報文紹介「森の危険な生物シリーズその3:毒蛇類」

 雑誌「森林科学」に掲載されていた森の危険な生物たちのシリーズの中から過去に、スズメバチ類、マダニ類を紹介しており、これで第三弾となる。
 
 今回は、このシリーズの中から、下記の毒蛇類を紹介することにする。
 
 なお、毒蛇はスズメバチに次ぐ死傷者が多いようだが、これは被災を受けた後に、速やかに医療機関で処置されているから、死傷者が少ないと認識した方がよいと思われる。
 
   題名:森の危険な生物たち5-毒蛇類―マムシ・ハブなど―
   著者:戸田光彦
   雑誌:森林科学、49(2)、pp.43-46
   年代:2007年
 
 
 まずは、毒蛇類の種類について、日本の陸生種には次の3つの科がいる。
 
クサリヘビ科(日本では7種)-ニホンマムシ、ツシママムシ、ハブ、トカラハブ、
   サキシマハブ、タイワンハブ(外来種)、ヒメハブ
コブラ科(日本では2種,別途、海産種が9種)-ヒャン(3亜種を含む)、
   イササキワモンベニヘビ、
ナミヘビ科(日本では1種)-ヤマカガシ
 
 ヘビ類の全ての種類は肉食であり、生きた動物を丸呑みする。
 
 そのための武器として、一部の種類では毒を用いているようだ。
 
 毒蛇の毒は、唾液腺が変化した毒腺で作られている。
 
 毒液は、注射針などのように特殊化した毒牙を通して(クサリヘビ科、コブラ科など)、またはその根元から分泌される(ナミヘビ科の一部など)。
 
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(毒牙の写真-出典「ハブの館」(http://www.geocities.jp/habuyakata/))
 
 毒の成分はさまざまなタンパク質であり、出血や腫脹、壊死、血小板凝固、溶血、神経の麻痺などさまざまな作用を引き起こす。
 
 毒蛇の立場から言えば、毒は獲物を捕るためのものであり、人を咬むことは二次的に防御に使っているに過ぎない。
 
 いったん毒を使い切ると補充には時間を要し、その間は捕食が困難になってしまう。
 
 毒蛇が人を咬み殺しても丸呑みできる訳ではないので、人を咬むことはいわば「毒の無駄遣い」に過ぎない。
 
 そのため、毒蛇は貴重な毒の無駄遣いを避けており、少なくとも日本産の陸生種に関しては、いずれも積極的に人を襲うことはない。
 
 相対的に小さい毒蛇から見れば、人は巨大な天敵であり、急に近寄られたり、体の一部を踏まれたり、また捕獲されそうになれば、防御のためにやむを得ず咬みつくのである。
 
 
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  (ハブの写真-出展「ハブの館」(http://www.geocities.jp/habuyakata/))
 
 
咬まれないために
・その地域にどの種類がいるかを把握し、見分けられるようにしておく。
 
   北海道:ニホンマムシ
   本州・四国・九州:ニホンマムシとヤマカガシ
   奄美・沖縄:外来種を含めたハブ類
   八重山:サキシマハブ。
 これは、後述の咬まれた際の処置にも重要な情報となる。
 
・毒牙の通り難い足ごしらえをする。膝まである厚手の長靴などがよい。
サンダル履きは禁物。
 
・歩くときには、一歩ずつ毒蛇がいないことを確認する。
 「ハブは飛ぶ」というが、決して飛ぶわけではなく、咬みつく際にとぐろを巻いた位置から最大で全長の2/3程度を素早く伸ばしている。
 ハブのサイズを考慮して、その球体面に確実にハブがいないことを確かめつつ歩くことを習慣づける。
 夜間には走ったり、薮こきをしたり、よじ登るのは厳禁である。
 
・もし毒蛇を見つけても触らず、避けて通る。
 
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(ニホンマムシの写真-出典「JAPAN SNAKE CENTER」
 
 
万一、咬まれたときの応急対処
・咬まれた蛇の種を識別する。マムシ類、ハブ類の咬傷には2個の牙痕が見られることが多い。この識別は、その後、医療機関の処置において、血清の選択に重要である。
 
・同一個体に再度咬まれないためにその場を離れて座る。とにかく落ち着き、咬傷部位が手であれば腫脹に備え指輪や腕時計を外す。心拍数が上がると毒の回りが速くなるので、心拍数が上がらないように留意する。
 
・牙痕を確認できるように衣類をとり、市販の毒吸引器で吸引するか、なければ水などで流しながら指で搾り出してできるだけ毒を体外へ出す。
 
・「傷口の切開」、「紐などによる緊縛」は、かえって障害を起こす危険があるため行わない。
 
・咬まれた後、なるべく速やかに医療機関に行く。患者は座るか横になって安静にし、処置はできるだけ他人に任せる。
 マムシ類やハブ類の毒が入れば激しい痛みと腫脹を伴うため、10分以上何の変化もなければ無毒咬傷と考えられる。
 ヤマカガシ咬傷の場合には局所の症状がほとんどなく、全身症状もすぐには現れないことがあるので、応急処置後に医療機関に行き、医師に説明して少なくとも数時間は経過を観察する。
 
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  (ヤマカガシ(左:関東、右:近畿)の写真
-出典「JAPAN SNAKE CENTER」
 
各毒蛇の特徴
最後に、各毒蛇の概略を記載する。
 
(クサリヘビ科)
ニホンマムシ
 分布:北海道、本州、四国、九州と周辺の島(国後島、佐渡島、五島列島、屋久島、伊豆諸島など)
 全長:40~65cm、体重:35~150g
 生態:森林を中心として山際の農地や集落、草原に至るまで広く見えられる。生物多様性の高い里地里山の指標種
 特徴:国内で最も咬症被害者数の多い毒蛇で、死亡者数も年間10~20人程度と、ハチ類に次いで死亡例の多い
 
その他のマムシ
ツシママムシ:分布は長崎県対馬のみ
 
ハブ
 分布:中部琉球(奄美諸島と沖縄諸島)
 全長:100~200cm、体重:140~1,700g
 生態:原生林よりも農地と森林、集落が混在したような環境に多く、樹上でもよく見られる
 特徴:日本の毒蛇の中で最大で、最も危険である。
 人家近くや農地に比較的普通に生息すること、大型で毒量が多く、多種に比べて遠くまで毒牙が届くこと、毒牙が長く毒の注入が効率的であること、攻撃性が高い。
 
その他のハブ
トカラハブ:分布は鹿児島県トカラ列島の宝島、小宝島
ヒメハブ:分布は中部琉球
サキシマハブ:分布は八重山諸島、近年は沖縄南部に移入
タイワンハブ(注:分布:台湾から中国南部、東南アジア、また沖縄県名護市周辺に持ち込まれ定着
(注)外来生物法によって特定外来生物に指定。原産地では咬傷被害が深刻。ハブとも交雑する。沖縄島の定着地域では在来のハブの数倍に及ぶ高い密度で生育。行動が敏捷で攻撃的であり、ハブより強い毒性を有するため、今後の本種の分布拡大に伴う咬傷被害の増加が強く懸念。
 
(コブラ科)
ヒャン
 分布:奄美群島と沖縄群島
 全長:30~60cm、体重:8~40g
 生態:森林の林床に生息
 特徴:出会うことは少なく、口が小さく、あまり咬むこともなく、被害は報告されていない
 
イワサキワモンベニヘビ
 分布:八重山
 特徴:毒性は強いと思われているものの、極めて珍しく、被害の報告はない
 
(ナミヘビ科)
ヤマカガシ
 分布:本州、四国、九州と周辺の島(佐渡島、五島列島、屋久島など)
 全長:70~150cm、体重:30~600g
 生態:山際の水田に多く、森林にも見られる。本種の生育のためには、餌となるたくさんのカエルが必要
 特徴:日中も夜間も活動する。毒牙は上顎の最も後方に位置し、注射針のような構造を持たず、傷口からにじんで広がる。長時間咬まれ続けたりすると、体内に毒が入り、全身の皮下や内蔵から出血して脳内出血などで死に至る。
 
 以上が本題である。
 
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 本日のマンホールは、神奈川県川崎市。
 これは、しんたろさんから、ご提供頂いた。
 画像のご提供は非常にありがたいことである。
 
 マンホールはこれら。
 
イメージ 6
      中央にサツキ(市の花)、外周にツバキ(市の木)がデザインされている
 
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消火栓マンホール-外周には、サツキ(市の花)、ツバキ(市の木)
顔のようなものは、川崎市のシンボルマーク(緑色の目が「自然とやすらぎ」、青色の鼻が「水とうるおい」、赤色の目が「情熱と芸術」、黄色の口が「温かいハート」をイメージしている)
 
 これらのマンホールも、マンホールギャラリーのブログ(下記リンク)に追加させて頂きます。
 
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