これまでのストーリー

ところが、50年近く前に彼女たちも関わった、今は無き幻のマルコポーロに、深いノスタルジアを感じていたらしい。

その上、そこに関わった農大の後輩の徳永が亡くなって、その灰をその辺りに撒いたのだが、それが消えてなくなるのではと、心配までしてくれていた。

その近くには、フロリダの州の宝物がある。

樹齢2000年のかしの大木である。

私の若い頃、すでに2000年の石碑が建っていた。

今もある。

フロリダの州立公園になっているが、その木について特には触れてないので、知る人は少ない。

年に数百人が訪れるくらいだろうが、樹齢2000年にもなると風格がある。

深い森の中に、枝張りが50メートル以上あり、太い枝が地上にくっついて、そこに根を張り、更に数十メートル枝を広げている。 

フロリダにいた頃、私はそこに日本から来た友達や父を連れて行った。

皆その見事さに感動した。

フロリダは、海の風が吹くので高くはならない。

フロリダは、雷が多いので被害に遭っているのだろうが、その傷もない。

人間は、100年生きる人は少ない。 

私がその木に初めて出会ってから、50年の月日が経っている。

50年経っても全く変わらない。

そこに徳永は眠っている。

時々会いに行って、「おい、来たぞ」と、言葉をかけている。

この男もマルコポーロの仲間だ。

彼女には、あとふたり親しい友達がいて、そのひとりがオーランドに住む千代ちゃんで、もうひとりの浅田くんは、大阪に住んでいるという。

このふたりにも幻のマルコポーロを送ったら、大喜びしていたらしい。

「短調」102号に書いた、「宝物」という詩も、そのふたりは、いたく気に入ってくれたというのである。

幻のマルコポーロに関わった人たちが、50年ぶりに私の心の中に急速に飛び込んできて、新しい宝物が増えたみたいに嬉しく思っている。
                                                          つづく