STARDUST FIVE-95 | RED EYES

RED EYES

ウルトラ小説

∽∽RED EYES∽∽
★THE STAR☆DUST FIVE★
Episode.95
「Mr.Giant」

『…コート上の時間は止まったまま、
 張り詰めた空気が
 支配しております!!
 試合終了間際、
 このフリースローを決めれば逆転!!
 さあ!!
 決めて魅せてくれ!!』

それはテレビから流れるバスケットボールの試合中継。ぼんやりとそれを見ているのは病室のベッドに座るアカバネユウトと、付き添いのキサラギミライ。ここは東京湾沖のJSMR怪獣対策本部基地メディカルセンターの病室。
対イーヴィルマカオン戦において負傷したユウトは、又してもここに戻る羽目になる。負傷というよりも、赤毛の巨人ジークライトが『時の超越者』としての能力を発動するに至ったドラゴニックフォームへの進化が、人間体に多大な負担をかけている、というような状態である。身体的には特に異常は見られず、外傷もない。状態としては著しい体力の消耗、としか説明できない。

「…しっかしくーさんも挨拶もなしに
 手紙ひとつで済ませるとはねー。
 冷たいねークールだねー。
 さっすが王子様。
 いやーな感じー!!」

ふてくされた顔でそう言うユウト。くーさんことマカオン・Q・グランポルトは事件終息後、自国からの迎えで早々に連れ戻されていた。勝手なお忍び旅行とはいえ、ニッポン国内で怪獣災害に巻き込まれたとなれば、一歩間違えれば国際問題にもなりかねない事案。そこに関しては、マカオン自身がうまく弁明したようで、事は穏便に済まされた。だが当事者であるミライやユウトとは、一度も面会の機会を設けられることがなかった。身分が違うと言えばそれまでだが、別れの挨拶くらいはしたかった。

「…っていうか助けられたの
 アナタの方じゃない??」

素っ気なく言い返すミライ。挨拶はできなかったが、こうして後日、手紙が送られてきたのである。その文面には、感謝の気持ちが散りばめられていた。

「…くーさんにはくーさんの
 人生があるもの。
 きっとこれからもっと大変。
 心は自由に羽ばたけたけど、
 これまで以上に不自由になるかもね。
 でもくーさんはもう大丈夫。」

これから先、遠く離れたグランポルタント公国の王子と、再び巡り合う奇跡があるかは定かではない。しかしマカオン、いやミライにとってはくーさん。彼が未来に希望を見据えて生きていくことを誓ってくれたことが、嬉しかった。それで十分だった。

『…高校卒業を機に単身渡米、
 ニッポン人としては規格外の身長と
 驚異的なパワーで
 バスケの本場に殴り込み、
 各チームでセンターの座を掴み続け、
 遂に名門ニューヨークオリトランズの
 キャプテンとして
 不動の地位を獲得!!
 今日はチーム引き連れての
 凱旋帰国!!
 チーム・オールスタージャパンとの
 親善試合も接戦極まり
 試合終了間際!!
 今日の主役は彼以外に
 考えられない!!
 ミスター・ジャイアント!!
 さあ勝敗分ける一投決めてくれ!!』

テレビの中の静まり返ったコート上、フリースローラインに立つ、赤に白ラインのユニホームの選手。全身を縛り付けるように両腕両脚に黒いサポーターをしている。優しさの窺える垂れ目がちな目許と、爽やかなニッポン人らしい黒髪。そして何より一際目立つ背の高さ。




興奮抑えられぬ実況アナウンスとは相反して、その選手はとても落ち着いた様子だった。そして網のかかった小さなリング状のゴール目指して、すっとシュートを放つ。皆の注目を一点に集めて宙を舞うボールは、誰もがゴールに吸い込まれると確信できる美しい曲線の軌跡をなぞっていて…。

『!!』

しかしシュートが決まって上がる筈の歓声が、悲鳴に変わった。ボールが宙で破裂したのである。

『…これはどうしたことでしょう!?
 前代未聞のアクシデントです!!
 おっとどうやら
 仕切り直しのようです!!
 試合が一旦中断される模様で…』


テレビの中の試合会場は騒然としていた。投げた選手は案外冷静。頭をかいて苦笑い。状況が飲み込めていないようにも伺える。

「…なんだろ?
 …嫌な予感がする。」

何気なく見ていたバスケの試合中継。誰が見ても衝撃の瞬間。しかしミライは、イラストレーターとしての直感で何かを感じていた。大きな不安が脳裏をよぎるが、それが何なのか、彼女はまだ理解できていなかった…。





「…間違いないのね?」

神妙な面持ちでそう問うのはJSMRユウキ隊長。真っ暗な空間に、立体映像のようなモニターが所狭しと浮かび上がる狭いフロアでのこと。

「…はい。」

そう答えたのはオペレーター・タザキ隊員。ここは彼女専用のオペレートフロア。ここからJSMR怪獣対策本部の全てを管理把握している。電脳世界において千里眼のような能力を有する彼女も又、いわゆる超能力者、イラストレーターの一人である。

「…結論から言って、
 レイドウ参謀は黒です。
 これまでキラサワミキオを
 15年前のレッドアイズ
 最後の生き残りかも知れない、
 という仮定で調べていましたが、
 巧妙すぎるデータの改竄で、
 先に進むことができませんでした。」

吉良沢 幹雄(キラサワミキオ)とは、15年前のレッドアイズ最後の生き残り、と想定されている人物である。
15年前、漆黒の巨人ルビーアイ・クロイワヒロトと、表立って戦った記録はなく、JSMRとしては可能性の域を出ないが、レッドアイズになり得た可能性のある10人のうちの一人としてだけ把握している。事実、10人中9人は、クロイワヒロトが戦って倒している。別の要因もあるが、とりあえずこの世から抹消されている。
よってキラサワミキオとは、JSMRからすれば把握し切れていない事実だが、正真正銘、15年前のレッドアイズ最後の生き残り、なのである。そして行方不明、生死不明、完全に消息を絶っている。その存在自体が抹消されたかのように、ある時を境にデータが改竄されているのである。

「…しかしレイドウ参謀、
 いえレイドウミキオと
 キラサワミキオ、
 この2人の接点を探る視点で
 調べてみると、
 あらゆる観点から共通点が
 浮かび上がってきたのです。
 キラサワミキオの情報が
 途絶えたのと、
 レイドウミキオの情報が
 上がり始めた時期が、
 完全に一致したのです。」

モニター上に表示されるレイドウ参謀の顔写真とプロフィール。その隣りには、顔写真こそアンノウン扱いだが、プロフィールが表示されていた。

「…つまりこの2人は
 同一人物だと言いたいのね?
 確かにレイドウ参謀の過去は
 不明な点が多いし、
 それを追及することもタブーだった。
 下の名も同じだけど、
 でもだからって…。」


にわかには信じ難いことに半信半疑なユウキ隊長。

「…関連してもうひとつ。
 ダイアモンドレディーだった
 女性の意識が戻りました。
 彼女の素性も全てが抹消されていて、
 これまで正体不明でした。
 意識が戻ったものの精神障害、
 記憶も失っていました。
 しかし自分の名前だけは思い出し、
『エチゼンユウコ』と名乗ったのです。
 名前から検索した結果、
 特定の人物と照合、
 確かにエチゼンユウコ本人に
 間違いありませんでした。
 そして彼女には離婚歴があり、
 離婚前の名字は、
 …『キラサワ』でした。」

モニター上に新たに表示される女性の顔写真。越前裕子(エチゼンユウコ)という名前から始まるプロフィールも表示されていた。彼女はここ最近のレッドアイズ事件、コードネーム・ダイヤモンドレディーの核となった女性。彼女はタチバナエイジ扮する青き巨人ディープ・スラッシュによって撃退され、そして奇跡的に救われていた。

「…キラサワって、
 それまさか…。」

奇妙な符号点にユウキ隊長は驚きを隠せない。

「…はい。
 恐らくキラサワミキオの元夫人です。
 これも全く証拠がありません。
 完全に抹消されています。
 しかしその可能性と、
 キラサワ=レイドウという
 仮説を踏まえて、
 彼女にレイドウミキオの顔写真を
 確認してもらいました。
 するとその顔写真の男を、
 キラサワミキオと呼んだのです。
 彼女の精神状態は大変不安定です。
 この証言は確かな証拠としては
 認められません。
 しかしこの事実は、
 ワタシの仮説に
 確信を持てるものでした。
 レイドウミキオは
 キサラギミキオであり、
 15年前のレッドアイズ最後の使者に
 間違いありません。」

モニターなんぞに視線は向けない。バイザーを外し、真っ直ぐに訴えかけるように、ユウキ隊長の目を見て、そう断言するタザキ隊員。バイザーで隠さぬその瞳は、黒目が白濁し、視点も定まってはいない。
彼女の目は失明していた。視力を失ってあるべき形を維持せぬ目を、他人に見られるのが嫌だった。しかし彼女は敢えて自分をさらけ出し、何一つ証拠のない真実を訴えかけた…。




「…それで変装したつもりかい?
 スーパースターが
 独り歩きとはちと不用心だぜ?」

深夜、とある街の路地裏で、そう声をかけられて振り返った男性。パーカーのフードを深く被り、夜なのにサングラスをかけ、マスクで口許を隠していた。

「…目立ちすぎだろその身長。
 2m30だってな?
 未だに伸びてるっていう噂は
 マジかい?」

隠していても無駄と悟った男性は、フードを脱ぎ、サングラスとマスクを外した。晒された顔は、バスケットボールの試合中継、試合終了間際のフリースローで謎のアクシデントに見舞われた選手であった。

「…警告には気付いてくれたかい?」

それは試合中にボールが破裂したことだと、すぐに察した。

「…なあ、
 オマエ強いんだってな?
 ちょっと試させてくれよ。
 ミスター・ジャイアント。
 …いいや、
 ツガマモルさんよぉ?」

そう呼ばれた人物は、相手が人違いで絡んできているのではないことを察した。しかし何を言っているのかさっぱり分からなかった。

「!!」

刹那、ツガの巨体がくの字に曲がった。次の瞬間、垂れ下がった顎が、今度は弾き上げられた。そして地べたに倒れ伏す。何が起きたのか全く理解できなかった。しかし腹部と顎の激痛で、殴られたのかも知れないと、後から理解し始める。

「…なんだよ、
 デカい図体は見せかけか?
 只のでくのぼうかよ。
 もっと楽しませてくれよ。」

近付いて初めて見た相手の顔。その眼は赤く煌めいていた。ひび割れた浅黒い肌をして、黒い戦闘服に身を包んでいる。レッドアイズ・アサカである。トゥエルヴの力をコピーし、イレブンとして闇の使者に堕ちた彼は生きていた。
ツガはその正体を知る由もないが、人ならざる気配を察し、恐怖した。

「…早くに親に捨てられて
 孤児院育ちだっけか?
 生きてく為には何でもしてきただろ?
 その図体じゃ喧嘩負けなしか?
 バスケなんかしてスポーツマン
 ぶってんじゃねーよ!!」

アサカの罵声と共に、ツガは腹部をサッカーボールのように蹴り飛ばされ、自分の巨体が浮いて飛ばされる感覚に驚いた。そして何処ぞのビルの壁に叩き付けられる。
激痛はいつも後から追ってくる。血反吐を吐いていることに驚き、内臓の異常を察した。内臓破裂しているかも知れない。次の試合は無理かも知れない。不思議と冷静な自分に驚いてしまう。

「…見せてみろよ。
『ツガイ』とやらの『星の記憶』を
 持っているんだろ?
 我が主がオマエを求めている。
 だがオレは認めない。
 オレが切り札だ。
 キサマはいらない。
 
 …コ・ロ・シ・テ・ヤ・ル」

アサカはそう言って、腰のベルトにバックルを当てがった。禍々しく棘のあるオーラが巻き起こり、肉体が鋼鉄のプロテクターに覆われていき、異形のモノへと変身していく。
これがツガマモルという人物の日常が壊れた瞬間であった…。

~つづく~