報文紹介「昆虫が光に集まる様々なメカニズム」

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 今回の報文に出会ったのは、1年以上前のこと。

 冬の時期だったので、クワガタ灯火/灯下採集が始まる頃までにはこれをまとめるつもりであった。

 それから夏が過ぎ、また冬がやってきた。

 言語は日本語だし、難解な表現もほとんどない。にも関わらず、これほどまでに期間が掛かってしまった。

 そのためここ最近は、時間の使い方の考えを変え、クワガタへの勉強を再開することにし、そのお陰でここに今回のものを一応、まとめることができた。

 それが以下の報文である。

   題名:昆虫が光に集まる多様なメカニズム
   著者:弘中 満太郎,針山 孝彦
   雑誌:日本応用動物昆虫学会誌,第58巻,第2号,p.93-108
   年代:2014年

 ここでのテーマは、光に集まる性質-走光性についての総説的なものである。

 昆虫などが光に集まる性質については、皆さんも体感していることとは思われるが、意外なことにそのメカニズムについてはまだ解明されていないようだ。

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 また、走光性と言っても、広い意味があれば、狭い意味もある。

 さらには、光に近づく場合には”正”であり、遠ざかる場合には”負”となる。

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 そこで、昆虫の走光性現象に関する特徴が書かれていたのでまとめてみた。

 そうすると、ここからはいろいろな特徴が見て取れる。

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 また、走光性を誘発するには、以下のように様々な要因挙げられている。

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 と、ここまでは文字だらけであったため、ここからは図が加わる。

 下図のように、電灯を例にして虫が光源に向かっていくパターンを例示し、それらについてこれから”a”から”e”へと順に説明していく。


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 まずは、パターンaについて。

 これは、光源に向かってまっしぐらに向かっていくパターン。

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 このパターンは、一般的には当たり前のように思えるかも知れないが、実は色んな問題があり、このパターンで昆虫が活動しているかと言えば、いろいろと矛盾が生じているそうだ。

 また、ここで”コンパス理論”の表現があるが、これはパターンbで説明する。

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 これが、上の説明にも紛れ込んでいたコンパス理論であるパターンb

 これは図のとおり、光に対して一定の角度で飛ぼうとしていると、徐々に光源に近づいていくもの。


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 この理論は、次のように考えられているが、そこにも矛盾点がある。

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 次がパターンcのマッハバンド理論

 注目すべき点は、光源のすぐ横に向かっていること。

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 この理論は以下にまとめた。

 要するに明るいところの周りは、暗く見えるので、その暗いと感じたところに向かっているとの理論。

 しかし、この理論にも問題点がある。

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 次がパターンd

 この特徴は実は、光に集まっているのではなく、強い光を受けて行動が阻害され、見かけ上、光に集まってみえるもの。

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 その説明を以下に示した。

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 最後はパターンe

 このパターンは、走光性とは無関係な行動パターンであり、光に集まる虫の匂い集まる習性。

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 上図では暗闇に居る餌に向かって虫が移動する例であるが、灯下では飛んできている虫を目当てに鳥が飛びまわっているのも見たことがあるのではなかろうか。

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 こう言ったように、間接的な理由で結果的に光に集まっている昆虫たちがいたり、光に集まっていたとしても、様々なメカニズムの説があり、その真実については未だに解明されていない点については面白い。