【あとがき】 梟塚妖奇譚 ・ 火車 | ぼくはきっと魔法を使う

ぼくはきっと魔法を使う

半分創作、半分事実。
幼い頃の想い出を基に、簡単な物語を書きます。
ちょっと不思議な、
ありそうで、なさそうな、そんな。

『梟塚妖奇譚・火車』 を書き始めたのは、去年の八月でした。 
父方の祖母と母方の曾祖母を立て続けに失くした、そのすぐ後でした。
人の死に直面したのは久しぶりだったこともあり、ショックの大きい夏でした。 

別の意味でショックだったこと。
それは樋口有介さんの『ぼくと、ぼくらの夏』という青春ミステリー小説に出会ったこと。
会話のテンポが良くて、キャラクターもよく立っていて、とても読みやすくて、感動してしまいました。
ああ、面白いなって思えたのは十数年ぶりくらい、かなり久しぶりでした。
樋口さんの作者の小説家になるまでの経歴もなかなか面白くて、そういうところにも惹かれました。
それまでの長い期間、文章を書くことをやめていた自分に書け書け言っているようでした。

じゃあ何を書こうと思ったとき、

『夏目友人帳』というアニメ を思い出しました。
夏目友人帳は、ざっくり説明すると妖(あやかし)つまりお化けがが見えてしまう少年の話です。
見えないものが見えてしまう少年の苦悩を描くとともに、毎週の話の終わりはどこかハートフルで、観終わった後はいつも鳥肌が立つほど優しい気持ちになりました。

三つの色々な気持ちが
重ね合わさって、それらを含んだ上で、単純ですが、妖怪が登場するハートフルな物語、青春ミステリー、そして人の死を書いてみようと思いました。
最終的にそれがしっかり書けたのかと問われたら、それはハテナですが。


主人公の潮見秋(しおみしゅう)くんは、ほとんどぼくです。
性格こそ違いますが、彼が物語中で語る昔話や想い出はぼくの幼い頃の想い出です。
葛城玲や柚原千昭と戯れる潮見くんを自分と重ね合わせて、妖怪がいる田舎の景色を思い浮かべて、幼い頃の想い出に浸ることが、ぼくには丁度いい現実逃避、リフレッシュになりました。

書き始めたのが去年の夏で、ブログにアップしたのが今年の
5月。
その間も書いたり理由を付けて書かなかったりしたんですが、就職してからやっぱり書かないと、と思いました。
理由は色々ありますが。

総文字数
25,813文字、原稿用紙にするとおよそ80ページ。
今まで書いた物語の中で一番長い物語になりました。
何気に、見てくださる方も少しずつ増えていて、感謝しています。

書いていて面白かったので、しばらく彼らの話を書いてみようと思いました。
次はもっとキャラクターを際立たせて書きたいです。


最後に、物語を書く上で参考にした本を示しておきます。
妖怪・火車について、死体を盗む妖怪ということは知っていたのですが、調べていく内に生前に罪を犯した人の死体を地獄に運ぶ妖怪だったと知り、困りました。
妖怪の伝承も伝わるうちに変わっていったことだし、結局解釈を改めることにしました。
死番虫については、『Q.E.D. 証明終了(2)』という漫画を読まなかったら、もしくは今でも知らなかったと思います。

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『妖怪画談』、水木しげる、岩波新書、
1992
『鳥山石燕 画図百鬼夜行』、稲田篤信 、図書刊行会 1992
『原色図鑑 / 改訂・衛生害虫と衣食住の害虫』、安富和男・梅谷献二、全国農村教育協会、1983
『生活害虫の辞典』、佐藤仁彦、朝倉書店、2003