クラウドファンディングで漫画を描くということは今までとは違う試みだと思うのですが、先生としてはどのようなお気持ちですか?
巻来功士先生(以下、巻来)――とても励みになりますね。お金を出してくれる人の顔が見られる分、凄い面白いものを描いてやろうって気になるし、頑張ろうって思うよ。

ひとりひとりの気持ちを受け取るわけですからね。
巻来――応援してくれた人と一緒にキャラクターを考えたりと、面白い刺激になるね。ここ何年かは編集者から指示を出されたりアドバイスをもらうということもなくなってしまっていたので、新たな試みとして良い機会をもらったと思ってる。 それに僕の作品にお金を出してくれるってそれだけで凄いことだし、燃えるじゃん! 男だったらその期待に応えないとね。

僕もクラウドファンディングに参加させてもらいますので楽しみにしてます!
巻来――ありがとうございます、絶対に面白いものにするから期待してて下さい!

ここからは巻来先生のことについていろいろ聞かせて頂きます。漫画家にはいつ頃からなろうと思っていたのですか?
巻来――小さい頃から漫画家になりたいと思ってたね。 「鉄腕アトム」、「オオカミ少年ケン」、「少年ブック」、「少年」、「少年画報」など身近に沢山あったからね。

先生のご両親の年代なら漫画を嫌う方も多かったと思うんですけど、寛大だったんですね。
巻来――そうそう、うちは本なら漫画でも与えてくれたんですよ。 あと近所に貸本屋があって、1冊10円で貸してくれてね。お店にある本はほとんど読んじゃったんじゃないかな。

特に影響受けた漫画はありますか?
巻来――桑田二郎先生の「エイトマン」や「ジャガーマン」は大好きだったな。絵がシャープで大人っぽいんだ。 桑田先生の漫画の主人公はだいたいスーツを着てて、少年誌でありながら栄養補給をタバコで取るというのがかっこよくて。 いまだったらとんでもないけどね(笑)

絵はいつから描いていたのですか?
巻来――物心つく前から描いてたんだけど、小さい頃は体が弱くて幼稚園の頃に肺炎にかかっちゃってね。 何カ月か自宅療養することになって、その時はずーっと漫画を描いてましたね。

外に出られなくても、部屋でひたすら漫画を描いていられる環境が逆によかったわけですね。
巻来――退屈はしなかったよね(笑) 小学校の低学年のときなんか、あまりにも僕が漫画をたくさん描くから、おじいちゃんが裏の白い広告をたくさん集めてきて、針金で留めてスケッチブックみたいにしてくれたな。 ペンを持ち出したのは小学校の高学年の頃。 でも当時は原稿のサイズとかわからないから、本当はB4に描くんだけどB5に描いてましたね。 はじめて1本の漫画を書き上げたのが小5の時で、当時秋山ジョージ先生が好きで、連載していた「残酷ベイビー」という作品を真似して「ザンコク君」というタイトルで描きました。ギャグ漫画だったけどね。

本格的に漫画家になるためにどうしたんですか?
巻来――あの当時、新人賞の投稿を受け付けていたのが週刊少年ジャンプしかなくてね。 フレッシュジャンプ賞っていうんだけど、それに中学1年の頃から投稿し続けていました。 で、中3の時に猿のマフィアの漫画を描いて投稿したら、最終候補作まで残ったものだから完全に舞い上がっちゃって。 もう道は漫画家しかない!って思ってたんだけど、それからも投稿しては落選、投稿しては落選の毎日で…。 高3の時にやっと、「まんがくん」という雑誌(※現・ヤングサンデー)の石ノ森章太郎賞で佳作をとった時は嬉しかったですね。 賞金も3万円もらったし。

それで軌道に乗って上京したんですか?
巻来――そんな簡単には行かなくて、オヤジに大学ぐらいは出とけよって言われて九州産業大学に行ったんですよ。 家が建設系の仕事をしてたのでインテリア系のほうに進んだんだけど、毎日毎日、設計図みたいなものを描かされるんだよ。自由に絵を描けるわけじゃないから面白くなくて。 だから3年半で中退しちゃった。 本当に親不孝ですよね(笑) それで東京に出てきたんですよ。

漫画家になるために辞めた訳じゃなくて、設計図を描くことが嫌で大学を辞めちゃったんですか?
巻来――そうなんだよ(笑)でも上京するきっかけがあって、小学館の編集さんが九州までスカウトに来てくれたんだ。 最初は週刊少年ジャンプに投稿してたんだけど、途中から週刊少年サンデーも好きで3本もいっぺんに投稿したりしてたから。 小学館の編集さんが向こうから訪ねてきてくれたらいけるって思うじゃん?それで(大学を)辞めたわけよ。 でも上京して小学館に持ち込みに行ったんだけど、今みたいにいつでも持ち込み可というわけじゃなくて、当時は1週間に1回だけだったんだ。で、その日は結局見せられなくて、このまま帰るのも嫌だなーと思ってたら、ちょうど近くに少年画報社があったんだよ。 その勢いで「ジローハリケーン」という作品を少年キングに持ち込んだら「そのまま連載してみない?」って言われてね。 そんなの当然そっちにいくでしょ?

マジですか!まあ、そりゃそうですよね。
巻来――そのあとにサンデーの編集さんから連絡があって、「これこれこうで連載が決まったんですよ」って説明したら怒られちゃって(笑)

「なんで勝手なことするんだ!」ってことですか?
巻来――そうそう、まあ怒られても仕方ないよね。 でも少年キングで1年ちょっと連載してたら(キングが)潰れちゃって。 罰が当たったのかな(笑)

それからはどうしたんですか?
巻来――どうしようかなと思って…漫画アクションも好きな雑誌だったから賞に投稿したんだけど、結果が出るまで日がかかるじゃない? それでなにげなく何年間か買ってなかったジャンプを買って読んだら、平松伸二先生の「ブラックエンジェルズ」が面白くて。 「あっそうだ!集英社だったら雑誌も無くならないだろう。」と思って、週刊少年ジャンプの方に持ち込みに行ったら、見てくれた編集さんが「やってみない?」って言ってくれてね。 それでジャンプでスタートしました。

いろいろ回り道してジャンプに行きついたんですね。
巻来――そうですね、でも回り道したからこそ良かったのかもだけどね。

はじめて出た単行本の感想はどうでしたか?
巻来――めちゃくちゃ嬉しかったよね!少年キングに連載した作品は単行本にならなかったこともあって、週刊少年ジャンプで連載してた「機械戦士ギルファー」の単行本が出たときは嬉しかったね。 印税が入ったらすぐにビデオデッキを買ってレンタルビデオ屋でアダルトビデオを借りた(笑)

屋さんにも様子を見に行きました?
巻来――もちろん行った行った!平積みになってて嬉しかったね~。 でも「機械戦士ギルファー」は、連載が終わってから単行本が発売されたので嬉しさは半分だったね。 僕の場合そんなのばっかりだったので。

ゴッドサイダーは違うんじゃないですか?僕の中では凄い人気があったと思ってました。
巻来――あれもね、単行本が出るまではだいぶ時間がかかったよ。 下手したら出たのは連載の終了が決まったタイミングじゃ無かったかな。 刊行されたら凄い売れてね、でも連載も終了するし、嬉しいけどどうしよう…みたいな感じはあったよ(笑) 連載中に単行本が出て人気を実感できたのは、スーパージャンプの「ミキストリ」のときにやっとだったよね。
話はちょっと変わるんですが、編集さんに言われてショックだったことか腹が立ったこととかありましたか?
巻来――腹が立ったことならあったかな~。 「こんな漫画売れるわけないよ」って(笑) まあ、その通りだったからいいんだけど(笑)

でもそれは腹が立ちますね!!漫画家になって良かったことありますか?
巻来――ん~、良かったことだらけじゃないかな。

たとえばこれっていうのありますか?
巻来――イナズマカフェに絵を描けたことかな(笑) あと東京で家を持てたこと。小さい頃から漫画家になりたくて夢が叶えられたし、こんな楽しいことないよね。

逆に悪かったことはありますか?
巻来――映画監督になれなかったこと(笑) 映画も好きで、映画監督にもなりたかったんだよね。

でも、映画の夢にも少しずつ近づいているんじゃないんですか?
巻来――今ちょっと暇で(笑) 映画の方にも力を入れてるから、そうなったら嬉しいけど、漫画も描いてないと描きたくなるんだよね。 だからさっきも話したけど今回のFUNDIYの話は凄く嬉しいね。

挫折や絶望はありましたか?
巻来――挫折と絶望の繰り返しだね。 でも挫折は一日寝たら希望とかに変わると思うんだ。 本当の絶望は死ぬときじゃないのかな。 病気で死を宣告されたとか。 人生でそれ以上の絶望はないから日常で絶望する必要もないと思うよ。 それまでヘラヘラやってた方がいいんじゃないかな(笑)

先生にとって「漫画」とはなんですか?
巻来――漫画は「生きてる証」かな。 

その答えはかっこいいですね。最後にクラウドファンディングで応援して下さっている方にメッセージお願いします。
巻来――いつも応援していただいてありがとうございます。 今回、クラウドファンディングで「ゴッドサイダー」の続編の話を描くお話を頂いて、これは今まで以上に気合を入れて描かないとな、と感じました。 まずは目標を達成しないと描けないので是非ご協力お願いします。 色んな構想はできておりまして、絶対面白いものにする自信はあるのでよろしくお願いします。

今日はありがとうございました。
巻来――こちらこそありがとうございました。


クラウドファンディングは目標金額を大きく超えてクリアーいたしました。