~ 04 ~

 

「「「「 ・・・・・・・・・・ 」」」」
 
4人の表情は様々だったが、揃って返す言葉が出なかったのは同じだった。
カオルは驚きで目を見開き、静香はどうして?と首を傾げ、烈花は何故か眉間を寄せ、優斗は信じられないという様子だ。
「5日前にシグマさんが試作中の魔道具を持ち帰られたのですが誤作動で、ミオさんが大切にされている庭を消滅させてしまったんです。しかもこれが初めてのことではなかったらしく、ミオさんはとても怒られてシグマさんに反省を求められたのですが・・・」
「シグマさんは謝らなかったのね」
「そうなんです。庭はシグマさんが直ぐに術で元通りにされたみたいなのですが、ミオさんは納得がいかなかったらしくてそれからもシグマさんに、試作中の魔道具は絶対に持ち帰らないで、と頻りに言われていたのですが・・・」
「それもシグマは無視したんだな」
「はい。シグマさんは何かに夢中になられると、その・・周りの声が聞こえてないらしくて、またそのまま実験室に籠られてしまって」
「気付いたらミオちゃんがいなかった」
朝陽の言うことに、静香、烈花、カオルが相槌を入れる。
「シグマさんがああいう方ですから、ミオさんはいつも漣山の皆の様子を気に掛けられて、時間があれば皆の様子を見て回られていたのですが、3日前から姿が見えなくなって、心配した者達が探したらどうやら地底湖の洞窟に入れたまま出て来られていないことが分かったんです」
「それで洞窟に入ろうとしたら入れなかった、と言うことですか」
「ナイトメア達も、亜紗璃様の許しがあるまで扉は開かれぬ、の一点張りで、その肝心のアティーシャさんも遼生さんと指令に出掛けられたままで、もう俺達どうしたらいいのか分からなくて、そうしたらシグマさんが白火の力ならなんとかなるかもしれん、と言われて黄金の翼と白銀の羽を呼びに行かれたんです」
 
「「「「 ・・・・・・・・・・ 」」」」
 
カオル、静香、烈花、優斗の4人は顔を見合わせ、はぁ、と息を吐き出した。
シグマがどうしてあんな無茶苦茶な事を言い出したか、その理由が分かったからだ。
「最初からカオルと静香を連れて来るのが目的だったのか」
そう呟きながら烈花は、レオを巻き込んだのは恐らくあの事態にならくなくても何かと理由を付けて鋼牙の足止めをさせるつもりだったのだろうと。
「素直に言ってくれればよかったのに」
 
「ふっ、アイツにそれは無理だな」
 
カオルの言葉に少し離れた所から声が返って来た。
全員が一斉にその声がした方に向くと、そこにはアティーシャを抱きかかえた遼生がこちらに向かって歩いて来ていた。
「遼生さん!アティーシャさんも!指令終わったんですね!」
朝陽はアティーシャが来てくれたことで、これでやっと洞窟の扉が開かれると思ったのだろう、嬉しそうな声を上げた。
 
『先に言っておくけど、私は扉を開かないわよ』
 
しかし、そんな朝陽に対してアティーシャはきっぱり言い放った。
「えっ・・」
『ミオがいいって言うまで開かない。それがミオとの"約束"だから』
遼生の腕に抱かれているアティーシャは、日の光から目を守る為に紅い目隠しのリボンをしている。
その深紅のリボンは頭の後ろで大きなリボン結びで止められている為に、いつもより余計に幼く見えた。
 
「アティーシャは、ミオちゃんがどうしてこんなことをしているのか知ってるのね」
 
カオルがそんなアティーシャの核心を突くと、
『カオル、何であたながここに居るのよ』
と逆に問い返されてしまった。
「私だけじゃないわよ」
「こんにちはアティーシャ。遼生さんもお久しぶりです」
「お前はミオに懐いていたんだったな」
「ご無沙汰しております。今回、自分達はシグマさんに連れられて来ました」
カオルに続いて静香、烈花、優斗が2人に向けて声を出した。
 
日の光に弱いナイトメアであるアティーシャは、日中ほぼ力が使えない為に目が見ないのはもちろん、感知能力すら日の光の中では使えない状態なのだ。
漣山の結界が日の光を弱めてはいるが、それでも人型を維持出来るくらいだった。
 
『静香に烈花、それに牙射も居るのね。ふ~ん、てことはいくら布道シグマでも父様と私が作った結界は壊せなかったようね』
アティーシャは遼生に凭れながら、嬉しそうに紅い唇を吊り上げる。
「でもアティーシャ、ミオさんは大丈夫なの?もう3日も洞窟の中なんでしょ?」
心配そうに問う静香にもアティーシャは平然と答えた。
『心配いらないわ。あの洞窟の中には父様が作った部屋があるのよ。それに食事はナイトメア達に3食きちんと運ばせているわ』
それに対して静香達は少しだけ安堵したが、遼生は少し困った様な顔をした。
 
アティーシャのミオ贔屓は知っていたが実際こうなると、最早遼生が何を言うともアティーシャはガンとしてミオ側なのだった。
遼生の頼みに答えてくれないことなど、そうあることではない。
しかし、遼生もシグマとミオと言われればミオ側だったので、そう強くは言っていないのも事実だった。
 
「と、とにかく、入り口まで来て下さい!」
益々頭の痛い状態になりそうだったので、朝陽はとにかくこの面子を洞窟の前まで連れて行くことにしたようだ。
そしてぞろぞろとアティーシャを含めた7人が、洞窟の入り口に辿り着くとそこには大勢の漣山の者達が心配そうな顔でミオのが出て来るのを待っていた。
「シグマさん!遼生さんとアティーシャさんが戻られました」
数人の法師達と何か話し込んでいたシグマに朝陽が声を掛けると、その場に居たほぼ全員が一斉に振り返った。
「亜紗璃様お待ちしておりました!」
「おお!黄金の翼と白銀の羽のお2人もご一緒だぞ!」
「烈花さんも優斗さんも、よく来て下さいました!」
漣山の法師達から朝陽と同じような嬉しそうな声が掛けられる。
そんな中で朝陽共にここに来た3人の若者達は、驚きの表情を浮かべていた。
 
カオルと静香は洞窟を守っている白火のこともあり、何度かここ漣山に訪れており、優斗もカオルに付いて2度程すでに来たことがあったのだ。
烈花もデスメタルの研究で頻繁に漣山を訪れているレオと共に、数回来ていたのである。
しかし漣山に来て一月程の朝陽達は、まだ出会ったことが無かったのだ。
 
朝陽は直ぐにシグマの側に駆け寄り、さっきアティーシャから言われたことを伝える。
するとシグマは鋭い視線をアティーシャに向け、
「ならば白火で結界を焼き払ってもいいのだな」
と言い放つ。
だがアティーシャは更にそんなシグマに言い返した。
『カオルも静香もそんなことしないわよ』
当然でしょ、というアティーシャの態度にシグマが2人に視線を移すが、
「中に居るミオちゃんに何かあっても困るし」
「ミオさんがどうしてこんな事をしているのか理由も分からないから、今は無理に開かない方がいいと思う」
と2人もアティーシャと同意見であることを口にする。
「ならばアティーシャ、貴様がその理由を言え」
『嫌に決まってるでしょ!』
何で私が言わなくちゃいけないのよ、と怒り出したアティーシャに遼生がその理由を聞く。
「アーシャ、どうして言えない?」
『だってリョウ、布道シグマは知っているからよ。ミオは布道シグマに話したって言ってたんだから』
今度は皆の視線がシグマに向かう。
だがシグマは苦り切った表情をするだけで、珍しく何も言わなかった。
『どうせ聞いてなかったんでしょ!』
そこを更にアティーシャが揚げ足を取るが、こんなことをしている場合ではないと思った静香がこれまた不可解なことを言い出した。
 
「とにかく今はミオさんの行動の理由を探ることが先決だと思うの。そこで、緊急の"女子会"を開くって言うのはどうかしら?」