向島界隈
東京は隅田区向島‥この辺り一帯の花街でも有名な料亭Mで仲居をしていた叔母(ミヨの長姉)が独立して小料理屋を開店するに当たり母に白羽の矢を立てた。叔父(ミヨの次兄)の印刷業を手伝っていた母は当然のように「渡りに面白い舟!」とばかりトラバーユ、叔母の住む長屋にホームステイ。同じ河っぺりでも川崎(多摩川)と東京(隅田)じゃ賑わいの品格が天と地だ!浅草、上野、東京、銀座が近く向島の贔屓筋はみんな垢抜けた男達!‥チャンスの数が違う。叔母の住む長屋が凄い‥五軒続きの二階建てで木戸付き、江戸情緒たっぷりで大家は一階角の駄菓子屋の婆さん、住人はヤクザと情婦、芸者、金貸し婆さん、大工‥木戸門の前が神社、まるで落語の世界だ‥しかも二階は半分が広間になっていて博打開帳は日常茶飯事(ゴト)。この時期、叔母の店の常連客に板前とヤクザ(博打打ち)の二足の草鞋を履く若い衆がいた‥背の高い細面の二枚目、役者顔で‥。だいたいがこのタイプの相場は絶対ヤバイ!のだが‥案の定引っ掛かっちゃった‥「色男金と力はなかりけり‥」そ
して無責任だった‥。こいつがオレの親父‥初代!
この頃の母親は「ネンネミヨ」‥まだ子供だったはずだ。だがここから母の運命は迷走の一途を辿る事になる!オレはまだオタマジャクシで‥昭和27年春の宵、東京タワー完成六年前の出来事だった。
して無責任だった‥。こいつがオレの親父‥初代!
この頃の母親は「ネンネミヨ」‥まだ子供だったはずだ。だがここから母の運命は迷走の一途を辿る事になる!オレはまだオタマジャクシで‥昭和27年春の宵、東京タワー完成六年前の出来事だった。
