学校から書道の授業があるから、集団申し込みの封筒が配られた。
母は大学で書道を勉強していたと、小さい頃から聞かされていた。
確かに年賀状なんかも、一枚一枚、手書きで毎年書いていたり、母が書いたとされる書道の掛け軸なんかが家に飾ってあったから、書道に対する思いはあるはずと、期待した。
習字セットは姉とは併用しないだろうと思っていた。
「習字の授業があるから、習字セットが必要なんだけど」と伝えたら、母がまたどこかから調達してきた姉のお下がりというか、併用して使うようにと、赤い入れ物に入ったそれを使うこととなった。
使いかけの硯。
墨。
大筆。
小筆。
下敷き。
学校一斉注文した子たちは筆をまとめる、筆巻があって羨ましかった。
スポイトも私だけなかったけど、欲しいとも言えなかった。
子供にピアノを習わせているお母さんになりたかった母。
その夢を叶えたのだから、もういいじゃない。
ピアノ、辞めてもいいじゃない。
そんなにピアノだけに全振りしなくてもいいと思う。
その月謝で習字セットは買えたよ。
