれて、別々の仕事を進めて完成を急いでいた。
日本建築のある日本村は、島の中にあって、屋形船と橋で結んでいたが、周遊するのに40分くらいの時間がかかる。
つづく

