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ピエロは、勝ち誇ったようにいった。

「皆さん、うすうすは、そうじゃないかと思っていたんでしょう？

大女優の美咲さんが、映画を引退したのは、血塗られた事件のせいじゃなかったかと、

おかしな憶測で、無責任な記事を書いていた人もいたのじゃなかったですか？」

けらけら笑い、ピエロは当たりを見回した。

「その通りだったのですから、皆さん、喜んでいいのじゃないですか？」

ピエロは腰に手を当てて、仁王立ちになっていた。背は低いのに、小さな巨人であるかのように見えた。

「貴様、何をいっておるのだ」芸能社長が声をあげた。

「だ、だから、どうしたっていうんだ。書いたから、どうだって言うんだ？」ドアにかじりついていた男が怒鳴った。

ピエロはその男に向かって、いった。

「美咲セツ子のファンとしては、許し難いです。だから、真実を、私たちは教えようと、この、封印された映画をお見せしたのです」

「美咲は、やっぱり、殺人をしたんだろう？」

「そういう問題じゃないんだ！」

目を大きく開き、真っ赤な口から唾を飛ばして、ピエロは吠えた。

「すべては美のためだったのが分からないか。ラストシーンを見ろ。それがあって、美崎さんと恋人は、悲劇の終末を迎えたんだ。あのシーンのために、すべては行われたんだ。芸術がわからないのか！」

「もう、いいよ、この田舎っぺ！」

目つきの悪い若者が、うんざりした調子でいった。

「おまえ、ぼやおやしてると、二階の死体が腐るぞ。さっきから、あのじいさんが言ってるだろう、警察を呼べって…

あ、その前に、美咲セツ子はどうしたんだ、ばあさんをは来ないのか？

おまえなあ、奴は、借金踏み倒そうとしてる婆さんなんだぞ。知らねえのか？」

ピエロは、怒り心頭に発したような顔で若者をにらんでいた。そして震える声でいった。

「芸術のためだ。美崎さんと、恋人は、悲劇の終末を迎えたんだ。芸術のわからない連中に、美咲さんを会わせるわけにはいかない。汚れた奴等は、消えろ」

「何だと？わけのわからんことを、偉そうにいいやがって。本当に馬鹿野郎だな…。すると何かよ、芸術のためなら、借金を踏み倒していいってのか」

若い男も頭に血がのぼってきたらしかった。

「ははあ。おめえ、美咲とグルだな。おめえか？あの二階の部屋の男を殺し…」

若い男が言葉を最後までいい終わらないうちに、銃声がした。

抜く手も見せない早業だった。

若い男は、どさり、とそこに倒れた。舞台の上のピエロが手にした拳銃からは、煙がうすくたなびいていた。

続いて私が唖然とする間もなく、ピエロの拳銃は２回、火を噴いた。

それは、若い男の連れの二人が、懐に手を入れた途端の出来事だった。

二人の男は、それぞれ、顔面の半分ほどを吹き飛ばされた。

・・・・つづく

製氷室のマリア97 顔の半分が