∽∽RED EYES∽∽
★THE STAR☆DUST FIVE★
Episode.105
「Gravitation of the star」
空を見上げていた。
久しく見上げることがなかった。
常に、見下ろしていた。
見下す側であった。
圧倒的な暴力で支配する側だった。
それが今、見下ろされていた。
自分よりも大きなモノに、見下されていた。
「…ツウゥゥゥガアァァァイイィィィイイ!!」
猛り狂って叫ぶは全長3500メートルを越えて未だ巨大化し続ける黒鉄の巨人ガイスト。東京湾沖、太平洋上にて。『巨人の力場』によって物理的肉体を維持して地球上に降り立つ超々大型巨人。彼は地球上で最大最強最悪の存在である筈だった。しかしその目の前に、更に大きな巨人が聳え立っていた。
「…太陽の化身と大いなる守護神
…それは一度限りのフュージョンアップ
…アナタはトゥエルヴでもツガイでもない
…太陽の如き守護神
…その名はサンリウッツガイスト」
イラストレーター・キサラギミライのイマジネーションによって誕生した全長5000メートル強の大巨人。
仁王立ちのままぴくりとも動かなかったが、発せられる心臓の鼓動のような連続した音が大気を震わせていた。力強く野太い重低音が響くその度に、皮膚が筋肉がはち切れんばかりに盛り上がっていた。
しかしそれ以上、大きくなることはなかった。ぎりぎりと革を締め付けるような音もしていた。膨張する『ツガイ』の肉体を、『トゥエルヴ』の黒き力が締め上げて、現状の姿を維持しているかのようであった。
「…またいきなり随分デカいな?
…どうもここだとオレ等は無限にデカくなれちまう
…オマエ解ってんのか?
…このちいせー星の上じゃ動けねーよ
…いや
…オマエじゃ動かせねーよな?」
見下される屈辱を払い除けるように、そう言ってのけるガイスト。いくら『巨人の力場』が作用していたとしても、ガイストがそうであったように、その巨体がひとたび動けば、地球が揺らぐ。この星のあらゆる命が失われる可能性がある。
ここまでの戦闘で、ガイストの肉体は大きく損傷している。全身あらゆる箇所を抉られ、左肩から先と右手首の欠損。満身創痍であったが、それでも眼前の大巨人が攻撃してこれないことを理解していた。
「…オレならやれるぜ
…オマエとは違う
…優しいなんて聞こえは良いが
…弱いだけだ
…縛られているんだよ
…オレは違う
…オマエにできないことができる
…オレは自由だ」
ガイストは目の前の大巨人を、完全に『ツガイ』として認識していた。しかしサンリウッツガイストは答えない。唯、海鳴りのような音だけが海上に響いていた。それはサンリウッツガイストが、静かに浮上していることを意味していた。
「…オマエはこの世界でも
…随分と縛られていたぜ?
…デカい図体して虐げられてたな?」
海に浸かっていた足首が、徐々に見え始める。しかし水飛沫のひとつもあげず、静かに静かに、まるで初めから海水に浸かっていなかったかのように、その巨体が浮上していった。
「…オレが解放してやったんだ
…窮屈な生き方から解放してやった
…欲望のままに生きることを教えてやった」
やがてその巨体はガイストの頭上を越えていく。海水を滴らせることもなく、その光景はまるで不自然なCG合成のようであった。これは恐らく『巨人の力場』が、大巨人の海での移動を地球上では有り得ないことと認識した為に、故に発生する海流を抑え込んでいるのであろう。
「…なんだよ!!
…オレはここにいるぜ!?
…逃げるのか!!
…オレはまだやれるぜ!?
…何もできねーオマエの代わりに
…オレがやってやったんだ!!
…オマエが欲しいモノを奪ってやったんだ!!
…憎いか!?
…羨ましいか!?
…なんとか言えよ!!
…ん?」
まるで駄々をこねる子供のように叫び散らすガイストであったが、不意に自らも浮上し始めていることに気付いた。手足をばたつかせることはできても、浮上するのに逆らうことができない。頭上のサンリウッツガイストに視線を向けてみれば、視界を奪われる程の光を放っていた。
「…何をしたあああああああ!?」
ガイストは何も理解していなかった。既に大気圏に顔を突っ込み尚も大気圏外へと浮上していくサンリウッツガイストと、一定の距離を保って引っ張られるガイスト。やがて両者共に大気圏外へと出た頃には、ガイストは相手の周囲を円を描く軌道で回っていた。それはまるで引力で引き寄せられているかのようで…。
『サンリウッツグラビテーション』
膨張し続けるサンリウッツガイストのエネルギーは、『巨人の力場』によって形状を維持したまま蓄積されていた。人間の平均身長から換算する体重を遥かに越える物質としての密度が、無制限に高まっていた。星の大きさと比較したらまだ小さい肉体だが、その内側に星にも匹敵する膨大な質量を溜め込んでいた。
Episode.105
「Gravitation of the star」
空を見上げていた。
久しく見上げることがなかった。
常に、見下ろしていた。
見下す側であった。
圧倒的な暴力で支配する側だった。
それが今、見下ろされていた。
自分よりも大きなモノに、見下されていた。
「…ツウゥゥゥガアァァァイイィィィイイ!!」
猛り狂って叫ぶは全長3500メートルを越えて未だ巨大化し続ける黒鉄の巨人ガイスト。東京湾沖、太平洋上にて。『巨人の力場』によって物理的肉体を維持して地球上に降り立つ超々大型巨人。彼は地球上で最大最強最悪の存在である筈だった。しかしその目の前に、更に大きな巨人が聳え立っていた。
「…太陽の化身と大いなる守護神
…それは一度限りのフュージョンアップ
…アナタはトゥエルヴでもツガイでもない
…太陽の如き守護神
…その名はサンリウッツガイスト」
イラストレーター・キサラギミライのイマジネーションによって誕生した全長5000メートル強の大巨人。
仁王立ちのままぴくりとも動かなかったが、発せられる心臓の鼓動のような連続した音が大気を震わせていた。力強く野太い重低音が響くその度に、皮膚が筋肉がはち切れんばかりに盛り上がっていた。
しかしそれ以上、大きくなることはなかった。ぎりぎりと革を締め付けるような音もしていた。膨張する『ツガイ』の肉体を、『トゥエルヴ』の黒き力が締め上げて、現状の姿を維持しているかのようであった。
「…またいきなり随分デカいな?
…どうもここだとオレ等は無限にデカくなれちまう
…オマエ解ってんのか?
…このちいせー星の上じゃ動けねーよ
…いや
…オマエじゃ動かせねーよな?」
見下される屈辱を払い除けるように、そう言ってのけるガイスト。いくら『巨人の力場』が作用していたとしても、ガイストがそうであったように、その巨体がひとたび動けば、地球が揺らぐ。この星のあらゆる命が失われる可能性がある。
ここまでの戦闘で、ガイストの肉体は大きく損傷している。全身あらゆる箇所を抉られ、左肩から先と右手首の欠損。満身創痍であったが、それでも眼前の大巨人が攻撃してこれないことを理解していた。
「…オレならやれるぜ
…オマエとは違う
…優しいなんて聞こえは良いが
…弱いだけだ
…縛られているんだよ
…オレは違う
…オマエにできないことができる
…オレは自由だ」
ガイストは目の前の大巨人を、完全に『ツガイ』として認識していた。しかしサンリウッツガイストは答えない。唯、海鳴りのような音だけが海上に響いていた。それはサンリウッツガイストが、静かに浮上していることを意味していた。
「…オマエはこの世界でも
…随分と縛られていたぜ?
…デカい図体して虐げられてたな?」
海に浸かっていた足首が、徐々に見え始める。しかし水飛沫のひとつもあげず、静かに静かに、まるで初めから海水に浸かっていなかったかのように、その巨体が浮上していった。
「…オレが解放してやったんだ
…窮屈な生き方から解放してやった
…欲望のままに生きることを教えてやった」
やがてその巨体はガイストの頭上を越えていく。海水を滴らせることもなく、その光景はまるで不自然なCG合成のようであった。これは恐らく『巨人の力場』が、大巨人の海での移動を地球上では有り得ないことと認識した為に、故に発生する海流を抑え込んでいるのであろう。
「…なんだよ!!
…オレはここにいるぜ!?
…逃げるのか!!
…オレはまだやれるぜ!?
…何もできねーオマエの代わりに
…オレがやってやったんだ!!
…オマエが欲しいモノを奪ってやったんだ!!
…憎いか!?
…羨ましいか!?
…なんとか言えよ!!
…ん?」
まるで駄々をこねる子供のように叫び散らすガイストであったが、不意に自らも浮上し始めていることに気付いた。手足をばたつかせることはできても、浮上するのに逆らうことができない。頭上のサンリウッツガイストに視線を向けてみれば、視界を奪われる程の光を放っていた。
「…何をしたあああああああ!?」
ガイストは何も理解していなかった。既に大気圏に顔を突っ込み尚も大気圏外へと浮上していくサンリウッツガイストと、一定の距離を保って引っ張られるガイスト。やがて両者共に大気圏外へと出た頃には、ガイストは相手の周囲を円を描く軌道で回っていた。それはまるで引力で引き寄せられているかのようで…。
『サンリウッツグラビテーション』
膨張し続けるサンリウッツガイストのエネルギーは、『巨人の力場』によって形状を維持したまま蓄積されていた。人間の平均身長から換算する体重を遥かに越える物質としての密度が、無制限に高まっていた。星の大きさと比較したらまだ小さい肉体だが、その内側に星にも匹敵する膨大な質量を溜め込んでいた。
締め付ける黒いラインが辛うじて人型を認識させる程度に、太陽の如き強烈な閃光を放つ大巨人。自らを天体に置き換えたとして、相手をその衛星と位置付けることにより、地球上の他の物体を巻き込まずして大気圏外への物理的移動を果たしたのである…。
「…宇宙は広いね」
サンリウッツガイストが一言発した。それを機に、太陽の如き閃光が収まり始める。すると引き寄せ合う引力が弱まったのか、ガイストは宇宙空間に開放された。
「…熱かったり寒かったり忙しなかったぜ
…随分と静かなところに来ちまったな
…ギャラリーもいねーよ
…誰にも迷惑かけたくないってか?
…暗く静かで冷たく何もない漆黒の闇
…まるでオマエの心の中だな」
地球外に出たことが影響しているのか、それまでの膨張速度よりも勢いを増して、急速に巨大化の進行が止まらないガイスト。驚くべきことに、欠損した肉体の再生まで始まっていた。地球を飛び出したことによって、『巨人の力場』がガイスト本来のポテンシャルのままに開放されているのかも知れない。
「…いいや
…何もないのはガイスト
…オマエ自身だ
…明るくて暖かくて賑やかな
…笑顔の溢れる光の世界に
…ボクは生きている」
そう言い返したサンリウッツガイスト。それは『星の記憶』を通した異世界の『ツガイ』としての言葉なのか。
「…何を言っている?
…オレとオマエは表裏一体だろ?
…光と闇
…一心同体ってやつじゃねーのか?」
急速な巨大化で対等なサイズになりつつあるガイストは、色こそ違えど同じ顔をした眼前の自分自身を、首を傾げて覗き込んだ。
「…オマエがボクの一部であり
…その闇が心の中にあることを否定しない
…でも今確かに
…ボクは光の中にいる」
くっつく程に顔を付き合わせる2体の巨人。無限大に広がる宇宙空間において、もはや大きさは意味がなかった。ツガイは真っ直ぐにガイストと、己の心と向き合っていた。
「…そいつはめでたいぜ!!
…お花畑で遊んで暮らしてきたか?
…この世界のオマエは違ったぜ?
…欲望のままに遊んでやったさ!!
…この世界のオマエができないことを
…オレが全てやってやったんだ!!」
完全に肉体が再生されたガイストは、その拳を振りかざして殴りかかった。
「…それは違う
…オマエの欲望はオマエ自身のモノだ
…この世界の自分自身を
…ツガマモルを
…オマエは利用したに過ぎない」
ツガイも拳を振りかざし、相手の拳に拳を突き合せた。拮抗した力と力の衝突によって生じた衝撃波が広大な宇宙空間に波状に広がっていく。
「…どこが違うんだ!?
…オレはオマエの為に!!
…オマエの傷みも怒りも憎しみも!!
…全てオレが受け止めてやった!!
…優しすぎる弱すぎるオマエの代わりに
…オレが全てを壊してやった!!
…それのどこが間違っているっていうんだ!?」
ガイストはもう一方の拳を振ったが、
「…ボクは、守りたかった」
瞬間、ツガイの拳がガイストの顎を砕き飛ばしていた。相手の拳を避けて潜り、拳を突き上げていた。それは決定的な一撃であった。ガイストは意識を刈り取られたのか、無重力空間において勢いのままに回転し続けていた。
「…帰ろう
…ここはボク等がいてはいけない世界だ」
ツガイはそう言って回転するガイストを抱きとめると、
『サンリウッツダイナマイト』
それは太陽の如き熱き輝き。ツガイの、いやサンリウッツガイストに宿りし天文学的膨大なエネルギーの膨張。
まるで超新星の如き大爆発が発生した刹那、そのエネルギーが中心に逆流し、一瞬で消滅した。跡形もなく、まるでそこには最初から何も無かったかのように…。
「…エネルギー波長ロスト!!
2体の巨人は完全に消滅しました!!
質量のひとかけらも残っていません!!
完全に消滅です!!」
舞台は地球上、太平洋上のBS艦内、オペレーター・タザキ隊員の報告。対超々大型巨人迎撃作戦において囮の役割を担っていたBS艦は、安全な距離を保って最優先で守られており、超々大型巨人に肉薄されるも致命的被害はなく、指揮系統は辛うじて機能していた。作戦は失敗したものの、大気圏外に移行した戦闘をモニタリングすることだけはできていた。
「…ちょっと待ってサエキくんは!?」
BS艦内、キサラギミライが思い出したかのようにそう言った。サエキトウジはトゥエルヴDでありSであり、サンリウッツガイストの素体となっていたのである。
「…あ、いえ、
エネルギー波長が微弱すぎる為に
捉え切れていませんでした。
微かですがトゥエルヴDの
エネルギー波長を大気圏内に確認できます!!」
遅れて報告するタザキ隊員。モニター上では、まるで小さな隕石落下の様子の如く、熱を帯びて発火する豆粒のような物体を映し出していた。拡大して表示されるそれは確かに人型の巨人、トゥエルヴDのようであった。
しかし隕石という表現はあながち間違いではなく、まるで石化したかのような状態であった。ぐんぐん落下してくるそれは、誰かの意思によって操作されているかの如く、真っ直ぐBS艦に向かってきていた。このままでは直撃は避けられず…。
「…ここで勇者さまの登場って訳よ!!」
それを受け止めたのは、赤毛の巨人ジークライトであった。石像のようなトゥエルヴDを抱えたまま、ピラミッド型のBS艦の斜めの装甲板にふわりと着地した。
「…ったくタフな奴だぜ
…サエキは中で生きている
…っていうかオレ様がなんとかすると思って
…無茶ぶりするのやめてくんねーかなマジ
…スターダストファイブって他にもいるんだぜ?
…こういうとき動くのオレばっか!!」
BS艦内のメディカルルームにて安静にしていたアカバネユウトであったが、彼は基本的にミライを守る為には命を惜しまない。
「…どうにか状況終了って感じね。」
それは戦艦ウルティメイトより、ユウキ隊長の通信であった。
「…コトリちゃんも無事ね?
被害状況確認急いでちょうだい。
…あとできれば早めに私達の回収もよろしく。
ちょっと救護班なるはやでお願い…。」
戦艦自体はガイストに玩具のように弄ばれてしまったものの、彼女は喋れる程度には無事のようであった。
とにもかくにも、対超々大型巨人迎撃作戦は一応の結末を迎えた…。
「…パパ?」
BS艦内、独り部屋の隅で柱にしがみついていた少女、コトリ・アレイが呟いた。目の前で、キラキラと粉雪のようなモノが舞っていた。宙を漂うそれを見て、少女はそう呟いたのである。
「…コトリちゃん!!」
何かを察して駆け付けたミライは、不定形な光の粒子の集合体を目撃した。その集合体は、まるで手を伸ばすように、ふわりふわりと少女の頬を撫でた。
「…パパなの?
…パパのユーレイ?」
両親の離婚の際に、父親は死んだとでも聞かされていたのか、少女はそれを父親の幽霊と受け止めていた。怖れてはいなかった。
「…ツガ…マモル…なの?」
その異様な状況を見て、しかしミライは、まるで父娘の再会に立ち会っている光景に見えてしまった。彼女の眼にそう映ったのなら、それは真実。彼女が思い描いたことは、具現化される。光の粒子がヒトの姿を形作り、実体化していく。
「…コ…ト…リ」
優しい眼差しをした黒髪の、ヒトの形をしたモノが、掠れた声で呟いた。そして血の通った温かな手で、久方ぶりに再会した一人娘を抱き締めた。
「…ごめんなさい、
アナタのことテレビの中でしか
見たことなかったわ。
想像力の欠如ってやつね。
ま、裸よりはマシよね…。」
その光景に水を差すように、いや違う、もらい泣きしてなるものかとそっぽを向きながら、ミライはそう言った。奇跡が起きたその瞬間、しかし実体化したヒトの形をしたモノ、ツガマモルが身に付けていたのは、バスケのユニホームであった…。
…アリガトウ
それは誰の声なのか。
誰に向けられた言葉だったのか。
巨人と成り果てたこの世界のツガマモルが、ヒトとして生還できた奇跡。それは何者かの大いなる力が、ミライの能力を介して起こしたこと。それは遠く『星の記憶』の先、優しき大いなる守護神の願いか、破壊神の欲望か…。
~つづく~




