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「やあ」
私は秋山に手をあげて挨拶した。秋山は私の顔を見て、最初は驚き、それから急に怪訝そうな顔になり、私を無視した。
ベッドに駆け寄り、マリを診察しはじめた。マリの脈をとり、まぶたを指で開かせて、彼女の瞳孔の様子を確認する。
「・・・・」
秋山医師は沈痛な面持ちで、声にならない渋い声を出した。
そして、マリオの顔を見上げて、ゆっくりと首を横に振った。
マリオは眉ひとつ動かさず、秋山の無言の発言内容を了解した。
「・・・そうか」
しばらく間をおいてマリオはそういい、軽くうなずいた。
「やはり死んだのか」
私は静かに、いった。静かだがその声は、われながら激しい怒気に満ちていた。
また少し間があった。マリオが声を発した。
「探偵さん。あなたの捜していた、ヒロエのひき逃げ犯人の一人は、ヤク中の発作で死んだ。
病院の介抱の甲斐もなく。
残念だね。
しかしこの女はひき逃げの主犯じゃない。
主犯は手塚だ。そっちをつかまえなくてはね」
「・・・そうかね?」
マリの寝顔のような死に顔を見ながら、私は興味なさそうにつぶやいた。
そのそっけない反応を見て、マリオは冷たい表情で私を見た。
私はマリの顔を、まんじりともせずに見つめていた。
マリがしきりに私に話しかけてくる声を聞いていた。
― ジョーを捜して。はやく捜さないと、あたしたちは、みんな、あいつらに、やられちゃうよ ―
そうだ。ジョーなんだ。
ブラック・シーガル・ジョーを捜しださなくては、何も見えはしない。
ヒロエ殺しの犯人も、それにつながる真の敵も。
それは、いまやミミクソの敵というだけではなく、私自身の敵になりつつあった。
「わかったよ!」
私はマリに向かって、いった。
私のその奇怪な様子を、マリオがひときわ冷たい目で見ていた。
秋山医師は、自分の恐ろしい役目を終え、おびえきって、そそくさとその場を去った。
私はしかし、あきもせずに、マリを見つめていた。
・・・そうだ、ブラック・シーガル・ジョー。すべてはそこからだったのだ。
・・・・つづく




