(LIGHTS HER 4TH CIGARETTE)
マリアに生まれ変わった私は、退院するとヒロシとすぐに連絡を取ったわ。隣町のサ店。知ってる顔に出くわしたくなかったの。全てを生々しく語ってあげたわ、彼の仕草や態度を伺いながらね。私がひととおり話し終えると、閉ざされていた彼の口が開いたの。「これからどうするつもりだ?」って。(SCOFFS)私は鼻で笑いながら、バッグから取り出したヴァージニアスリムに火を点けたわ。ヒロシは絶句よ。まあ、当然よね。それまでハエの一匹すら殺せなかったお嬢様が、彼の顔に白い煙を吹きかけたんですもの。驚きを隠そうと必死で平静を装う彼に、私は予め用意しておいた台詞を吐いたわ。「レイプが目的だったのなら、何であんなに腹を蹴られたのかしらね。まるで私を流産させるのが目的だったみたいよね。あなたもそう思わない?」彼の切れ長の瞳からは怒りと焦りが読み取れたわ。「マリコさんっていったかしら、あなたの彼女。彼女がレイプされないように配慮してあげなさいよ。あ、彼女はされないか、妊娠してないから」明らかに動揺していたわ。「ねえ、知ってる?罪は償わなければいけないものなのよ」そう言い捨てると、私はクールに店を出たの。
抑えようのない怒りが込み上げたわ。何かを思いっきり噛み締めたくて、バッグからハンカチを取り出すと、それを口に放り込んだわ。体が震え、視界が曇り、呼吸すら忘れていたわ。運転どころではなかった。
学校は辞めたわ。ピアノも車も売り払った。ひろ子が愛用していたダサい洋服も捨てたわ。私は完全に生まれ変わったのよ。ショパンやユーミンにも別れを告げたわ。中山美穂の髪型を真似るのもやめた。
街を離れる準備を着々と進めていたわ。だけどね、その前にひとつだけやっておかなければならないことがあったのよ。