DELTA 1 | RED EYES

RED EYES

ウルトラ小説

=ULTRAMAN=
△THE STARDUST DELTA△
Episode.1
「Crimson Star」

地球より遥か幾何万光年も離れた宇宙の果てで、地球から見れば美しき天体ショーが展開されていた。それは3つの流星の、慣性の法則に逆らった奇妙な動きである。まるで絡み合っているかの如き光の軌跡を残し、一定の方角に向かって流れていた。
その方角は地球、いや地球を含む太陽系であった。右往左往してはいるが、確かにこちらに向かって来ているように思われる。

・・・何が?

それは観測できている3つの流星ではなく、人類の科学力では観測し得ない、目に見えぬ強大なモノであった。
3つの流星は、いや人類が現時点で流星と区別しているそれらは、その目に見えぬ強大なモノの侵攻を阻止せんが為に、命を賭けて闘っていた。しかし遥か幾何万光年離れた地球から観測する者にとっては、その事実は知る由のないことである。
そのうちに、3つの流星が三方向に別れて距離を取り始める。すると広大な宇宙空間をキャンバスに、3つの流星を繋ぐ巨大な光の三角形が浮かび上がった。それは目に見えぬ強大なモノを封印する魔法陣のようなものであった・・・。
しかし光の三角形は硝子のように砕け散ってしまう。それは封印の失敗を意味していた。そして3つの流星の側に、それぞれ時空の歪みが発生した。それは目に見えぬ強大なモノが、3つの流星を退けんと発生させた、何処に繋がっているとも知れぬワームホールであった。
否応なしに時空の歪みに飲み込まれていく3つの流星。そしてワームホールは消滅し、完全に3つの流星の反応は無くなった。しかし目に見えぬ強大なモノは、確実に存在していた。誰に知られることもなく、地球に向かって密かに侵攻していた・・・。
はたして美しき天体ショーは幕を閉じた。ある天体観測学者は、3つの流星が織り成した美しき光の三角形から、これらの流星をスターダストデルタと命名した。詳細不明の天体ショーであったが、それ故に夢をはせるには都合が良かった。されどこのことが何を意味しているのか、その真実に辿り着く者は誰一人いなかった。これから20年の後、地球に到達する目に見えぬ強大なモノがもたらす災厄のことなど、誰も予想してはいなかった・・・。

・・・西暦20XX年、地球という惑星に蔓延る人類という愚かな種族は、未だ泥沼化した第三次世界大戦を続けていた。某大帝国が予想していたよりも敵国の抵抗が強く、それに刺激されて次々と敵意を剥き出しにする他の国も、意外な伏兵として某大帝国を苦しめていた。
一度始まってしまった戦争というものがそう易々と終結する筈もなく、しかし均衡の崩れた世界のバランスは、戦争のしょうこう状態という形で一応の落ち着きを見せていた。それでも地球上の何処かで絶えず戦闘が行われており、人命が失われていることを忘れてはならない。
そんな世界情勢下、某大帝国の一領土に成り下がっていた元ニッポンのSMRは独立宣言を敢行し、ニッポンという国名を取り戻していた。しかし世界大戦に参戦する意志は示さず、これまで通りに世界中の怪獣対策を請け負っていた。軍事力で言えば、小国でありながら某大帝国に歯向かうに相応しい力を有していた。
しかしだからといって戦争となれば無意味な消耗戦になることは間違いなく、また怪獣対策本部としての利用価値は世界的に絶対不可欠なものである為に、辛うじて中立国としての立場を維持することに成功していた。
そしてSMR怪獣対策本部は大幅な組織改革を行い、ジャパンのJを頭文字とし、JSMR怪獣対策本部と改名されている。独立宣言及びJSMR改名は、スターダストNO.0(ゼロ)事件より10年後、あの未曽有の大惨事から復興した年のことである。
さてJSMR怪獣対策本部メンバーも大幅に代わっている。もうスターダスト事件当時のメンバーは、一人を除いて残ってはいない。その一人とは、スターダスト事件当時の英雄、サエキリョウイチである。当時20歳代の頃は一隊員であったが、20年後の現在は隊長へと昇格している。スターダスト事件後すぐに現役を退いていたが、10年後のJSMR怪獣対策本部設立の際に、隊長待遇で召還されたのである。
ちなみに現役当時に親密な関係にあったSMR怪獣対策本部メインオペレーターのユウコ隊員は、サエキと共に退役している。二人はなんとめでたく結婚したのである。まあそれは余談ということで、問題はウルトラマントゥエルヴと融合していたことが公になっている彼が表舞台に出ていることである。しかしこの事実は当時のSMR主要メンバーしか知らないことであり、勿論、上層部には報告されていない。皆、メンバー内の秘密として堅く守っている。サエキとトゥエルヴに関する一部のデータも、トップシークレット扱いとして堅く封印されている。よってこの時代の世間と現メンバー内は、この真実を知らない。
さて組織改革の成されたJSMR怪獣対策本部は、様々なセクションに区分された部署を、サエキ隊長率いる総司令室が統轄する、以前に比べて一回りも二回りも大きな組織となっている。各セクションの説明をしたいところだが、それは折りを見て小出しにしていきたいと思う・・・。

物語は宇宙開発セクションからの報告から始まる。地球の衛星軌道上にて、何処かの国の現在は稼働していない古い軍事衛星が、突如として破壊されたのである。観測データによれば破壊というよりも、何か巨大なモノに衝突したようだとのことである。続けて同じ座標で、隕石破壊ていう同様の事件も発生している。
問題の座標というのが、ニッポンの遥か頭上なのである。データ上は何も存在しない筈だが、そこで何か異常が発生していることは間違いない。何かがあるに違いない。自然発生の事故として片付けるには余りも不自然であった。

・・・そこに確かに存在するのに、それを証明するデータがない。

何処かで聞いたフレーズが、サエキ隊長の脳裏に思いがけない不安をよ切らせる。迅速に指揮を取るサエキ隊長の命令により直ぐ様、宇宙開発セクションの人工衛星より偵察機が派遣されることになる。

偵察機パイロットは、宇宙開発セクションに配属されはばかりの新人、20歳のキサラギ タクミ(如月 巧)隊員である。今思えば、宇宙開発セクションから派遣される隊員が、何故こんな新人であったのか疑問を抱かざるを得ない。総司令室と宇宙開発セクションとの間に、今回の事件に対する温度差があったことは間違いない。
さて大した武装も準備されていない偵察機は、問題の宇宙空間に到着した。しかし何も確認できない。タクミ隊員がそう報告している時、2000キロ離れた宇宙空間にて、異常な空間の歪みが観測された。それは別の空間と繋がっているワームホールの入り口であった。
そしてその奥から出現する深紅の流星。すぐにデータ解析してみれば、それは驚くべきことに20年前に観測されたスターダストデルタのうちの1つと同質のエネルギー波長であったのだ。
深紅の流星は目に見えぬ何かが存在すると思われる空間めがけて一直線に進み、激しい衝撃波と閃光を巻き散らしながら透明な壁のようなモノに激突した。深紅の流星と目に見えぬ何かの衝突は激しく干渉し合った。
その結果、目に見えぬ何かの全貌がおぼろ気ながら見え始める。それは巨大な、厚さ数十センチ全長1000メートル以上の長方形の透明な硝子板のようなものであった。赤い流星は尚も進行を止めない。
そのうちに何やら深紅の流星が形状を変化させ始める。それは人型、全長50メートル級の巨人である。それも全長1000メートル以上の硝子板に比べれば小さく見えた。深紅の巨人は硝子板に両手を当てがって押し返していたが、堪えきれないと判断すると、今度は両手拳を振るって殴り始めた。
その拳には特別な想いが、力が込められていた。出口のないワームホールを彷徨いながら、それでもソレの侵攻を食い止めんと不安定な時空を行き来し、ようやく追い付いたのである。ソレを食い止める為ならば、命を投げ出す覚悟でいた。派手な光線ではないが、その拳には正に命の力が宿っていた・・・。
次第に硝子板は氷の結晶のようにきらきらと輝く破片をばら蒔きながら破れ始める。そして遂に硝子板の中央に大きく亀裂が走ったかと思うと、稲妻のような音を立てて砕け散った・・・。
それを間近で目撃していた偵察機搭乗員タクミ隊員は、突如思いがけない事態に遭遇する。砕け散った硝子の大きな破片がこちらに向かって飛んで来たのだ。慌てて回避行動を取るも間に合わず、機体を真っ二つに裂かれてしまう。爆発する偵察機、その搭乗員の安否は絶望的であった・・・。
その時、深紅の巨人が飛び、炎上する偵察機を抱え込んだ。そこに追い討ちをかけるように降りかかる硝子の破片。バランスを崩して流される深紅の巨人は、偵察機を抱えたまま大気圏へと吸い寄せられていく。いつのまにか砕けた硝子の殆んどが消え去り、僅かな破片のみが大気圏へと落ちていく・・・。
それは明らかに災いの元凶であった。正体不明の物体と深紅の巨人、真っ直ぐにニッポン領土へと落下してくるそれらを、JSMRとしては受け入れるつもりはなかった。偵察機も含まれているが、宇宙空間で機体を引き裂かれて爆発した時点で、搭乗員は死亡と確定されたも同然である。もはや遺体の確認すらできぬであろう。その為、ニッポン領土全域を守るカントリーバリアシステムが解除されることはなかった・・・。
やがてバリアに接近する深紅の流星(偵察機を巻き込んだまま、落下中に元に戻っている)と硝子の破片。赤い流星の方はバリアに阻まれたが、硝子の破片の方は、まるでナイフが紙を切り裂くように、何の抵抗もなく侵入してしまう。はたして大地に突き刺さる硝子の破片は、欠片でありながら100メートル以上はあった。
招かれざる客に緊急特別警戒体勢が発令されるも、バリアで侵入を阻止している深紅の流星にも問題が残っていた。どうやら自力でバリアの突破はできないらしいが、かといって引くこともなく、バリアにかかる圧力は増すばかりであった。このままではシステムにかかる負担が限度を越えて、システム自体が破壊されてしまう可能性があった・・・。
それは勇気のいる決断であった。なんとカントリーバリアシステムを一時的に解除し、深紅の流星を受け入れたのである。このままではシステムダウンしてしまう恐れがあったことと、深紅の流星(巨人)に何かしらの希望を感じた、サエキ隊長の判断であった。
はたして深紅の流星は日本海側海域に落下した。すぐに徹底した追跡調査が行われたが、深紅の流星は発見されなかった。唯、引き裂かれた偵察機の残骸だけは、数日経って近くの浜辺にうち上げられていたことが報告された。しかし搭乗員の遺体は発見されなかった。不安定な体勢で大気圏を通過したのだから、偵察機が形を残していることすら奇跡的なことであり、謎は深まるばかりである・・・。
これが一連の物語の発端であった。最重要危険因子たる巨大な硝子の破片、巨人の形態を垣間見せた深紅の流星、事件に巻き込まれたタクミ隊員、そして20年前の天体ショーとの関連性。それは大いなる宇宙の意志との新たな闘いの序章であった・・・。

~つづく~