ムーンシャインというと「月の光」、普通の日本人はそう思うだろうが、これは南部に広がっている密造酒の名前である。
これは違法だから店では買えない。
その値段も、市販のウイスキーと同じである。
日本人で酒好きの人は、幻の酒と呼んで探し求める人が多いが、私のようなレッドネックを通さないと手に入らない。
密造して捕まったら、刑務所行きだ。  
その酒を売るのには危険が伴う。
日本から来た友人が飲みたいというので、何度か買い求めたことがある。
水のように透き通っている。
それが、野菜のビン詰めの瓶に入っている。
五合くらいだろうか。
五合という言葉も今は無くなった。
1リットル位だろうか。
酒の飲めない私は、そのにおいで酔ってしまう。
友達は、うまいと言って時間をかけて飲んでいた。
私には、その味は全くわからない。
その酒に桃を漬け込んで、ビーチブランデーと呼んでいる。
私の町でも密造する人間がいて、手入れがされている。
どういう訳か、人は捕まえない。
シェリフも顔見知りだからか、どうせ国の仕事だからと思って手伝わないのか、捕まった話は聞かない。
その密造酒の運び屋が、ナスカーのレーサーになって何人か活躍した。
今はナスカーの方が金を稼ぐから、運び屋なんかする者はいない。
近所に住む、ある有名なレーサーが、家に逃げ込んで来て、匿ってやった話を聞いたことがある。
彼も有名になる前、そういう危ない橋を渡っていたのだ。
彼が現役の頃、私もそのファンになっていた。
ムーンシャインが手に入るというのも、私がレッドネックという証明かもしれない。
そのルートもいくつかあって、同じ人間から買わない。中には、水で割っているのがあるらしい。
私には全くわからないが、酒好きには分かるらしい。