「近所の人が かじゅちゅしゅ くれたから飲もうかな。」





ある日

夕食前に嫁父が言った





……かじゅちゅしゅ って

何だ?





飲むって言ってるから

かじゅちゅしゅ の しゅ は

きっと酒だろう





かじゅちゅ酒





中国の方の養命酒の一種だろうか





果寿柱酒





うん

こんな漢字





とても体に良さそうだ





そんな事を考えていると

嫁父が

テーブルの上にボトルを置いた





……………。





どう見ても

赤ワインだった





かじゅちゅしゅ??





訳がわからん





念のために

ボトルのラベルを見る





確かにワインと書いてある




ん?





部類:果実酒





かじつしゅ……

かじゅつしゅ……

かじゅちゅしゅ……





これだったか…





かじつしゅ

が言えず





かじゅちゅしゅ

と……。





「たまには かじゅちゅしゅ も良いね。」





「………そうですね。」





あえて

何も突っ込まなかった










「お父さんに腕相撲で勝ったら
5000円やるよ。」







よくそう言われて

親父と腕相撲で遊んだ





小学生の中では

腕相撲は

負け知らずだった俺も

親父にとってはたかが子供





両手でやっても

勝てる訳もなく

よく遊ばれていた





親戚の叔父さん達で集まって

皆で腕相撲をしていても

俺の親父が負けたのを

見たことがなかった





そんな親父にいつか

勝ちたいという

悔しい気持ちになるのだか




そんな親父が

俺には誇りでもあった










「お父さんに腕相撲で勝ったら
5000円やるよ。」





ある時

久しぶりに

親父が腕相撲の話をしてきた





「良いよ、やろう。」





その頃俺は

高校三年ぐらいだった





どれだけ親父に

追い付いたのだろう?





「親父、いくよ。」





二人同時に力をこめた瞬間

親父の体が少し傾いた気がした





…………。





「ちょっとまて、お父さん
今日は調子が悪いみたいだ…。」





そう言って

勝負がつかないまま

部屋を出ていく親父





背中が

昔より小さく見えた気がした










その日以来

親父は

腕相撲の話をしなくなった…。










勝てたのかもしれないが

勝負がつかなくて

良かったと思う





だから俺は

今でも





親父が腕相撲で負けたことを

見たことがない










嫁父
「お母さん!!暑いからトビラ開けてくんな!!





夕食中

そう言われた嫁母は

言われるままに

トビラを全開に……





おいおい





嫁父は

ストーブから一番近いうえに

バカみたいに

ゴアゴアのジャンパーを着て…

バカみたいに

モコモコのマフラーを首に巻いていた…





トビラを開ける前に

ストーブを消すなり

そのバカみたいに

着込んでいる物を脱ぐとか

色々方法があるだろうに……





よりによって

一番自分勝手な方法ですな…





お陰さまで

ストーブから一番遠く

トビラに一番近い

俺の体は冷え込み





ストーブに一番近く

トビラから一番遠い嫁父は

満足そうだった





オトウサンヨカッタデスネ