昆虫が集まる光の波長と白色LEDの波長との関係

 以前のブログでは、「光の波長と昆虫の視覚との関係」(http://blogs.yahoo.co.jp/kotaro168/170625.html)で、昆虫が集まる光の波長や、光源である水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプの光の波長と強度の関係などをまとめていた。
 
 しかしその情報には、表題の白色LEDライトについての情報がなかった。
 
 体験していることとして、高輝度白色LEDのランタンを雑木林で照らすと、ノコギリクワガタやカブトムシが飛んでくることもあったため、この白色LEDライトに話の焦点を当てることにした。
 
 なお、白色LEDの光の仕組みの主流は、青色LEDの光を黄色に発色させる蛍光体を通して、(青色+黄色=)白色にしているようだ(他の仕組みは脚注に記載)。
 
 だとすれば、元を辿れば青色系統の光が出ているため、昆虫誘引には有利な可能性があった。
 
 そういった背景から、白色LEDライトの波長特性を調べることにした。
 (過去には、こんな測定も実施:アカモビ分析センターによる赤色LEDライト評価
 
 用いたライトは、Ultrafire製 WF-302Bの筒に、白色LEDバルブとして、米国CREE社のXM-L U2を搭載したものを用いた。
 
 このLEDバルブは、最大1300ルーメンの光を発するそうであるが、このライトのパッケージではそこまでの性能は引き出せておらず、恐らく200~300ルーメンの間くらいの性能のライトであろう。
 
 では、その高輝度白色LEDライトの光の波長特性を調べた結果を掲載する。
 
イメージ 1
 
 横軸が光の波長で、縦軸が分光放射照度である。

 この縦軸のパラメータの意味は正確には分かっていないものの、単位を見る限りにおいては、各波長における単位面積あたりのエネルギーと理解できる。
 
 この結果、光としては波長450nmのところにエネルギーの大きなピークがある。
 
 なおこれは、上述の過去記事を踏まえると、紫色~青色の光である。
 
イメージ 2
(過去記事より転記)
 
 そして、波長500~800nmにかけて、なだらかな山ができている。
 
 これらの結果は、前述の白色LEDの仕組みにしたがい、青色光が蛍光体を通ることによって、青色光の一部が、主に長波長側へと変化したことが裏づけられる。
 
 また、この結果で注目する点は、波長400nm以下の光がほとんど出ていないことである。
 
 以前に紹介した記事では、波長380±20nmのところが、最も効率的に虫を呼び寄せる波長(走光性のある波長)であるが、白色LEDはこの波長帯の割合は少ない。
 
イメージ 3
 (過去記事より転記)
 
 そのため、注目する波長帯として350~450nmに広げて評価してみた。
 
 この測定装置は、波長帯を指定すると、そのエネルギーの積算値が計算できるようになっている。
 
 その結果、光全体(200~800nm)の分光放射照度の積分値は、48433であるのに対し、注目した350~450nm波長帯の積分値は、7017.1であった。
 
 そのため、緩めの基準の波長帯で評価すると、全体の14.5%が効果の期待できる光のエネルギー分と計算される。
 
 また、この測定と同時にお遊びとして、LEDライトのレンズカバーを外して、同様の測定も行っていた。
 
 その理由は、ガラスは290nm以下の光(紫外線)をカットする特性があるからだ。
 
 しかし、もともとその波長帯の光を発していなかったため、レンズカバーを外した測定結果は意味を為さなかった。
 
 昆虫の視力曲線の図では380nmあたりの光の波長が虫を呼び寄せるようなので、その波長に相当する光である紫色が実はいいのだろうか? それとも、一般に言われている紫外線がいいのだろうか?
 
 紫色もしくは紫外線に対応するLED素子は実用化・市販されているようなので、これらのようなLEDを用いたライトトラップを作成されるチャレンジャーの登場を待ちたいと思う。
 
(追記:2013.6.21)
脚注:白色LEDライトの代表的な3種の仕組み
1.青色LEDと黄色の蛍光体との組み合わせ
   3種の方式の中で比較的効率が高く、一般的な照明用途はこの仕組みが採用
 
2.赤色LED、緑色LED、青色LEDの3色の混合
   照明によって照らされた物の見え方が不自然になったりすることより、照明よりは映像装置で採用
 
3.紫外LEDもしくは紫色LEDと、赤、緑、青の3色の蛍光体との組み合わせ
   発光効率が比較的に低いなどの課題あり