このコマツグミは渡り鳥で、春になるとノースカロライナにやって来る。
カロライナの人々は、この鳥を見ると、もう春だと思う。
日本でいうツバメのようなものかもしれない。
この鳥は我があばら家でも巣を造って、ひなを育てていることが多い。
アメリカハナミズキの木、ドッグウッド(ハナミズキは英語では「犬の木」を意味する)に巣を造るが、丸見えである。
通り道なので、音を立てないように通りながら見てみると、巣の中に体を沈めて、尻尾とクチバシだけが見えている。
隠れているつもりだろう。
ひなが育ち始めると、巣から立ち上がって餌を求めるので、猫やポッサムが心配だ。
育って巣立ちしてくれると、ほっとする。
この鳥、夏はそれほど目立たないが、秋になるとそのハナミズキの紅い実を食べに来る。
冬空に紅く実るハナミズキの実には、冬中そのままであってほしいが、ロビンは大好物だから、一粒残さず食べてしまう。
その実が庭から消えると、ロビンも旅立って行くらしい。
その後に、言いようのない淋しさが漂う。
それは、数日前まで真っ赤に庭を彩っていた実が消え、枯葉だけになり、毎日、数羽、数十羽で訪ねて来ていたロビンが、姿を消すからだろう。
秋の青い空から柿が消え、ハナミズキの実が消え、そこに年老いた私ひとりが居る寂しさかもしれない。
ところが、今年は違った。
孫の家はフロリダの北部にある。
そこで庭造りをしている時、冬なのにロビンに出会った。
12月の終わりだ。
ロビンの顔は似ていても覚えてはいないが、北からやって来ているに違いない。
誰一人知る人もいない異郷で、ロビンとの出会いは旧友に再会したような喜びがある。
そういう感覚は、私だけのものかもしれないが、近所に人ひとり親しみのない所で、我が庭で育ち、実を食べ尽くして去って行ったロビンには、誰よりも親しみを覚える。
そうして、更に南フロリダに旅して、再びロビンに出会った。
フロリダとノースカロライナを旅した数は多いが、ロビンと時を同じくして南下し、北上したのは初めてだ。
ノースカロライナに渡って来るのも、数日の事だろう。その初めて目撃した日をカレンダーに印しておきたい。
1日も早く戻って来る日を心待ちにしている。

