魔法少女は魔法少女でも「僕と契約」する方ではなくて、「まじかる~」と言いながら人を惨殺する魔法少女を描く「魔法少女・オブ・ジ・エンド」を代表作に、3月15日に新宿アニメイトでサイン会。4月13日には阿佐ヶ谷ロフトにてトークライブに出演し大成功をおさめた佐藤先生に赤鮫が噛みつきます!!
先生は大阪出身でちょっと関西弁などが出るところはわざと直さずに書いていますのでご了承ください!
それでは佐藤健太郎先生のインタビュースタートです!
「 ま・ じ・ か ・ る~ ~ 」

いきなりなんですが「魔法少女・オブ・ジ・エンド」のことを聞かせて欲しいんですが、あの奇抜なアイデアはどこから出てきたんでしょうか?
佐藤健太郎先生(以下 佐藤)――ことの発端は「キョンシー」のマンガを描いていまして、大量のキョンシーが「ニーハオ、ニーハオ」と、言いながら海を泳いでやってきて、日本人を殺しまくるって話やったんですけど、「いまさらキョンシーでもないよな~」というのもあって。キョンシーを「魔法少女」で考えてみた時に「キョンシー」が「ニーハオ」なら「魔法少女」は「まじかる」なのかなと思いついて、そこがきっかけで最初から魔法少女を描く予定ではなくて、キョンシーからの転換であったんです。

あの魔法少女のビジュアルのアイデアはどこからですか?
佐藤――最初はフランス人形みたいなイメージでいろいろ考えていたんですけど、まあムキムキな魔法少女がいても面白いかなと幅広くバリエーションを生み出したりしてます。
魔法少女の読者の方に募集もありましたよね。
佐藤――みんないろんな魔法少女を送ってくれました、中には「これはアカンやろ、ぜったい使われへん!」って感じの下ネタ全開のもあったり(笑)
でも全部ありがたかったです。

4巻の表紙を外したところに描いてるのは送ってきてくれたイラストを落書き風に先生が書き直したんですか?
佐藤――はい、応募してくれた魔法少女全部ですね。あれを描くのに2回太陽が沈みました(笑)せっかく送ってくれたので、これをこのままにするのは申し訳ないなと思ってちょっとしたサービスとしてちっちゃくですけど、載せさせてもらいました。

あれは絶対に気付いてない人もいますよね(4巻お持ちの方はカバーを外して見てください)
佐藤――あんまりカバー外して中見たりしませんもんね。 あっ、作中では今後も応募して頂いた魔法少女を出す予定ですので楽しみにしてください。


ツイッタ―などで募集も面白いかもですね。
佐藤――そうですね、いまもいろいろ考えているんですけど、また魔法少女募集やってくれないかとよく言われるので、ちょっとまた別の形とかでやりたいなと思っているんです。

魔法少女で描くのが大変な子はいますか?
佐藤――意外と双子の魔法少女が、簡単そうに見えてバランスとるのが大変で、目の位置とか。

ハートの髪飾りのとか二人とも反対だったりですもんね。
佐藤――そうそう、いつもあれ間違うんですよね、大阪のサイン会で読者の方のリクエストで描いた時も「これであってます?」って聞きながら描いていました(笑)


先生ご自身が一番好きなキャラと魔法少女はどれですか?
佐藤――キャラで言うと読者人気のいちばん高い「芥(あくた)」ですね、魔法少女は4巻の表紙の子です。

あの子はインパクトありますよね。
佐藤――あの子もまあまあ描きづらいんですよ、パーツが多いので(笑)

着てる服とかもゴスロリでフリフリだから描くのも大変じゃないですか?
佐藤――慣れましたけど、かなり大変です。フリフリなんて描きたくなかったんですけど、仕方なく・・・、ゴスロリの衣裳の資料とかも買いに行きました。

僕は絵を描くのは苦手ですが見るからにたいへんそうですもんね…。ところで先生は絵はいつから描いていたんですか?
佐藤――物心つく前から描いていたみたいですね。

そんな小さい頃からですか!
佐藤――親が言うにはいつの間にか描いたらしくて、はじめは車が大好きで車の絵ばかりで、次はゴジラが大好きでゴジラばっかり描いて、最後はキン肉マンやドラゴンボールの絵を描いていました。

やっぱりキン肉マンやドラゴンボールには影響受けましたか?
佐藤――めっちゃ受けましたね・・・、でも今の作品にそれが出ているかというと全くですけど(笑)


中学高校時代はどうでしたか?
佐藤――漫画は描いてなかったですね、落書きばっかり描いていました、教科書とかノートに。

それで漫画家になろうと思ったのはいつぐらいですか?
佐藤――真剣になろうと思ったのは大学2年のころで、そのころから投稿したり、持ち込みしたり、大学の在学中に賞を取って読み切りで掲載デビューしました。

おおっ、凄いですね、じゃあ大学卒業してすぐ東京に出てきたんですか?
佐藤――いえいえ、卒業してから大阪である会社からスカウトされて似顔絵の仕事を1年していまして、それからアシスタントするために東京に出てきました。その後、何度か読み切り描いたあとに連載「魔法少女・オブ・ジ・エンド」がスタートしましたね。



漫画家になった時に両親の反応はどうでしたか?
佐藤――特になんにも言われなかったですね・・・。 あっ!そう言えば中華料理をお祝いにご馳走してもらいました(笑)

ご両親もなると思ってくれてたんですかね。漫画家になってから悪かったことってありますか?
佐藤――やっぱり座り仕事なんで、体調を崩しやすいですね。長時間、体を動かさずに作画したりネーム描いたりしているから体力がどんどん落ちて行くんですよ。それで最近はスポーツジムに通って肉体改造して体作っているんですけど、やっぱり全然違いますね、作画するにしても体の軽さも全然違うし、嫌でも時間作ってジムに行くのは自分のためにも、今後のためにも良い結果になると思います。

良かったことはなんですか?
佐藤――いままで疎遠だった高校の友達に「マンガ買ったで!」といってもらい、また連絡取れたりできたのが良かったですね。

高校のときの友人も漫画家目指しているって知っていたんですね。
佐藤――知っていましたね、クラスの友人達を戦わせる漫画とか描いていたんですよ、スーパーサイヤ人にしたりして(笑)嫌いな先生をブッ飛ばしたりする漫画描いてはそれをクラスで回したりしていました。

はじめての単行本は「魔法少女・オブ・ジ・エンド」ですよね? 本屋に並んだときはどうでしたか?
佐藤――そうです、めっちゃ嬉しかったですよ! でも凄く不思議な感覚なんですよね、自分の作品が本屋に置かれているというのが。

発売日は本屋に行きましたか?
佐藤――行きました。前日の早売りしているお店に午前4時から見に行って、「置いてる置いてる」って(笑)次の日も見に行きましたしね。探偵みたいに張って見ていたんですよ、そしたら何人か買ってくれている方がいて。 「あ~、嬉しいな!」と思いつつニヤニヤしながら家に帰りました(笑)

声はかけなかったんでか?「これ俺が描いたんだよ」って。
佐藤――さすがに声はかけなかったです、「お前誰やねん」ってなるでしょ(笑)

『魔法少女・オブ・ジ・エンド』で一番苦労したコマとかありますか?
佐藤――4話目なんですけど、吉祥寺の街のビルの上に魔法少女がいて人をいっぱい束ねてるシーンはあって。

あっ、空中に人が丸まってるところですね。
佐藤――そうそう、あれ全部コピーとかじゃなくてひとりひとりちゃんと描いてるんです。 途中で嫌になって気分転換に何回コンビニ行ったか(笑)
けっこうモブ(ザコキャラ)って描くの困るんですよ、やっぱりひとりひとり顔も違うじゃないですか、それで困った時は作中内で友人とか殺したりして(笑)

友人をモデルに(笑)
佐藤――たまに俺を私を殺してくれっていう人がいるので(笑)

僕も殺してください。
佐藤――ぜひ殺します(笑)

そういうのってなんとなくで描いたりするイメージがあるんですが、佐藤先生はちゃんとひとりひとり描いてるんですね。
佐藤――手抜きするとバレますからね。

それは似顔絵やっていた時の技術が生きてるんですか?
佐藤――それもあると思うん
ですけど、顔を描くのが好きなんです、顔の描き分けとか特に。

前に僕も似顔絵を描いていただいた時にめっちゃ似ててビックリしたんです。
佐藤――完全に眼はイっちゃってましたけど(笑)

人の顔描くのが得意なのは似顔絵の仕事をしていたからですか?
佐藤――似顔絵は昔から好きだったんですよ、小学校のときから先生とか友達とか人の顔を描くのが好きだったんです、ちょっと悪意を足せばウケるんですよ。


気に入っているシーンはありますか?
佐藤――2巻のはじめに芥(あくた)が出てくるんですけど、そんなに狙って描いたシーンというわけじゃなかったんですが、読んでくれた読者の方がインパクトあるとか、あのキャラ好きになったとかそういう声をいただくようになって、芥の初登場のあのシーンは好きになりましたね。

あのチ○コ丸出しで踊ってる(笑)
佐藤――そうそう(笑)
このキャラは女性読者にも完全に嫌われていいかなと描いてたんですけど、女子の支持のほうが圧倒的に多くなってきて・・・、ちょっといろんな意味で「漫画って深いな~」と思いました。

最初の思惑と違う形で進みました?
佐藤――う~ん、もともとすぐに殺すつもりはありませんでした。仲間内をひっかきまわすキャラクターって、パニックサバイバルホラーには必要なので・・・。

5巻では主役みたいな立場ですもんね。
佐藤――これからも注目して読んでみてください、ちょっと意外な展開になっていきますので。

ストーリーが思い浮かばないときはどうしているんですか?
佐藤――とりあえず体を動かしますね、最近やっているのが、ネタが思いつくまでランニングをやめないというのを。

え~!! だんだん疲れてこないですか?
佐藤――極限までいくと嫌でも絞り出すので(笑)

早く出さないと永遠に終わらないみたいな?
佐藤――精神的にも体力的にも追い込まれて(笑) けっこうこれは実用的なので、皆さんにもオススメします(笑)

いやいやいや、非実用的だと思います(笑) 話は変わりますが、いままで編集さんに言われてショックだった一言ってありますか?
佐藤――めっちゃ女の子描くのが苦手で、担当さんに「お前の描く女は気持ち悪いな~」みたいなこと言われて、「あ~~~~~、そうだよな~」って・・・、それからなるべく可愛く描くように心がけています。

今のキャラみんな可愛くていいと思うんですけど。
佐藤――マジですか、ありがとうございます。

嬉しかったことはありますか?
佐藤――ネーム見せてその時点で面白いと言われたら嬉しいですね。

いままでに絶望したことはありますか?
佐藤――描いてる上でですか?

人生とかで。
佐藤――人生レベルですか(笑)う~ん~~~~~、人生・・・、絶望・・・、そこまでじゃないかもですが、デビューしてすぐくらいに、担当とうまくいかず、ネームも通らず、掲載もできず、これからどうしようかと悩んでるときに、自分がどうしていいかわからなくなってきてて、ネームを友人やアシスタント仲間に見せてウケはいいのに担当には評価されない、そのうち答えが見つからないところをさまよって・・・、めっちゃ沈んでいましたね。そこを通らないと掲載にもいかないですし、その時はかなり悩みましたね。このネーム通らなかったら別の出版社に行こうと決めて、その持っていたネームも通らなくて、結局は別の出版社に行ったんです。外の空気も吸ってみようと・・・。そこが人生の絶望期でもあり転機だったのかもです。 とりあえずやれることは全部やろうと。


作画風景をネットで生中継するのはなぜ始めたんですか?
佐藤――楽しんでもらえるかな~と、もし漫画家を目指したりする方にもちょっとはためになるかな~と。僕のでよければこういう書き方やペンの使い方も少しでもためになればなと。あと、読者の方と少しでもコミュニケーション取れればなと、漫画家って読者からしたら得体のしれない感じだし、こういう人なんだとわかってもらえたら読者との距離も縮まるかなと思って。作品が作品なので、けっこう変なやつだと思われてるんですよね、いつも包丁持って「ぐへ~っ」とか言ってそうな、「いやいやいやそうじゃないよ」というのを出したかったのも一つです(笑)

でも作画の進行状況でネタバレするような時はできないですよね。
佐藤――そうなんですよ、そういうときは集中線だけとか背景だけとか、でもたまにキャラの顔だけ描いて髪型は描かなかったりするんですけど、つい髪飾りを描いてしまったり、気が付いて原稿をバッ!って隠したことが何度もあります(笑)

漫画家になりたい方にアドバイスなどありましたら。
佐藤――腐らずにやり続けていたら結果は残せるので、がんばって描き続ければ夢は叶うと思います。どの仕事にも言えると思うんですけど、全力で好きなことをやり続けるといつの間にか仕事になっているというか。

続けるのはいちばん難しいですよね。
佐藤――好きなことで評価されないってなると、自分にはそれしかないからそこで評価されなかったら自分の存在意義ってのがなくなるじゃないですか、そこで結構へこんだりするんですけど、そういうのも人生の壁だと思って「こういうときもある、こういう日もある」と思って、それでも描き続けてたら誰かしらに評価されるので、いつかは世に出る作品を出せると思います。

今日はインタビューありがとうございました。
佐藤――こちらこそいろいろ聞いていただきありがとうございました。