ハードボイルド・ストーリー / Op.3-concluded
日本に降り立ったオレは時差ボケの頭に喝を入れ、早速作業に着手した。
まず体細胞からウイルスベクターで遺伝子を導入。
24遺伝子から最終的に「Oct13/14」「Sock569」「Klf42」「ca-PmYc」の4遺伝子を用いて、全ての細胞に分化することが出来るように細胞を初期化させる。
そしてK418を添加して培養を試みる。
細胞は分裂を繰り返し、やがてコロニーが形成された。
この細胞が分化万能性細胞だ。
ソフィーの情報通りなら、この分化万能性細胞は色んな細胞に変化させることが出来る。
その性質を用いて、異なる遺伝子を持つもの同士の一致性を証明出来るはずだというのだ。
注意深く経過を観察する。
そして・・・
ついにこの時がやってきた。
オレは自分の目を疑った。
しかし、紛れもない真実が目の前にあった。
ついに完全一致に成功したと思える瞬間だ。
これで大切なあの人を守ることが出来る。
ボスの苦虫を噛み潰したような顔が浮かぶようだ。
あのミッション指令から、どれぐらいの時間が流れたのだろう。
オレのヒゲも随分伸びてしまった。
なんとも言えない達成感と疲労感に襲われた。
まぶたが重い。
どんどん意識が遠のいていく・・・。
どれぐらい眠っていたんだろう。
時計の針は8時を回っている。
さぁ、今日からまた平和な一日が始まる。
真新しいシャツに着替えて、ドアを開ける。
朝陽が眩しかった。
おっと、危うく完全一致の成果を報告するのを忘れるところだったぜ。
Here we go!!
まず体細胞からウイルスベクターで遺伝子を導入。
24遺伝子から最終的に「Oct13/14」「Sock569」「Klf42」「ca-PmYc」の4遺伝子を用いて、全ての細胞に分化することが出来るように細胞を初期化させる。
そしてK418を添加して培養を試みる。
細胞は分裂を繰り返し、やがてコロニーが形成された。
この細胞が分化万能性細胞だ。
ソフィーの情報通りなら、この分化万能性細胞は色んな細胞に変化させることが出来る。
その性質を用いて、異なる遺伝子を持つもの同士の一致性を証明出来るはずだというのだ。
注意深く経過を観察する。
そして・・・
ついにこの時がやってきた。
オレは自分の目を疑った。
しかし、紛れもない真実が目の前にあった。
ついに完全一致に成功したと思える瞬間だ。
これで大切なあの人を守ることが出来る。
ボスの苦虫を噛み潰したような顔が浮かぶようだ。
あのミッション指令から、どれぐらいの時間が流れたのだろう。
オレのヒゲも随分伸びてしまった。
なんとも言えない達成感と疲労感に襲われた。
まぶたが重い。
どんどん意識が遠のいていく・・・。
どれぐらい眠っていたんだろう。
時計の針は8時を回っている。
さぁ、今日からまた平和な一日が始まる。
真新しいシャツに着替えて、ドアを開ける。
朝陽が眩しかった。
おっと、危うく完全一致の成果を報告するのを忘れるところだったぜ。
Here we go!!
ハードボイルド・ストーリー / Op.3-2
バー「Soeurs des Cerises」の店内は、暖色系の優しい照明に古いジャズが流れていた。
だが、そんな照明も心地良いジャズもオレには届かない。
ただ、ソフィーだけを探した。
幸い店内は狭いうえに、客も少ない。
おかげでカウンター席にいる赤いドレスを着たブルネットの女がソフィーだと、すぐにピンときた。
もう一度大きく息を吐き、見下されないよう可能な限りクールに女の隣に座る。
女は少し首をかしげ、青い瞳の視線をこちらに向けた。
バーテンにマティーニを注文すると、女が静かに語りかけてきた。
「アナタ・・・・・・Redsさん?」
彼女の問いかけに無言で頷き、そして、逆に女に問いかけた。
「君がソフィー?」
彼女も答えなかったが、真っ赤なルージュの口元に笑みを浮かべて小さく頷いた。
やはり、彼女がソフィーだった。
はやる気持ちを抑えきれなかった。
「情報とは?」
「せっかちね。まだマティーニも来てないじゃない。」
視線も向けずに、あっさりソフィーにかわされた。
空気を読んだように、バーテンがマティーニを差し出す。
オレはグラスを持つと、ソフィーの前に置かれているスクリュードライバーのグラスに軽く当てた。
「カチン」と乾いた音が響く。
「ほら、マティーニなら来たぜ。」
ソフィーは呆れたように肩をすくめると、小さく息を吐きシャネルのバッグに手を忍ばせる。
「!」
とっさにオレは身構えた。
その様子にソフィーは一瞬手を止めると、クスっと笑った。
「バカね。ピストルなんて出てこないわよ。職業病かしら?」
ダメだ、焦り過ぎか?
どうもオレのペースにならない。
ソフィーはバッグから封筒を取り出すと、オレの前に差し出した。
オレは、彼女の瞳を見ながらその封筒を手に取った。
ソフィーは何も言わないが、その青い瞳は早く中身を見れば?と言っているように思えた。
その視線を逸らさずに中身を取り出すと、ゆっくり視線を移して確認した。
見た瞬間、時が止まった気がした。
目からウロコの情報だ。
「これだ!!これなら証明できる!!」
情報は意外にもシンプルなものだった。
しかし、なるほどと思わせる説得力がある。
灯台下暗しだ。
とにかく、このミッションを終わらせたいオレは、ソフィーに別れを告げて席を立とうとした。
「ありがとう。この礼は必ずする。今は急がなきゃいけないんだ。」
「あら。貰うものだけ貰って帰る気?私には何もくれないわけ?」
「そんなつもりじゃない。ただ先を急いでるんだ。」
「な~に、それ。こんな有力情報を提供してあげたのよ?少しぐらい私を楽しませてくれても良いんじゃない?」
「もちろん感謝している。だが楽しませたい人は君じゃない。日本にいるんだ。」
ありったけの罵詈雑言を背中に浴びながら、オレは足早に「Soeurs des Cerises」を出てコート・ダジュール国際空港へ急ぐ。
ようやく気持ちも落ち着き、車中から景色を見る余裕がでてきた。
入り組んだラビリンス、ブラウン系で統一されたチャーミングな建物、サレヤ広場や朝市…
南仏ニースの旧市街地は、このミッションが終われば再度訪れたいと思わせるほど美しい。
そして帰りのエールフランス航空278便で、オレはやっと眠りにつくことが出来た・・・。
To be concluded.
だが、そんな照明も心地良いジャズもオレには届かない。
ただ、ソフィーだけを探した。
幸い店内は狭いうえに、客も少ない。
おかげでカウンター席にいる赤いドレスを着たブルネットの女がソフィーだと、すぐにピンときた。
もう一度大きく息を吐き、見下されないよう可能な限りクールに女の隣に座る。
女は少し首をかしげ、青い瞳の視線をこちらに向けた。
バーテンにマティーニを注文すると、女が静かに語りかけてきた。
「アナタ・・・・・・Redsさん?」
彼女の問いかけに無言で頷き、そして、逆に女に問いかけた。
「君がソフィー?」
彼女も答えなかったが、真っ赤なルージュの口元に笑みを浮かべて小さく頷いた。
やはり、彼女がソフィーだった。
はやる気持ちを抑えきれなかった。
「情報とは?」
「せっかちね。まだマティーニも来てないじゃない。」
視線も向けずに、あっさりソフィーにかわされた。
空気を読んだように、バーテンがマティーニを差し出す。
オレはグラスを持つと、ソフィーの前に置かれているスクリュードライバーのグラスに軽く当てた。
「カチン」と乾いた音が響く。
「ほら、マティーニなら来たぜ。」
ソフィーは呆れたように肩をすくめると、小さく息を吐きシャネルのバッグに手を忍ばせる。
「!」
とっさにオレは身構えた。
その様子にソフィーは一瞬手を止めると、クスっと笑った。
「バカね。ピストルなんて出てこないわよ。職業病かしら?」
ダメだ、焦り過ぎか?
どうもオレのペースにならない。
ソフィーはバッグから封筒を取り出すと、オレの前に差し出した。
オレは、彼女の瞳を見ながらその封筒を手に取った。
ソフィーは何も言わないが、その青い瞳は早く中身を見れば?と言っているように思えた。
その視線を逸らさずに中身を取り出すと、ゆっくり視線を移して確認した。
見た瞬間、時が止まった気がした。
目からウロコの情報だ。
「これだ!!これなら証明できる!!」
情報は意外にもシンプルなものだった。
しかし、なるほどと思わせる説得力がある。
灯台下暗しだ。
とにかく、このミッションを終わらせたいオレは、ソフィーに別れを告げて席を立とうとした。
「ありがとう。この礼は必ずする。今は急がなきゃいけないんだ。」
「あら。貰うものだけ貰って帰る気?私には何もくれないわけ?」
「そんなつもりじゃない。ただ先を急いでるんだ。」
「な~に、それ。こんな有力情報を提供してあげたのよ?少しぐらい私を楽しませてくれても良いんじゃない?」
「もちろん感謝している。だが楽しませたい人は君じゃない。日本にいるんだ。」
ありったけの罵詈雑言を背中に浴びながら、オレは足早に「Soeurs des Cerises」を出てコート・ダジュール国際空港へ急ぐ。
ようやく気持ちも落ち着き、車中から景色を見る余裕がでてきた。
入り組んだラビリンス、ブラウン系で統一されたチャーミングな建物、サレヤ広場や朝市…
南仏ニースの旧市街地は、このミッションが終われば再度訪れたいと思わせるほど美しい。
そして帰りのエールフランス航空278便で、オレはやっと眠りにつくことが出来た・・・。
To be concluded.
