RED EYES

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ウルトラ小説

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∽∽RED EYES∽∽
★THE STAR☆DUST FIVE★
Episode.105
「Gravitation of the star」

空を見上げていた。
久しく見上げることがなかった。
常に、見下ろしていた。
見下す側であった。
圧倒的な暴力で支配する側だった。
それが今、見下ろされていた。
自分よりも大きなモノに、見下されていた。





「…ツウゥゥゥガアァァァイイィィィイイ!!」

猛り狂って叫ぶは全長3500メートルを越えて未だ巨大化し続ける黒鉄の巨人ガイスト。東京湾沖、太平洋上にて。『巨人の力場』によって物理的肉体を維持して地球上に降り立つ超々大型巨人。彼は地球上で最大最強最悪の存在である筈だった。しかしその目の前に、更に大きな巨人が聳え立っていた。

「…太陽の化身と大いなる守護神
 …それは一度限りのフュージョンアップ
 …アナタはトゥエルヴでもツガイでもない
 …太陽の如き守護神
 …その名はサンリウッツガイスト」

イラストレーター・キサラギミライのイマジネーションによって誕生した全長5000メートル強の大巨人。
仁王立ちのままぴくりとも動かなかったが、発せられる心臓の鼓動のような連続した音が大気を震わせていた。力強く野太い重低音が響くその度に、皮膚が筋肉がはち切れんばかりに盛り上がっていた。
しかしそれ以上、大きくなることはなかった。ぎりぎりと革を締め付けるような音もしていた。膨張する『ツガイ』の肉体を、『トゥエルヴ』の黒き力が締め上げて、現状の姿を維持しているかのようであった。

「…またいきなり随分デカいな?
 …どうもここだとオレ等は無限にデカくなれちまう
 …オマエ解ってんのか?
 …このちいせー星の上じゃ動けねーよ
 …いや
 …オマエじゃ動かせねーよな?」

見下される屈辱を払い除けるように、そう言ってのけるガイスト。いくら『巨人の力場』が作用していたとしても、ガイストがそうであったように、その巨体がひとたび動けば、地球が揺らぐ。この星のあらゆる命が失われる可能性がある。
ここまでの戦闘で、ガイストの肉体は大きく損傷している。全身あらゆる箇所を抉られ、左肩から先と右手首の欠損。満身創痍であったが、それでも眼前の大巨人が攻撃してこれないことを理解していた。

「…オレならやれるぜ
 …オマエとは違う
 …優しいなんて聞こえは良いが
 …弱いだけだ
 …縛られているんだよ
 …オレは違う
 …オマエにできないことができる
 …オレは自由だ」

ガイストは目の前の大巨人を、完全に『ツガイ』として認識していた。しかしサンリウッツガイストは答えない。唯、海鳴りのような音だけが海上に響いていた。それはサンリウッツガイストが、静かに浮上していることを意味していた。

「…オマエはこの世界でも
 …随分と縛られていたぜ?
 …デカい図体して虐げられてたな?」

海に浸かっていた足首が、徐々に見え始める。しかし水飛沫のひとつもあげず、静かに静かに、まるで初めから海水に浸かっていなかったかのように、その巨体が浮上していった。

「…オレが解放してやったんだ
 …窮屈な生き方から解放してやった
 …欲望のままに生きることを教えてやった」

やがてその巨体はガイストの頭上を越えていく。海水を滴らせることもなく、その光景はまるで不自然なCG合成のようであった。これは恐らく『巨人の力場』が、大巨人の海での移動を地球上では有り得ないことと認識した為に、故に発生する海流を抑え込んでいるのであろう。

「…なんだよ!!
 …オレはここにいるぜ!?
 …逃げるのか!!
 …オレはまだやれるぜ!?
 …何もできねーオマエの代わりに
 …オレがやってやったんだ!!
 …オマエが欲しいモノを奪ってやったんだ!!
 …憎いか!?
 …羨ましいか!?
 …なんとか言えよ!!





 …ん?」

まるで駄々をこねる子供のように叫び散らすガイストであったが、不意に自らも浮上し始めていることに気付いた。手足をばたつかせることはできても、浮上するのに逆らうことができない。頭上のサンリウッツガイストに視線を向けてみれば、視界を奪われる程の光を放っていた。

「…何をしたあああああああ!?」

ガイストは何も理解していなかった。既に大気圏に顔を突っ込み尚も大気圏外へと浮上していくサンリウッツガイストと、一定の距離を保って引っ張られるガイスト。やがて両者共に大気圏外へと出た頃には、ガイストは相手の周囲を円を描く軌道で回っていた。それはまるで引力で引き寄せられているかのようで…。

『サンリウッツグラビテーション』

膨張し続けるサンリウッツガイストのエネルギーは、『巨人の力場』によって形状を維持したまま蓄積されていた。人間の平均身長から換算する体重を遥かに越える物質としての密度が、無制限に高まっていた。星の大きさと比較したらまだ小さい肉体だが、その内側に星にも匹敵する膨大な質量を溜め込んでいた。
 
 
 

締め付ける黒いラインが辛うじて人型を認識させる程度に、太陽の如き強烈な閃光を放つ大巨人。自らを天体に置き換えたとして、相手をその衛星と位置付けることにより、地球上の他の物体を巻き込まずして大気圏外への物理的移動を果たしたのである…。


「…宇宙は広いね」

サンリウッツガイストが一言発した。それを機に、太陽の如き閃光が収まり始める。すると引き寄せ合う引力が弱まったのか、ガイストは宇宙空間に開放された。

「…熱かったり寒かったり忙しなかったぜ
 …随分と静かなところに来ちまったな
 …ギャラリーもいねーよ
 …誰にも迷惑かけたくないってか?
 …暗く静かで冷たく何もない漆黒の闇
 …まるでオマエの心の中だな」

地球外に出たことが影響しているのか、それまでの膨張速度よりも勢いを増して、急速に巨大化の進行が止まらないガイスト。驚くべきことに、欠損した肉体の再生まで始まっていた。地球を飛び出したことによって、『巨人の力場』がガイスト本来のポテンシャルのままに開放されているのかも知れない。

「…いいや
 …何もないのはガイスト
 …オマエ自身だ
 …明るくて暖かくて賑やかな
 …笑顔の溢れる光の世界に
 …ボクは生きている」

そう言い返したサンリウッツガイスト。それは『星の記憶』を通した異世界の『ツガイ』としての言葉なのか。

「…何を言っている?
 …オレとオマエは表裏一体だろ?
 …光と闇
 …一心同体ってやつじゃねーのか?」


急速な巨大化で対等なサイズになりつつあるガイストは、色こそ違えど同じ顔をした眼前の自分自身を、首を傾げて覗き込んだ。

「…オマエがボクの一部であり
 …その闇が心の中にあることを否定しない
 …でも今確かに
 …ボクは光の中にいる」

くっつく程に顔を付き合わせる2体の巨人。無限大に広がる宇宙空間において、もはや大きさは意味がなかった。ツガイは真っ直ぐにガイストと、己の心と向き合っていた。

「…そいつはめでたいぜ!!
 …お花畑で遊んで暮らしてきたか?
 …この世界のオマエは違ったぜ?
 …欲望のままに遊んでやったさ!!
 …この世界のオマエができないことを
 …オレが全てやってやったんだ!!」

完全に肉体が再生されたガイストは、その拳を振りかざして殴りかかった。

「…それは違う
 …オマエの欲望はオマエ自身のモノだ
 …この世界の自分自身を
 …ツガマモルを
 …オマエは利用したに過ぎない」

ツガイも拳を振りかざし、相手の拳に拳を突き合せた。拮抗した力と力の衝突によって生じた衝撃波が広大な宇宙空間に波状に広がっていく。

「…どこが違うんだ!?
 …オレはオマエの為に!!
 …オマエの傷みも怒りも憎しみも!!
 …全てオレが受け止めてやった!!
 …優しすぎる弱すぎるオマエの代わりに
 …オレが全てを壊してやった!!
 …それのどこが間違っているっていうんだ!?」

ガイストはもう一方の拳を振ったが、

「…ボクは、守りたかった」

瞬間、ツガイの拳がガイストの顎を砕き飛ばしていた。相手の拳を避けて潜り、拳を突き上げていた。それは決定的な一撃であった。ガイストは意識を刈り取られたのか、無重力空間において勢いのままに回転し続けていた。

「…帰ろう
 …ここはボク等がいてはいけない世界だ」

ツガイはそう言って回転するガイストを抱きとめると、

『サンリウッツダイナマイト』

それは太陽の如き熱き輝き。ツガイの、いやサンリウッツガイストに宿りし天文学的膨大なエネルギーの膨張。
まるで超新星の如き大爆発が発生した刹那、そのエネルギーが中心に逆流し、一瞬で消滅した。跡形もなく、まるでそこには最初から何も無かったかのように…。

「…エネルギー波長ロスト!!
 2体の巨人は完全に消滅しました!!
 質量のひとかけらも残っていません!!
 完全に消滅です!!」

舞台は地球上、太平洋上のBS艦内、オペレーター・タザキ隊員の報告。対超々大型巨人迎撃作戦において囮の役割を担っていたBS艦は、安全な距離を保って最優先で守られており、超々大型巨人に肉薄されるも致命的被害はなく、指揮系統は辛うじて機能していた。作戦は失敗したものの、大気圏外に移行した戦闘をモニタリングすることだけはできていた。

「…ちょっと待ってサエキくんは!?」

BS艦内、キサラギミライが思い出したかのようにそう言った。サエキトウジはトゥエルヴDでありSであり、サンリウッツガイストの素体となっていたのである。

「…あ、いえ、
 エネルギー波長が微弱すぎる為に
 捉え切れていませんでした。
 微かですがトゥエルヴDの
 エネルギー波長を大気圏内に確認できます!!」

遅れて報告するタザキ隊員。モニター上では、まるで小さな隕石落下の様子の如く、熱を帯びて発火する豆粒のような物体を映し出していた。拡大して表示されるそれは確かに人型の巨人、トゥエルヴDのようであった。
しかし隕石という表現はあながち間違いではなく、まるで石化したかのような状態であった。ぐんぐん落下してくるそれは、誰かの意思によって操作されているかの如く、真っ直ぐBS艦に向かってきていた。このままでは直撃は避けられず…。

「…ここで勇者さまの登場って訳よ!!」

それを受け止めたのは、赤毛の巨人ジークライトであった。石像のようなトゥエルヴDを抱えたまま、ピラミッド型のBS艦の斜めの装甲板にふわりと着地した。

「…ったくタフな奴だぜ
 …サエキは中で生きている
 …っていうかオレ様がなんとかすると思って
 …無茶ぶりするのやめてくんねーかなマジ
 …スターダストファイブって他にもいるんだぜ?
 …こういうとき動くのオレばっか!!」

BS艦内のメディカルルームにて安静にしていたアカバネユウトであったが、彼は基本的にミライを守る為には命を惜しまない。

「…どうにか状況終了って感じね。」

それは戦艦ウルティメイトより、ユウキ隊長の通信であった。

「…コトリちゃんも無事ね?
 被害状況確認急いでちょうだい。
 …あとできれば早めに私達の回収もよろしく。
 ちょっと救護班なるはやでお願い…。」

戦艦自体はガイストに玩具のように弄ばれてしまったものの、彼女は喋れる程度には無事のようであった。
とにもかくにも、対超々大型巨人迎撃作戦は一応の結末を迎えた…。





「…パパ?」

BS艦内、独り部屋の隅で柱にしがみついていた少女、コトリ・アレイが呟いた。目の前で、キラキラと粉雪のようなモノが舞っていた。宙を漂うそれを見て、少女はそう呟いたのである。

「…コトリちゃん!!」

何かを察して駆け付けたミライは、不定形な光の粒子の集合体を目撃した。その集合体は、まるで手を伸ばすように、ふわりふわりと少女の頬を撫でた。

「…パパなの?
 …パパのユーレイ?」

両親の離婚の際に、父親は死んだとでも聞かされていたのか、少女はそれを父親の幽霊と受け止めていた。怖れてはいなかった。

「…ツガ…マモル…なの?」

その異様な状況を見て、しかしミライは、まるで父娘の再会に立ち会っている光景に見えてしまった。彼女の眼にそう映ったのなら、それは真実。彼女が思い描いたことは、具現化される。光の粒子がヒトの姿を形作り、実体化していく。

「…コ…ト…リ」

優しい眼差しをした黒髪の、ヒトの形をしたモノが、掠れた声で呟いた。そして血の通った温かな手で、久方ぶりに再会した一人娘を抱き締めた。

「…ごめんなさい、
 アナタのことテレビの中でしか
 見たことなかったわ。
 想像力の欠如ってやつね。
 ま、裸よりはマシよね…。」

その光景に水を差すように、いや違う、もらい泣きしてなるものかとそっぽを向きながら、ミライはそう言った。奇跡が起きたその瞬間、しかし実体化したヒトの形をしたモノ、ツガマモルが身に付けていたのは、バスケのユニホームであった…。





…アリガトウ

それは誰の声なのか。
誰に向けられた言葉だったのか。
巨人と成り果てたこの世界のツガマモルが、ヒトとして生還できた奇跡。それは何者かの大いなる力が、ミライの能力を介して起こしたこと。それは遠く『星の記憶』の先、優しき大いなる守護神の願いか、破壊神の欲望か…。

~つづく~
∽∽RED EYES∽∽
★THE STAR☆DUST FIVE★
Episode.104
「The fusion up !!」

…サエキ





誰かに呼ばれた気がした。

                …悔しくねーのかよ

それはアサカの声。

               …オレが恐怖した力は

いや、闇に堕ちた彼の名は、レッドアイズ・イレブン。

                …オレが憧れた力は

彼は『星の記憶』をコピーした。

             …こんなものだったのか?

だが死に際、彼は『星の記憶』を返していた。

       …所詮、オレはニセモノでしかなかった

託していた、と言うべきかも知れない。

                  …オマエは違う

いる筈のない彼の声が、最後の光を灯す。

                …見せ付けてやれよ





…陽はまた昇る





「…海底に高エネルギー反応出現!!
 このエネルギー波長は、
 スターダストファイブ・トゥエルヴです!!
 …あ、いえ、
 エネルギー波長が反転していきます!!」

それは東京湾において、戦艦ウルティメイトが超々大型巨人ツガイ殲滅作戦に失敗した直後のBS艦内での報告。超々大型巨人は禍々しく赤黒い姿、赤い眼をしたガイストに変貌していた。全長3500メートルを越えて尚、『巨人の力場』を用いて地球上に存在することを許されてしまったモノ。最強最大、黒鉄の巨人ガイストである。
ガイストは戦艦ウルティメイトを拳銃のように弄び、最後の力を振り絞って向かったサエキ隊員扮するトゥエルヴ・タイプDを虫けらのように海に叩き付けて、海底まで踏み抜いた。作戦は失敗。最後の切り札も潰された。希望が潰えた。その直後のことであった。

「…そっか
『星の記憶』返してもらってたのね」

ガイストより数キロ距離を置いた海上に静止するBS艦内にて、この状況を理解できていたのは、キサラギミライだけであった。

「…光と影が重なるとき
 …禁断の黒き力が開放される」

彼女はイラストレーター。『星の記憶』を読み取り、思い描くことで具現化できる。

「…太陽が陰り
 …黒く反転していく
 …しかし金環食のように
 …溢れ出す赤い閃光」

それは自身の体内で正反物質消滅作用を用いる禁断の力。サンリウムというエネルギーを、プラスとマイナスに変換し、再度掛け合わせることで発生する究極の力。陰陽揃って完全となった『トゥエルヴ』という『星の記憶』に刻まれしモノ。

「…スペシャルなサンリウムだから
 …略してスペリウム?
 …ちょっとダサくない?
 …でもそれが禁断の黒き力の名前」

大きすぎるガイストの足の裏から、光が洩れ始めていた。

「…闇に覆われようとも
 …太陽はそこに必ずある」

そして持ち上がる筈のない足が僅かに浮かんで隙間が生じた。

「…陽はまた昇る
 …太陽は墜ちない

 …アナタはトゥエルヴ・タイプS」

刹那、紅い閃光が海面を突き破った。




BS艦からのモニタリングでは、何が起きたのか捉えることができなかった。唯々、紅い閃光としか説明できなかった。
その瞬間、ガイストの右手首が切断されていた。破裂消滅する手首と、開放される戦艦ウルティメイト。

…速いな

しかしガイストの視線は紅い閃光を捉えていた。ガイストからすればそれは、蜘蛛の糸のようなか細い閃光であったが、その先には紅い閃光迸る黒き巨人がいた。




全長3500メートルを越えたガイストの頭上近くまで一瞬で到達するトゥエルヴSは、音速を超えていた。

「…戦艦ウルティメイトを確保しました!!
 これより離脱します!!」

フィールドを破られた際に吹き飛ばされていたファイターWXやチーム・イエローのファイター機群が、辛うじて機動力を回復させて、自由落下する戦艦ウルティメイトをワイヤーで繋ぎ止めていた。そして海面すれすれ落下直前にて浮上させ、とにもかくにも現場を離脱することを最優先とした。

…所詮は虫けらだ

山脈が雲を引き裂いて迫り来るかの如く、ガイストは左腕を振るった。だがその大きな掌が引き裂いたのは、紅い閃光の軌跡だけ。

「!!」

瞬間、ガイストの左肩が破裂した。盛り上がる筋肉のひとつひとつが山のようですらある左腕が、小刻みに破裂して消滅していく。
この爆発は、『巨人の力場』から外れて本来の質量に戻ることによって想定される未曾有の被害、とはまた違っていた。それが起きてしまうと、ガイスト自身が巨人としてその場に存在できない故に、その事象は起きないことになってしまう。
それでも破裂して消滅するのは、さすがに現時点の大きさでも既に十分過ぎる程に大きすぎて、この地球上に存在してもらっては困るから、なのだろうか。

…クソッタレがあああっ!!

激昂して手首のない右腕を振り回すガイスト。しかし稲妻のような軌跡を残して音速移動するトゥエルヴSを捉えることはできず…。

「!?」


刹那、頬を引っ叩かれたかのように、ガイストの首が横に向いた。そして皮膚の破裂。その右頬が、ざっくりと抉られていた。
そして続けざま、まるで稲妻が落ちかのように、全身に紅い軌跡が駆け巡った。そして僅かに遅れて全身の皮膚が破裂していく…。
全長3500メートル越えと全長50メートル級の戦い。質量はエネルギーであり、その差は歴然。しかしトゥエルヴSは速かった。スピードを活かした体当たりで、山のような相手を削るように攻め立てていた。
更にトゥエルヴSは、距離を置いては光弾を連射する。貫通こそしないが、命中した箇所は確実に破裂していた。的確なヒット&アウェイを繰り返し、相手にダメージを蓄積させていく。その身を削り落としていく。
一方のガイストは、トゥエルヴSの動きは見えていた。しかし大きすぎることが仇となって、目で追うことはできても捕まえることのできない蚊のような感覚。防戦一方、次第に身を固めて急所を守り始めた。

「!!」

しかしトゥエルヴSはそれを許さず、海に飛び込んで足首を抉った。ガイストはバランスを崩して前のめりに倒れ始める。だが倒れるのは3500メートル越えの超々大型巨人。その先には…。

…コオオオオトオオオオリイイイイエエエエエエエ

まるで巨大隕石が落下してくるかの如く、BS艦にガイストが迫っていた。巨人であるからして鉄仮面のような顔が、しかし削られすぎて歪に開口しているかのような、不気味な笑みを浮かべているようにすら見えた。
トゥエルヴSは焦ってガイストの全身を削り倒すも、山の木々の枝を僅かに落とす程度。ガイストは大きすぎた。倒れるだけで、安全な距離を保っているつもりでいたBS艦に、肉薄してしまう。

…アアアイイイシイイテエエルウウゼエエエエエエエ

生じる波が太平洋を揺らし荒れ散らかし、その叫びが大気を震わせ引きちぎる。ガイストはもはや、目障りな虫けらに構うつもりもなかった。目前の愛するモノを我が物にせんとしていた。
その巨体の移動風圧に巻き込まれて、離脱途中の各機ファイター率いる戦艦ウルティメイトも次々に海に落下していく。
BS艦も全速力で後退していたが、何せ迫り来るは山。どこまでも逃げ場のない絶望が形となって迫り来る。
しかしトゥエルヴSはガイストを受け止めんと顔面前に回り込んで…。

…来ると思ったぜ

瞬間、ガイストの手首のない右腕が、トゥエルヴSを殴り飛ばした。完全に、予測されていた。超々大型巨人からしたら捉え切れない移動速度であったが、守るべきモノの為にどう動くか、完全に予測していた。完璧なるカウンター。
トゥエルヴSは食らってはいけない脅威の一撃で、致命的なダメージを負ってしまった。海上を吹き飛ばされていく黒き巨人に意識はない。赤い閃光を引きずることもなく、唯々、飛ばされていく。広い太平洋上、障害物がないだけに止まることなく飛ばされていく…。





…アリガトウ
…ヨク頑張ッタネ





不意に優しい声がした。そして目に見えないクッションで受け止められたかのように、大きな手で優しく包み込まれたかのように、ふわりとトゥエルヴSの身体が宙で静止する。
ガイストも、あと一歩でBS艦に肉薄する寸でのところ、宙で静止していた。そればかりか、押し返されているようにすら見えた。
まるで大きな大きな、超々大型巨人よりも大きな目に見えない大巨人がいるかのようで…。

「…アナタは誰?」

その声が聞こえていたのは、キサラギミライ唯一人。横転するBS艦の中で固定されたものに必死でしがみつきながら、そう問うた。

「…アナタもしかして異世界のツガイ?
 …助けてくれたの?
 …ありがと。

 …でもダメよ、
 …アナタはこちらの世界に来ちゃダメなの。
 …だって大きすぎるもの。

 …でも今、
 …どうしてもアナタの力が必要なの。
 …わがまま言ってごめんなさい。
 …ねえ、どうしたら良い?」

…星ノ欠片ガ
…僕ノ手ノ中ニアル

「…トゥエルヴのこと?」

…ホンノ少シノ間ダケ
…ソノ身体ヲ貸シテホシイ
…彼ハ十分ニ頑張ッタ
…次ハ僕ノ番ダ

「…でもどうやって?」

…宇宙警備隊守護部隊第八部隊隊長
…我ガ名ハ『ツガイ』

…ダケド今ハ
…君ダケノ『ツガイ』ヲ
…思イ描イテホシイ
…僕ニ護ルチカラヲ
…授ケテホシインダ

「…戦う力、じゃないのね」

それを機に、彼女はイマジネーションの世界にダイブしていく。

「…ワタシはもうアナタを知っている
 …アナタは優しいヒト
 …戦いたい訳じゃない
 …唯、守りたいだけ」

それに呼応して、トゥエルヴSの身体が眩い光を放って青空を昇っていく。それまでそこにいた目に見えないモノ、まるで昇る先の青空そのものが、眩い光に収束していくかのような光景。

「…そして今
 …ワタシ達の世界まで守ろうとしてくれている」

やがて膨れ上がる光が身体の輪郭を消し去り、ひと回りもふた回りも、いやもっともっと果てしなく、大きくなっていく。

「…大きすぎるアナタを描くには
 …太陽ほどのエネルギーが必要」

やがて数千メートル以上に肥大化した光が、ヒトの形を成していく。うっすらと赤と銀で流星ラインを描いていき、額と胸部に菱形の宝玉が形成され、切れ長な瞳に光が灯る。それは『ツガイ』の特徴であった。しかし額に切れ込みが残るのは、『トゥエルヴ』の面影だろうか。

「…でもアナタは放っておいたら
 …際限なく大きくなっちゃう
 …それはダメ
 …だから黒き力で抑え込まなきゃ」

まるで拘束具。太陽の如きライン模様が胸部を中心に全身に広がり、黒きベルトとなって締め付けていく。

「…太陽の化身と大いなる守護神
 …それは一度限りのフュージョンアップ

 …アナタはトゥエルヴでもツガイでもない
 …太陽の如き守護神
 …その名はサンリウッツガイスト」

それはイラストレーター・キサラギミライが思い描いた新たな大巨人。『ツガイ』と『トゥエルヴ』が融合して溶解し、統合されしモノ。




概算で5000メートルは下らない大巨人が、太平洋上に誕生した…。

~つづく~
∽∽RED EYES∽∽
★THE STAR☆DUST FIVE★
Episode.103
「Mission of the battleship」

「…最後の切り札、
 なんてプレッシャーかけ過ぎよね?
 アナタが気負う必要はないわ。
 こちらの指示に従って変身、
 巨人化後に目の前のトリガーを握って、
 全力でエネルギーを注ぎ込めば良い。
 エネルギー充填後は
 こちらのタイミングで操作するわ。
 アナタはエネルギーを注ぎ込むことにだけ
 集中してくれれば良い。
 …大丈夫。
 理論上は、ここから月だって破壊できる。
 そーんな威力ありすぎても逆に困るけどね。
 とにかく超々大型巨人くらい
 余裕で吹き飛ばせるわ。」

そんなユウキ隊長の説明を通信で聞いているのは、大きな拳銃のような形状に変形したJSMR怪獣対策本部基地甲板上のサエキ隊員。海面より僅かに上昇した本部基地は、ウルティメイトアタックモードと銘打たれた、巨大な砲台型の戦艦へと変形していた。略称を、『戦艦ウルティメイト』とする。
時は既に地平線から太陽が顔を出し、明るくなってきた頃。巨大化し続ける超々大型巨人ツガイは、約3500メートルを越えていた。それ以上は細かい数字を示すのも馬鹿らしい。意味がないのである。とにかく大きい。ニッポンで一番大きな山と同等、或いはそれ以上の物体。県をまたいでだいぶ遠方からでも、その姿を確認できてしまう。そんな山のような巨人が、都心部を横断しているのである。進路上の全てを破壊しながら…。

「…目標、
 間もなく東京湾に進行します。
 作戦ポイントまであと5分弱です。」

オペレーター・タザキ隊員が落ち着いて報告するも、その通信を聞いている本作戦参加者は、誰も落ち着いてはいなかった。サエキ隊員をリラックスさせようと声をかけるユウキ隊長もその実、喋って緊張を紛らわしていたのやも知れない。だが作戦は予行練習できぬ一発勝負。ブルーチームのファイターWX2機とチーム・イエローのファイター2機は、作戦ポイント上空にて移動型空間相転移シールドをばらまいて旋回中。カントリーバリアシステムの発動もボタンひとつで可能な状態でスタンバイ。やれることはやった。後は作戦決行を待つばかり…。

「…目標、
 東京湾に進行しました。
 海面水位変化安定後、
 速やかにシールド展開願います。」

人間が水溜まりに一歩踏み込むだけで水飛沫が飛ぶ。約3500メートル級の巨人が湾内に侵入するとなれば、急激な海面水位の変化は容易に想像できよう。人間のスケールで言えば、超々大型巨人から見た湾内は、庭先に設置する空気を入れて作るビニールのプールのようなものである。ヒト一人飛び込めば、溜めた水は溢れ出す。
しかしそれは想定の範囲内。その被害は今、防いでいる場合ではなかった。あくまで超々大型巨人の全質量を防ぐことにだけ、シールドの力を利用しなければならない。

「…カントリーバリアシステム発動!!
 同時にファイター全機、
 移動型空間相転移シールド展開!!」

ユウキ隊長の号令と共に、一斉に全てのシールドシステムが発動される。東京湾の地形を利用して作り出されたすり鉢状のシールドが、超々大型巨人を取り囲む…。

「…サエキ隊員、
 今よ変身して!!」

ユウキ隊長の指示に頷いたサエキ隊員は、迫り来る超々大型巨人に向けていた視線を上空に逸らし、胸に手を当て拳を握り締め、そして天にかざした。

「!!」

瞬間、背負う朝陽よりも眩き太陽の如き閃光が周囲を照らすと、その直中で紅き巨人が描き出される。全長50メートル級、トゥエルヴ・タイプDの出現である。

「…聞こえているなら頷いて!!
 さあ目の前のトリガーを握り締めて!!
 アナタの活動限界1分30秒!!
 でき得る限りのエネルギーを注ぎ込んで!!」

戦艦ウルティメイトより僅か上にふわりと浮いて出現したトゥエルヴDは、ユウキ隊長のメッセージを思念波として受け取ったようで、ひとつ無言で頷いて返した。そしてゆっくりと降下し、全長500メートル級の戦艦ウルティメイト艦尾の、左右に分かれたエンジンの排気口のような箇所に両腕を突っ込んだ。それがエネルギーを注入するトリガーとなる。
刹那、トゥエルヴDの肉体が、一回り膨張したかのように、怒気を発した。そして漲るオーラをまとい、猛々しい咆哮と共にエネルギー注入を開始した。

「…エネルギー充填始まりました。
 波長確認、パターン・サンリウム。
 システムは正常に起動中。
 ラームシステム発動、
 エネルギー変換始めます。」

すると戦艦ウルティメイトの船体中央部の巨大なシリンダーのような構造物が、ゆっくりと回転を始めた。その中で、トゥエルヴDから注入されたエネルギーを正反物質消滅作用に応用する為、プラスとマイナスに変換する作業が行われていた。回転が早まるにつれ熱を帯びていく。冷却作業も同時進行していて、大量の蒸気が放出されていた。
その間も、超々大型巨人ツガイの歩みは止まらない。緩慢だが、その一歩が海面を揺さぶり大波荒れ狂う。しかし既にシールドシステムが囲っている為、その中で行き場のない波が舞い上がり、シールド内は嵐の直中のような状態であった。

「…エネルギー注入1分経過。
 既に想定エネルギー量の限界を越えています。
 これ以上はシステムダウンの危険があります。」

一方、戦艦ウルティメイトは穏やかな海面状に浮いていたが、高速回転するシリンダーが今にも爆発する勢いであった。艦体全体に負荷がかかっているようで、あらゆる箇所でショートしたかのように稲光りが発生していた。

「…依然問題なし!!
 エネルギー充填量十分だわ!!
 サエキ隊員離脱して!!」

そう叫ぶユウキ隊長の手には、デスクに繋がった大型ライフルのようなもののグリップが握られていた。彼女は戦艦ウルティメイト甲板上艦尾に位置する、まるで拳銃の照準器のような、メインルームとなるコックピットに唯一人残っていた。彼女が見る巨大なモニター上に映る超々大型巨人には、手元の大型ライフルと連動するように、照準が重ねられていた。主砲照射は、彼女の手に委ねられていた。
ブルーチームメンバーはファイターWXに搭乗。他に本部基地で働く人員達は皆、避難させていた。キサラギミライやアカバネユウト、囮に利用することになった少女コトリ・アレイ。ユウキ隊長を除く全ての者は、戦艦ウルティメイト移行時に分離したBS艦に移動していた。それは本部基地甲板上のピラミッド型の建造物である。それ自体が空中移動要塞型戦闘機となる。
オペレーター・タザキ隊員も、BS艦に搭乗している。彼女のオペレートルームは元からBS艦に設置されており、そこが心臓部として機能していた。分離しようとも、彼女の指先ひとつで、戦艦ウルティメイトは安定して遠隔操作される。但し主砲発射だけは、どうしても戦艦ウルティメイトで操作する必要があった。超膨大なエネルギーを扱う為、危険な作業であることは間違いなく、だからユウキ隊長唯一人が残ったのである。
BS艦は戦艦ウルティメイトの遥か後方、太平洋上にて待機していた。しかしコトリ・アレイは超々大型巨人を誘導する為の囮である。BS艦で避難したと言っても、超々大型巨人と戦艦ウルティメイトを結ぶ直線上に位置している必要がある。だから超々大型巨人が目標と定めているのは戦艦ウルティメイトではなく、その遥か後方BS艦ということになる。だが何せ広い太平洋、十分な距離は保たれている筈、である。

「…主砲発射準備、
 最終段階へ移行されました。
 いつでも撃てます。」

あくまで冷静なタザキ隊員の報告。前後して戦艦ウルティメイトでは、平たい甲板上の艦体中央から艦首にかけて割って出る長い砲身が、僅かに移動して、回転するシリンダー部分と連結されていた。そして艦首から突き出すハンマー、撃鉄のような箇所が起こされていた。戦艦ウルティメイトは、一発の弾丸=エネルギーの塊を撃ち出す為に、リボルバー型の拳銃のような形状をしているのである。

「…3カウントで照準直線上の
 シールド解放よろしく!!」

それはつまり超々大型巨人を狙い撃つ為に、すり鉢状に展開したシールドに穴を開けるということ。

「…スリー!!」

その微妙なコントロールを可能とするのが、移動型空間相転移シールドシステムなのである。

「…ツー!!」

空中にばらまかれた小型シールドの位置や角度を調整することで、より細やかなコントロールが可能となる。

「…ワン!!」

はたして超々大型巨人と戦艦ウルティメイトを結ぶ直線上、すり鉢状のシールドに穴が開いた。戦艦ウルティメイトから狙うユウキ隊長の視点からして、超々大型巨人と目が合う瞬間。

「…ウルティメイトアタック発射!!」

ユウキ隊長はトリガーは引いた。その引き金は疑似的なものであるからして軽かったが、その結果、主砲から照射された超極太エネルギー砲は、その余波で海を引き裂くかの如く、そして空いたシールドの穴に吸い込まれるようにして、目標である超々大型巨人に命中した。

「…シールド再び展開!!」

ファイターWXのカザマ隊員の怒号と共に、間髪入れずにすり鉢状のシールドの穴が塞がれた。そのシールド内は、肉眼では勿論のこと、モニター上でも、一切の確認が取れない状態。数値的には、その中に表示できぬ程の天文学的数値のエネルギーが充満している、ということしか把握できない。一切のメーターが振り切れて、何も確認ができなかった。恐らく巨人はおろか海水に至るまで、全てが蒸発している筈、であった。

「…シールド上部解放!!
 エネルギーを逃がします!!」

チーム・イエローのファイターからの報告。そしてシールド上部から噴き出すエネルギーが、大気圏外にまで放出されていく。

「…主砲エネルギーと
 超々大型巨人の質量と
 思わしき粒子の放出を確認。
 シールド内安定まで凡そ20秒です。」

大気圏外まで突き抜けていくエネルギーと、その勢いに乗って粉雪のように舞い上がる粒子。ここまでは全て作戦通りであった。しかし…。

「…放出される質量の数値が、
 …おかしい。
 …こんな筈じゃない。
 …こんな、
 …こんな少ない筈がありません!!」

淡々とオペレートしていたタザキ隊員の口調に、明らかな狼狽が感じられた。しかしそれは、その場にいた誰もが感じていることであった。徐々に視界がクリアになるにつれ、そこに未だ人影、いや超々大型巨人の影が窺えたのだから…。
 
 
 
 

…こんなもんか

そこには、頭を抱え込むようにして腕を組んだ防御姿勢の、超々大型巨人がいた。しかしその姿は、先までとは違っていた。
 
…アーマーに守られたぜ
 
一見してシルエットが違う。左肩の大きく張り出た鎧がない。全身の鎧が、全て失われていた。徐々に腕を下ろすと見え始める頭部。そこに灯る眼光は、赤く煌めいて…。

…まあよくやってくれたもんだな

超々大型巨人の巨大化現象とは別に、筋肉が膨張していくのがはっきりと確認できた。一皮剥けるように、全身がひび割れていく。瓦礫のようにこぼれ落ちる皮膚片が、肉体から離れた途端に本来の質量となって破裂する。しかし海に落ちるよりも早く消滅していく。その光景は、まるで全身至る箇所で小さな爆発が起こっているかのようで…。

…アイツの意識は吹き飛んだ

黒光りする皮膚が見え隠れするその姿は、もはや『ツガイ』ではなかった。

…オレは自由だ

刹那、超々大型巨人が跳んだ。

…だがな

その質量からして予想だにできない、地球上の重力を無視した行動に誰も反応ができなかった。

…アイツを傷付けて良いのは

すり鉢状のシールドは、その圧倒的な物体の前では薄皮でしかなかった。

…オレだけなんだ

そもそも空間相転移シールドは、エネルギーに対しての絶対的な防御壁である。山のような物体が内側から動けば、それを止めることができる筈もなく…。

…アイツの痛みは

黒く変質した超々大型巨人が跳んだ先は、戦艦ウルティメイトの目の前。

…オレの痛み

着水と共に大爆発したかのような水柱が立ち昇り、何もかもが見えなくなってしまう。

…少しばかり痒かったぜ

そこを起点に広がる波紋が全世界、地球中に伝わっていく…。

…虫けらの分際で

やがて見え始めた超々大型巨人の影は、右手に何かを持っていた。

…面白いオモチャを

それは拳銃のような形状の、戦艦ウルティメイト。

…持っていやがるな

文字通り拳銃のように握り締めて、その銃口を自分の頭部こめかみに当てがっていた。

…もういっぺん撃ってみろよ

トリガーを引くような指の動きをするも、実際そこに引き金は設置されておらず、艦体底部がばりばりと音を立てて潰されていくばかり。戦艦には依然、ユウキ隊長が残っていて…。

「…タイチョオオオオオオオ!!」

刹那、紅い閃光が超々大型巨人に向かって上昇していく。それは活動限界残り僅かなトゥエルヴD。活動限界だけではない。ほぼ全てのエネルギーを戦艦ウルティメイトに注ぎ込んだ後である。それでも標高約3500メートルの山を登るかのように飛び、その手に握られた戦艦を奪い返さんと…。

「!!」

瞬間、トゥエルヴDは海に叩き落された。超々大型巨人の振った左手で、正に虫けらの如く叩き落されたのである。海中落下で衝撃が和らいだのも束の間、超々大型巨人の脚がゆらりと持ち上がったかと思うと、追い打ちをかけるように踏み抜かれた。海底にめり込んで尚、止まらぬ圧力。
光の巨人の肉体構造からして血が通っているのか、骨が臓器があるのか定かではないが、肉体の内側その内容物が粉砕された上で、皮膚を破ってぶちまけられてしまったかのような、圧倒的な圧力。超重力と言っても過言ではない。ぺしゃんこ、としか表現のしようがない。その足ひと踏みたった一撃で、トゥエルヴDは致命的なダメージを受けたことだけは確かであった…。

…ガイ
…オレはガイスト
…もう一人の『ツガイ』だ

それは黒鉄の巨人。JSMRが長年の経験則を元に総力を上げて考証した末に辿り着いた『巨人の力場』という仮説からなるウルティメイトアタック作戦を、痒かったの一言で済ましてしまう存在。
そもそも本作戦は、無意識化で巨人化した挙句に巨大化し続ける巨人、ツガマモル=ツガイが対象であった。『巨人の力場』を巨人として当然の権利として行使していたなら、話は全く別である。
例えどんなサイズの巨人であったとしても、全長3500メートル強の超々大型巨人であったとしても、巨人であることを自覚して立ったなら、その世界は巨人を受け入れなければならない、受け止めなければならないのである。その為に必要なのが、『巨人の力場』という世界のバランスを保つ力場。

…もう一人のオレが
…ヒトとして生きて遊べていた世界
…壊したのはオマエ等だ

ヒトであったツガマモルとは違う。ガイは、ガイストは、巨人であることを自覚している。ならばこの世界は、巨人として受け入れざるを得ない。つつけば破裂するゴム風船のような脆弱な防御力では巨人でいられないと言うのなら、相応の防御力が備わってしまう。身にまとう鎧は、鎧として防御力を発揮することになる。跳ばんとすれば、跳べるだけの重力に変動せざるを得ない。溢れ出す本来の質量が巨人であることの妨げになるのなら、消滅させるしかない。

…覚悟しろ
…ぶち壊してやる
 
巨大化し続ける巨人という未曽有の脅威は、巨人として受け入れることで、この世界自身が防いだ格好となる。だがしかし、結果的に世界を破壊する凶悪な破壊神を召喚したことに違いはなかった…。

~つづく~