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「ちくしょう、へんな注射しやがって」
「注射?」
「変な医者が来て、変な注射しやがった」
マリは怒っているようだったが、その声には元気がなかった。
「秋山氏ですか、その医者って」
「名前なんか、知らねえ・・・」
「そう・・・」
「あんた、探偵だろ」
マリは急に表情を変えた。心細いような顔だった。目を細めて、いった。
「テツオから聞いたよ。あんた、あたしがラリって、ビルから飛び降りようとしたのを、助けて、くれたんだってね」
「まあ、そういうことでしょうか」
「なに、かっこつけて。へへ、でも、どうも、ありがとう」
マリは舌を出して笑った。しかし、その笑いに力はなかった。
「あたしねえ・・・いっとかなくちゃ」
「え?」
「いっとかなくちゃ」
マリは妙に透き通った笑顔で、いった。
「テツオを守ってやってね。あたしは、つかまっちゃったけど、あいつ、なんとか、うまく逃げたよ。
あいつ、つかまったら、絶対、殺されるから、守ってやってね。
あいつ、正義のために、戦ってんだよ、ああ見えても」
「・・・・」
「あたしね、市長候補とは、何もなかったんだよ。自殺のときに書いた手紙もウソだ。
ああいうウソをついて、あたしが死なないと、テツオが殺されるっていうから、あたしが、ああいうウソをついたんだ・・・
市長候補は、そんな人じゃない。悪いのは藤原なんだ。エロじじいなんだ」
「藤原っていうのは、対立候補の・・・」
そうたずねても、マリは答えず、自分の世界に浸りきったように、しゃべり続けた。
「あたしたちは、つかまった。警察につかまった。なんでつかまるの?
あたしが、ヤクをやってたからだってさ。でも、探偵」
マリは手をあげて、空をつかむように、その手を泳がせた。
「探偵、どこにいるの。助けてよ。あんた、正義の味方じゃないの?」
「探偵は、ここにいますよ」
「どこよ?」
マリは、様子がおかしかった。
「いっとかなくっちゃ。ねえ、よく聞いといてよ」
「イエス」
「馬鹿。はやく、ジョーを捜してよ」
「ブラック・シーガル・ジョー?」
・・・・つづく

