報文紹介「月のリズムと昆虫との関係」

 クワガタの灯火/灯下採集において、満月の日にはクワガタはあまり光には集まらず、新月の日には容易に光に集まってくる、といった経験的な知見をお持ちの方は多いことであろう。
 
 こういった事象以外においても、生物はどうやら、月のリズムに関係していそうであり、その知見について、ここで紹介させて頂く。
 
 今回紹介するのは、下記の報文である。
 
  題名:樹液の糖度やpHに月のリズムが現れる
  著者:片山悦郎
  雑誌:現代農業 87(5), pp.150-154
  年代:2008
 
 この報文は、一見、植物の話のように思われるが、昆虫の話もある。
 
 なお、このような話は農事気象学会といったところで研究されているようである。
 
 
 まずは、植物の話を簡単に纏める。
 
 満月と新月の日で比較すると、植物は樹液の糖度やpHに変動が起こるようである。
 
 これらを含む現象を纏めると、下記の表のようである。
 なお、私の感じたイメージでは、植物についてというより、(木ではなく)農作物のような一年草や多年草についてといったところであろうか。
 
 表 満月・新月での植物生理の変化や害虫・病気の関係について

 
樹液pH
作物の生育
苗の生育
定植
害虫産卵
病気発生
新月
下がる
栄養生長
徒長
活着良好
少なく弱い
少ない
多い
満月
上がる
生殖生長
順調
活着不良
多く強い
多い
少ない

 注)生殖生長では花芽が分化しやすく、開花する花を多い傾向があり、栄養生長では、生長するのにエネルギーを費やすため、花は少ない。
 
 このような新月・満月のときの生理状態を踏まえ、農作業において施肥・農薬散布などの対策が異なるようである。
 
 
 植物の話はここまでとし、次は昆虫の話。
 
 上の表にあるように、満月の日には、害虫の産卵が多い傾向があるようだ。
 
 害虫に限らず、満月の日には生殖活動を行うため、昆虫たちは活発に活動するようである。
 
 そのため、満月の日には灯りの下には、たくさんの虫が集まる。
 
 なお、満月の月の光に誘われているのではなく、曇って月が出ていない場合においても、満月の日には、光りのところに虫が集まってくるそうだ。
 
 このため、著者は重力の微妙な違いを植物や昆虫が感知していると考えている。
 
 ところで、上の話はよく考えてみると、クワガタの挙動とは正反対である。
 
 クワガタは満月の日には、灯りにはあまり集まらない。
 
 このことについては、どう理解したらいいのだろうか?
 
 これは私見ではあるが、次に書いたように、満月の日は昆虫たちは、光りに集まっているのではなく、単に活発に活動しているからではないかと考えている。
 
(私見)
 光りに集まっているように見える昆虫は、普段は別のところに隠れているが、満月のときには、活発に動いているので、光の下でも、それなりの数が発見される。
 そして、クワガタのように普段は光りに集まるクワガタたちは、満月のときには、光りとは関係なく活動もしくは産卵行動をするために、相対的に光りの下には集まる数が少ないのではなかろうか?
 
 
 満月の日には、産卵が多いとの生理現象を踏まえ、ある農家では、満月の45日後に農薬を散布し、農薬使用量を削減させているようである。
 
 こうすることによって、卵から孵化した直後の(感受性の高い時期の)害虫を農薬により殺虫することにより、その後の害虫の増加を抑え、1ヶ月に1回(満月から数日後毎)の農薬散布で、害虫を食い止める工夫をしているようだ。
 
 ちなみに、満月の日は、昆虫だけではなく、海水中では、サンゴが産卵をすることが有名なようである。
 
 この話、初めは採集者の観点で面白く読んでいたが、よくよく考えてみると、満月の日に産卵しやすいのなら、飼育に活用できるのでは?と思った。
 
 誰か、満月と新月の日でクワガタの産卵数の違いを比較してくれる方はいないだろうか?
 
 それとこの内容を踏まえ、満月45日後の農薬散布についての実践は、私は責任を取れないので、自己責任でお願いしたい。
 
 以上が本題である。
 
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 本日のマンホールは、千葉県千葉市。
 これは、ペンチ君さんから、ご提供頂いた。
 画像のご提供は非常にありがたいことである。
 
 マンホールはこれ。
 
イメージ 1
 上から、コアジサシ(市の鳥)、ケヤキ(市の木)、オオガハス(市の花)である。
 
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