「ねえ、阿文くん。ちょっと、二人っきりで話がしたい」
かの国民的アイドル、叶美智にそんなことを言われればほとんどの男性は胸を躍らせて、まさかまさかの展開に期待をするはずだ。
だが、この阿文という男は損のそこらの男とは訳が違う。
心はなにも動かず、それどころか『警戒』をしていた。
叶美智のカリスマ性アイドルは海外にいた頃も耳にしている。同時に海外でもBシステムの戦いを歩んでいた阿文には、叶美智のとあるウワサを耳にしていた。
「あっちで、話そう?」
「ああ」
それはアイドル叶美智はBシステム使用者のみの編成テロリスト集団『新世界を望む者』に所属していると言うこと。
話を聞いた時点では悪い冗談だと思った。
彼女の労働は同年齢の学生の比ではない。睡眠時間を可能なまでに削り、テレビ収録、歌のレッスン、ダンスまで。
多忙を極めた彼女のどこに、Bシステムにつけ込む時間があるのか。
テロリスト集団『新世界を拒む者』は公には知られていないが、警察上層部、FBI、権力者トップがその名を出すとたちまち顔が蒼白するという噂を阿文は聞いている。
『新世界を望む者』たちの正体、目的、行動までもが不明で、果たして実在しているのか。
(十義たちは俺たちについてこれなかったか)
だがこれで良かったのかもしれない。Bシステム使用者ではいの聖火を巻き込まずに済んだのだから。
「ここで、いいかな」
そこは会場からほど近い駐車場だった。どこもかしくも車が止められていて、不思議なことに人がいない。
まるでこの区域だけ、人があえて入ってこないかのような。
喧噪が遠くへ聞こえるのは、それほどこの駐車場が静まりかえっているからである。
「ふふ。すっごいこわい顔してるよ、阿文くん」
警戒がそのまま顔に出ているらしい。
美智はくすくすと口元に手を当ててほほえむ。アイドルファンなら一発で胸を撃ち抜かれるような笑みだ。
「悪いな。どうやら緊張しているらしい」
問題はここからだ。美智が何かを思ってここを連れてきたのは確かだ。重大な告白をするのは確か。その中身がわからない以上、下手にBシステムを展開するわけにはいかない。
(どっちだ?)
阿文は一度だけまぶたを閉ざす。
まぶたの脳裏によぎったのは、Bシステムによって無害な人が傷つく、そんな凄惨な光景だった。
これ以上人を傷つけてはいけない。かつての師を思い浮かべて、そう言い聞かせる。
「ねえ、阿文くん。世界って何だと思う?」
そう言われたときには、本当に迷った。
一瞬だけ、こいつは電波系なのか? とも思ってしまった。
「偉い学者さんはね、世界はたくさんあって、たくさんの世界が同時に時間を巡っているって。パラレルワールドとか、平行世界とか。だけどね、本当は違うんだよ。世界は、地球は呪われているの。地球は『約束の時間』が訪れると必ず崩壊する。すると呪いが発動して、恐竜よりも前の時代にタイムスリップするんだ。そしてまた一から始まって、『約束の時間』が訪れて、また一になる。その繰り返しが、永遠と繰り返されている」
なにを言っているのか、わからなかった。
かの国民的アイドルの言葉があまりにも常識の外へ逸脱している。
ばかげている。
そんなことがあるわけがない。
だが、悲しいことに確信もあった。叶美智は何かを知っている。阿文と同じ世界の住人である。
阿文は、無言に携帯を手にとって、旗のついた槍を展開した。
「ねえ、阿文くん。私は、あなたにスカウトをしに来たの。あなたも一緒に呪われた『約束の時間』から地球を救わない?」
美智はBシステムを展開も驚かなかった。
それが確定。
「どうすれば『約束の時間』を防ぐことができる?」
「それは簡単」
美智はゆっくりと、優しく、確認するように。
「雲狩十義を殺すんだよ」
あとがき
はいっ。皆さんこんばんわ。ランボーです。
今回は物語の重要部分を書かせて貰いました。
『約束の時間』とはいったい何なのか?
『新世界を望む者』とはどんな組織なのか?
雲狩十義はなぜそこまで命を狙われるのか?
ゆっくりと謎を紐解こうと思います。もしかしたらさらなる謎が現れるかもしれませんね。
それでは、また後日で!