STARDUST FIVE-39 | RED EYES

RED EYES

ウルトラ小説

∽∽RED EYES∽∽
★THE STAR☆DUST FIVE★
Episode.39
「The dragon is necessary.」

…あぁー
…オレ生きてんのね
…まだロックの神様が死なせてくれない
…ってことかな?

それは東北地方で発生したダイヤモンドレディー事件後、JSMR怪獣対策本部メディカルセンターに収容されたタチバナ エイジの証言の抜粋である。

…もうオレに光は残ってないっぜ?
…どっか飛んでっちまったよ
…だから何度も言ってんじゃねーの
…あれは急場しのぎの暫定仕様よ
…ほらオレってやっぱ正義の味方じゃん?
…根っからのヒーロー体質なのよね
…やるっきゃねーじゃん

彼はスターダストファイブの光を宿し、その力で青き巨人ディープ・スラッシュとなった。そしてダイヤモンドレディーを撃退した。事件直後にJSMRブルーチームの前に姿を見せた彼は、そのことを隠さない。

…でもオレってば心臓病じゃん?
…変身して戦える身体じゃねーのよ
…過去の栄光引っさげて張り切ったけどね
…つーか歳かな?
…オッサンじゃダメってこと
…オレは運命のヒトじゃねーってね

彼は心臓病だった。元JSMR総司令官だったが、退役理由もそれであった。しかし彼は過去、青き巨人として戦った経験があった。その記憶を元に、改めてディープ・スラッシュとして実体化したのである。

…15年振りのレッドアイズっか
…あの時は参ったねー
…究極の闇とかマジ勘弁よ
…今回も残虐極まりねーな
…だが卑下しちゃダメだ
…オレ達が逃げちゃダメなんだ
…ヒトとして精一杯戦ってりゃあーさ
…そりゃ奇跡のひとつも起こるってもんよ

この証言は現JSMR総司令官ユウキ ユイ隊長との会話に基づいている。彼女も又、彼に隠し事はしなかった。それまでに得ている情報を共有し、その先へと進もうとしていた。

…例の女性はどうした?
…そっか
…まあ生きてるだけでめっけもんだな
…あの女性の周辺を調べてみるこった
…ありゃ相当な怨恨が裏にあった
…下手すりゃ元締めの首が捕まえられる
…かもよ?
…ミイラ取りがミイラにならねーこった
…相手は油断も隙もねー闇だからっな

例の女性とはダイヤモンドレディーのこと。大いなる闇に利用されたとある女性。レッドアイズ化した時点でヒトとして死んでいるに等しかったが、スラッシュの全てを浄化・昇華する究極の光の刃によって、再びヒトとして再生されていた。現在はやはりJSMRメディカルセンターに収容されている。身体的には正常だが、精神的負荷の影響で未だ意識は戻らない。

…それよかトゥエルヴを確保してるって?
…そりゃ掘り出しモンだぜ?
…いぃーや
…あれこそ究極の光
…あれが今回のスターダストっつーなら
…正義はスターダストにある
…最後の切り札ってやつだ
…まー信じてやるこった

それはサエキ トウジのこと。紅き巨人トゥエルヴ・タイプDとして戦って勝利したものの、その膨大なパワーの影響で未だ意識が戻らぬまま、エイジ同様にJSMRメディカルセンターに収容されている。

…しっかし気を付けるこった
…敵も馬鹿じゃない
…最強の力は狙われる
…暗殺なんて生易しいもんじゃない
…利用しようとするぜ?
…それが闇ってもんだ
…用心しとけよ

そう進言されたユウキ隊長は一抹の不安を抱きつつも、この段階では取り立てて問題視してはいなかった。何よりも収容先はJSMRメディカルセンターである。それは東京湾沖の移動要塞基地であり、世界広しと言えどここ以上に安全な場所はない。確かにそう確信していた…。

舞台は変わって、そこは東京都心のとある美術大学。キサラギ ミライの在籍する美大である。しかしスポットライトは別の人物をクローズアップしていた。女性のような綺麗な顔立ちをした男性である。
彼はこの美大の学生らしく、見知った友人とすれ違う度に挨拶を交わしていた。そうして勝手知ったる構内を進んでいき、次第にひとけのない奥まった陰気な場所にあるとある部室の前で立ち止まった。
その部室には『ヴレイブソウル研究会』と記された表札が張り付けられており、彼は躊躇することなくドアを開けて入った。その部室内は元々狭いが、それに輪をかけて足の踏み場もない程の書籍の山が面積を占めていた。それでも決まった道筋があるかのように書籍の山を縫って進んでいく。

「…おぅ、
 …アカバネじゃないの。」

部室内の奥のデスクにかじりついていた人物が、背後の気配に気付いて振り返り、その顔を見てそう言った。
そう、彼はアカバネ ユウト。ミライに突然の告白をした上にミズキに刃を向けた、アカバネ ユウトである。

「…先輩、
 相変わらず汚い部室っすね。
 これじゃ誰も近寄りませんよ?」

気さくに笑ってそう言うユウト。

「…薄っぺらな興味本位の
 奴らに用はないさ。
 ここは本当にヴレイブソウルが
 好きな奴だけが来れば良い。」

先輩と呼ばれた人物は、再びデスクに視線を戻し、美大生らしくスケッチブックに何やら描きながらそう答えた。

「…リュウザキ代表ぉー。
 新入生の勧誘だって必要でしょ?
 大学のサークル活動だって
 部費みたいなもんがあるんでしょ?
 部員がいなけりゃ部費出ないでしょ?」

食い下がっておちょくり続けるユウト。

「…オマエが来てくれたじゃないか。
 本当に興味のある奴は
 黙ってたって集まってくるんだよ。」

リュウザキ代表と呼ばれたその人物の返す言葉に揺るぎはなかった。彼はここヴレイブソウル研究会と銘打ったサークルの代表、竜崎 渡(リュウザキ ワタル)24歳。ここ美大の四年生である。既に卒業していておかしくない年齢であるが、毎年単位が足らずに留年扱いのようである。ちなみにこのサークルに所属する学生は、代表であるリュウザキ自身と新入生のユウトだけである。

「…ハハハ、違いない。
 しかしヴレイブソウル研究会ってね。
 何を研究してんだか。
 愛好会の間違いでしょ?」

後輩であるユウトは、しかし言葉遣いがどうにも先輩に対してのそれではなかった。だがリュウザキは気にしているふうではない。

「…おとぎ話だって言いたいのか?
 そりゃそうだろうよ。
 ヴレイブソウルは
 ヒトが剣と魔法を扱い、
 神と悪魔に挟まれた世界に住まう物語。
 正真正銘のファンタジーだ。
 だが世界に伝承される
 稀有な物語でもある。
 その実在を証明する
 物証すら残されて…」

「…この竜人の剣、みたいに?」

熱く語り始めたリュウザキの言葉を遮るように、懐から取り出した小刀を差し出してそう言ったユウト。それはミズキに突き付けた竜の耳のような装飾のある小刀である。

「…あーてめー
 また勝手に持ち出しやがったな?
 …ったくおめーは
 それがいたくお気に入りだな?
 ヴレイブソウルっつーより
 それが好きって感じだよな?」

再び振り返ってユウトの持つ小刀を目にしたリュウザキは、怒った口調でそう言った。しかし口調ほど怒っているふうでもなかった。

「…まあね。
 この剣を見たとき、
 ビビッときちゃったんだよねー。
 これぞ正しく運命の出逢いってやつ?」

屈託のない笑顔を見せてそう答えるユウト。

「…まあ良いさ。
 そんなもん欲しけりゃくれてやる。
 オレはもう十分調べ尽くした。
 何も解りゃしなかったが、
 正体不明ってことが
 逆に真に迫っている。
 それが伝承上のモノだという
 可能性を否定できないんだ。
 それは伝承の実在を
 否定できないのと同義。
 それだけで十分に有意義だったさ。」

リュウザキは、その雰囲気からして変わり者のようである。彼は美大生であったが、まるで一心不乱に古文書を解読する学者のような、興味のあることに対しては熱く集中するが、他のことには気が回らない。そういうタイプなのである。
それは彼の風貌からも察することができた。若者らしさの窺えない小汚い服装と、散髪を忘れた長すぎる髪の毛と無精髭。読み書きばかりしているせいか度の強い眼鏡をしているが、そのレンズにひびが入っていることを問題とはしていない。美男子と形容されるであろうユウトとは対照的である。むしろユウトが場違いなのである。

「…それで先輩、
 頼んでおいたモノはドコですか?」

熱く語り始めたら止まりそうにないリュウザキだが、それを断ち切るようにユウトはそう切り出した。

「…あぁーあれね、
 赤毛の勇者編ね。
 その辺に出しておいたぜ。」

リュウザキが指さすその辺とは、うずたかく積み重ねられた書籍の山のことなのだが、これ全てヴレイブソウル関連の資料なのである。はたして目当てのものが探し出せるのだろうか。

「…ところでさっきから
 何描いてるんっすか?」

リュウザキの手元の覗き込んでそう言うユウト。そこには下書き段階らしい鉛筆で描かれた怪物の絵があった。美大生らしく洗練されたタッチで、芸術的な仕上がりを見せている。

「…ドラゴンだよ。
 やっぱファンタジーだからな。
 基本、ドラゴンなんだよ。
 主役は勇者か?
 だがどうしてもドラゴンが欠かせない。
 RPGゲームの王道だって
 ドラゴンなんとかーって言うだろ?
 アイテム集めて願いを
 叶えてくれるのは何だ?
 やっぱりドラゴンなんだよ。
 宿敵にしろ希望にしろ、
 やっぱり最後はドラゴンなんだ。
 物語にはドラゴンが欠かせない。
 そのことを世界中の人々が
 心の奥底で認識している。
 それもつまりは刷り込み。
 恐らく世界中で連綿と語り継がれてきた
 ヴレイブソウルに起因している。
 …うん、
 オレはそう解釈しているね。」

熱く語りながら鉛筆を走らせ、スケッチブック上に描き出されたドラゴンに魂を込めていくリュウザキ。だがユウトは聞いていなかった。そそくさと部室のドア付近まで戻っていた。

「…じゃあこれ借りていきまーす。
 先輩の思い描くドラゴン、
 今度じっくり
 拝見させてもらいますよー。」

ユウトは心のこもっていない口調でそう言って部室を出ていった。その脇にはちゃっかり分厚い書籍が挟まれていた。それはリュウザキ曰く赤毛の勇者編というものなのだろう。

「…赤毛の勇者、か。
 竜人の血を引きし者の物語。
 やはりここにもドラゴンが介在する。
 物語はドラゴンを中心に紡がれていく。
 ドラゴンこそが世界を計る物差し。
 そう考えるのも面白いね。」

独り悦に至りながら目の前のスケッチブックに没頭するリュウザキ。彼は不躾なユウトのことなど気にはならない。唯、自分の世界に浸っていた…。

~つづく~