砦は心の中にある | ■RED AND BLACK■レ・ミゼラブル2015日記

砦は心の中にある

わたしにとって、岸アンジョルラスは特別だわ。

役者さん個人としてすごくファンであるとか、そういうことではないのだけど、彼のアンジョルラスを観ることによって、自分の内面に気づかされることが多いから。


6/10の昼に、岸アンジョの「♪ 戦う者の歌が聞こえるか」を聴いたときのこと。とっさに「いや、聞こえない」と思ってしまった。もちろん岸アンジョの声が聞こえなかったわけではない。ただ、自分との戦いから逃げていることを自覚してしまったのだ。


そのときのわたしはもやもやとした悩み事を抱えていて、正直、レミゼの舞台に集中するのも難しい精神状態。だけど学生たちに蜂起を呼びかけるリーダーの声で、目が覚めたんだよね。わたしは目の前にある問題におろおろするばかりで、それに立ち向かうことを無意識のうちに避けているんじゃないか、…って。

翌週末にまた観た岸アンジョルラス。今度はエピローグで、はっとした。「♪ 列に入れよ 我らの味方に 砦のむこうに憧れの世界」 死者も生者も一緒に大合唱するこの歌、死んだアンジョルラスもバリケードで戦ったときの衣装で朗らかに歌い上げている。それを目にしたとき、「砦の向こうに憧れの世界」という言葉が、具体的なかたちとなって見えた。砦は、まさに心の中にあるんじゃないだろうか。生きていくこととは、心の中にあるバリケードで自分の内面と日々戦っていくことなんじゃないかな、と。レミゼで繰り広げられる学生たちの戦いは、私にとって、物語の中だけにとどまる話ではない。


こういうことを教えてくれるのは、どうしていつも岸アンジョルラスなんだろう。たぶん、彼の芝居にある熱さや、青臭いまでのひたむきさにひかれるんだろうな。自分がいつの間にかなくしていて、取り戻したいと願っているもの。