報文紹介「インスリン関連シグナル伝達とカブトムシの角伸長との関係」

 今回の題材は、Yahooブロガー兼BEKUWA記事の執筆者のハルさんが既にそのブログ(2012年11月16日)で詳細に報告されている話であり、図などが詳細に掲載されているので、ここでは図は大幅に手抜きさせて頂く。
 
 インスリン(Insulin)やインスリン様成長因子(IGF)は、様々な生物で共通した作用があり、組織の成長や体サイズなどに密接に関係している。
 
 そのため、ブリーダーにとっては考慮に入れるべき因子ではなかろうか。
 
 またこのInsulin/IGFのテーマは様々な生物種で精力的に研究が為されている。
 
そして、今回のものは日本産カブトムシの角の伸長とInsulin/IGFシグナル伝達経路による作用について紹介させて頂く。
 
 なお、昆虫界で研究が進んでいるものとしては、(残念ながらクワ/カブではなく)カイコ、ショウジョウバエ、コクヌストモドキなどがある。
 
 したがって、Insulin/IGFの話題については、より研究が進んでいる別の昆虫の話題を別途、紹介しようかと思っている。
 
 それでは、Insulin/IGFシリーズの第一回目。
 
 紹介するのは下記のものであり、科学雑誌としては最高峰クラスの一つであるScience掲載のもの。
 
   Title : A Mechanism of Extreme Growth and Reliable Signaling in Sexually Selected Ornaments and Weapons.
   Authors : Emlen DJ., Warren IA., Johns A., Dworkin I., and Lavine LC.
   Journal : Science, Vol. 337, pp.860-864
   Year : 2012
 
 なお、この研究グループは、日本産カブトムシをメインに研究しているのではなく、コガネムシの角についてむしろ精力的に研究されている。
 
 この報文での主役の因子は、InR(insulin receptor)というインスリンの受容体である。
 
 そこで基礎知識として、InRがどういうものかを簡単に説明する。
 
 InRは、細胞膜に存在し、ホルモン物質であるInsulin(インスリン)やIGF(インスリン様成長因子)と結合し、その信号を末梢組織に伝達している。
 
 赤いところのものが、今回の主役であり、InsulinやIGFは黄色である。
 
イメージ 1
 
 
 この伝達作用は、昆虫などの非脊椎動物だけではなく、ヒトなどの脊椎動物にも存在している。
 
 なお、InRに結合するInsulinやIGFのホルモン物質は、個体の栄養状態が良いほど、濃度が高くなる傾向にある。
 
イメージ 2
 
 そこで、ここでは日本産のカブトムシ(♂)を題材にして、交尾器、翅、角のサイズを着目し、分子生物学的手法を用いてInRの濃度を減少させて、その影響を確認した。
 
 その手法として、RNA干渉の技術を用い、幼虫から蛹へと変態する直前を見計らって、InRの二本鎖RNAを幼虫に注入し、(InRのRNAを減少させることにより、その翻訳産物・タンパクである)InRを減少させた。
 
 なお、通常の個体では、この前蛹になる初期の段階で、特異的にInRの濃度が高く、48時間後には低いレベルに落ちつく。
 
 そこで、RNA干渉によるInR濃度減少・抑制効果が羽化成虫にどのような影響を与えるのかを観察した。
 
 その結果、交尾器、翅、角のサイズを比較対照(通常のもの)と比較すると、交尾器は有意な減少は認められず、翅サイズは明らかに減少し、さらに角サイズは最も減少した(翅よりも8倍の効果)。
 
 交尾器がInR減少の影響を受けない理由としては、繁殖に直接関係する器官は、栄養状態に左右されるインスリン関連ホルモンに影響を受けにくいような仕組みになっていると考えられた。
 
 ここで、まとめに入る。 
 
 この研究での大きなポイントとしては、InR濃度減少が、角などの器官成長に影響を与え、サイズが減少しているため、InRは角などの器官成長に重要な役割を果たしていると考えられる。
 
 
したがって、InRが増加するような環境が構築できれば、角などはさらに伸びる可能性があると思われる。
 
 また、角などのサイズに敏感に影響を受ける時期として、前蛹初期のたった48時間の間であることも今回の実験から分かった。
 
 この知見を踏まえると、この時期のInRが高濃度に維持できれば(48時間超)、さらに効果的かも知れない。
 
 さらに、受容体としてInRのみを着目するのではなく、結合物であるInsulin/IGF を、本来よりも高濃度にする手もあるかも知れない。
 
 
これで、第一回目のインスリン関連の話は終わりである。
 
 -----------------------------
(ブログ引退の月(3月)となりました。もうしばし、お付き合い下さいますようお願い致します)
-----------------------------
 
本日のマンホールは、下記のもの
 
 ・東京都小平市
 ・神奈川県横浜市
 ・埼玉県所沢市
    
 これは、ベルクカッツェさんから、ご提供頂いた。
 
 画像のご提供は非常にありがたいことである。
 
【小平市】
イメージ 13
魚が泳いでいるデザイン
 
イメージ 14
上のカラー版
 
イメージ 15
ケヤキ(市の木)とツツジ(市の花)は中央にあり、回りの動物は十二支
 
イメージ 16
 
イメージ 17
 
【横浜市】
イメージ 5
横浜ベイブリッジ
 
イメージ 6
中心にカバ
 
イメージ 7
中心に噴水
 
イメージ 8
市章プラスα?
 
イメージ 9
市章入り
 
イメージ 10
 
イメージ 11
 
イメージ 12
 
【所沢市】
イメージ 18
 
イメージ 19
 
イメージ 3
 
イメージ 20
 
イメージ 4
 
これらのマンホールも、マンホールギャラリーのブログ(下記リンク)に追加させて頂きます。
 
 (2/15までに頂いた画像については、何とか紹介できるように頑張ります。)