何も知らないくせに。
君は何かあると、すぐにそう言うけれど。
そうだね。
僕は君のこと、何も知らない。
知りたいとも思わない。
君の身体の痛みや苦しみは、君にしかわからないから。
でもね。
心の痛みや苦しみは、なんとなく感じる。
それは僕も苦しんでいるから。
僕の身体の痛みや苦しみ、君にわかるかい。
わかりっこないだろう。
そんなこと、あたり前田のクラッカーなんだよ。
だから、みんな支え合って生きている。
僕はこの病気になるまで「不治の病」がこんなにもあったなんて知らなかった。
本当にAIDSくらいしかないと思ってた。
僕の場合は単なる無知だけれど。
多くの人は病気で苦しんでいる人の痛みや苦しみなんてわかるわけない。
ただ、理解し、支えようとする人も大勢いる。
僕の痛みや苦しみが、少しでも和らぐようにとエールを送ってくださる方々。
その人たちの恩を仇で返すような事はしたくないと僕は思ってる。
病気と向き合って、闘うのは自分自身なのだからね。
誰かに背中を掻いてもらう。
「違うだろっ!そこじゃねえよっ!馬鹿がっ!」なんていう人、意外と多いよね。
入院中の病室にいたよ。
末期のガン患者だった。
それでも周りの患者さんは、手を差し伸べた。
気持ちがわかるからなんじゃないかな。
気づいたら、周りに誰もいなくなってたなんてことにならなければいいけどね。
半世紀近くも生きてきて、しかも人の心の機微に触れる仕事をして…。
まだ気づかないのかな。
人は皆、エンパスばかりじゃないんだよ。
甘えは僕にだってある。
誰かに優しく声をかけて貰いたいことだってあるよ。
辛くて泣くことだってあるし。
でもね、自分を理解しようとしてくれる人に、「何も知らないくせに」だなんて、口が裂けても言っちゃだめだよ。
同じ男として思うよ。
ってかさ、男以前に人としてどうなのかな。
僕は君のこと何も知らないよ。
でもさ、一緒に手を取り合って一歩でも前に進もうよ。
本当に苦しんでる人は「死ぬ死ぬ」なんて言わないものだよ。
僕は前に進むよ。
だって、たくさんの方々に支えてもらったんだ。
恩返しをしなくっちゃ。
それにはまず、僕が元気になって幸せになること。
だからクヨクヨしている時間がもったいないんだ。
そう。
時間がないんだよ。
僕は先に行って待ってるからね。
必ずおいでよ。
では。