名古屋に僕が「ジョニー」と呼んでるダチがいる。2つ年上なんだけど、彼は大学生の頃から学習塾をやっていて、僕は教材作りの手伝いをしたり、夏、冬の休暇には帰省して講師のアルバイトをしていた。消息不明中は、実家へは帰らず、ジョニーの家に滞在して夏期講習のアルバイトをした。

 ある日、そのジョニーから「君のお父さんが塾に来たよ」と、電話があった。昼間、2階の事務所で授業の準備をしていて、ふと窓の下を見たら、塾の前に車が止まり、背広を着た僕の父が出てきたんで、「どえらいビビった」と。そりゃあ、ジョニーは事情を知ってたんで、色々と詰問されるんじゃないかと思ったんだろう。

 

 ジョニーによれば、父は詰問どころか、質問さえも一切しなかった。ただ、「これを持ち歩いて、毎日読んでるんだよ。そしたら、昭宏が何を考えてるのか分かるんじゃないかと思ってね」と言って、ポケットから取り出し、ジョニーに見せたのは、僕が送った「恐ろしい手紙」が入った封筒だった。中身を見なくても趣旨は分かっていたジョニーは、色々と気を使って話をしてくれたらしい。「彼は自分の学歴を他人に自慢するようなことはまったくなく、とにかく自分の力だけで前に進もうとしている。僕は、彼のそういうところが、いつも凄いと思ってるし、好きなんです」とか、ね。父は、終始黙って話を聞いて、最後に「ありがとう」と言って帰っていったとのこと。

 

 9月になって、僕は東京にいる親戚を訪ねた。もちろん、こちらの事情を話すつもりはなかったけど、両親の様子が分かるかもしれないと思ったからだ。すると、「なぜかお母さんからあっちゃん宛ての手紙がうちに届いてるよ」といって、封筒を渡された。内容は、「お盆にお父さんと旅行をして、帰ったら私は死にます。これまで優しくしてくれたお父さんには申し訳ないけど、もう生きる意味がない。命がけで育てた親よりもロックを選んだあなたを恨みます」というもの。なかなかヘビーだけど、分かっていたことでもある。酷い話だとは思うが、アパートを引き払う時点で、覚悟はあった。

 

 10月。そろそろ就職活動とかっていう時期でもなくなってるし、いい加減、両親に連絡をしようと思った。

2020年1月2日@新宿サナギ