報文紹介「カミキリムシが産卵する場所-その2」
クワガタ採集の基本は、クヌギ林の中で樹液ポイントを見つけることかと思う。 これに関連して、樹液が出るメカニズムについては、以前に紹介させて頂いている(
http://blogs.yahoo.co.jp/kotaro168/3787273.html)。
クヌギの樹木から樹液が出る仕組みは、まず初めに、カミキリムシの産卵跡、その幼虫の穿孔痕や成虫の脱出痕の
傷によるものである。
人間の傷口も同様であるが、そのままであれば、木の再生能力により、穴が塞がり、樹液が止まってしまう。
しかしそこに、ボクトウガの幼虫やハチが傷口やその付近の樹皮を齧ることにより、樹液が継続的に滲出する。
またその報文では、風通しのよいところにカミキリムシが産卵を好むことから、林縁付近でかつ、藪のない、もしくは薮が低いところにカミキリによる傷痕があるとの内容が書かれてあった。
今回のものは、日当たりの観点から、訪花性昆虫のケブカトラカミキリムシを題材にして、産卵する箇所について研究された下記の報文を紹介させて頂く。
題名:ケブカトカラカミキリによる被害木の空間分布およびその成立要因としての成虫の走光性
著者:佐藤嘉一
雑誌:日本森林学会誌
87(1), 8-12
年代:
2005年
この報文は、フリーアクセスで入手できるので、興味があれば、ご覧頂ければと思う(http://ci.nii.ac.jp/naid/110002975556
)
題名にある走光性は、最近では、光走性との表現が用いられる。
要するに、光の方向に向かっていく性質が、(正の)走光性であり、光の方向の逆に向かっていくのが、負の走光性となる。
さて、ここでの報文の主な結果は、主に
2つの結果があり、これらを総合して考察すると、題材となったケブカトラカミキリには走光性があるため、林の明るいところに産卵すると言った主旨の内容が展開されている。
まず一つ目の結果は、図
3にある。
調査対象の林を、メッシュ状にエリアを分け、そのメッシュ毎に照度計で光を測定し、また、カミキリムシに食害されている木の分布を重ねてマッピングすると、日が当たる林の縁や、林内でも木が枯れたため日が差し込んだ明るい場所に、カミキリムシの食害木があることが分かった。
二つ目の結果として、カミキリムシの走光性を確認する方法として、暗いところにカミキリムシを置いて、明るい場所と暗い場所のどちらに移動するかを確認したところ、明るいところに行くことが確認されたため、走光性があると判断している。
この確認には、歩行と飛翔に
2種類の方法で確認されている。
これらの結果から考察すると、明るいところをケブカトラカミキリは好み、その場に留まって産卵すると言った内容である。なお、訪花性の昆虫は、白いところをもともと好むようである。
また、このカミキリは、羽化直後から成熟しており、それに加え、あまり移動をしない種でもあるようだ。
(雑感)
私は結果について異論はないが、考察部分で述べられている“走光性”と“明るいところに産卵”との関係性には、疑問の余地が残っているかと思われる。
走光性の試験を実施するには、入口は、林内の照度に設定し、出口は林縁の照度に設定して試験を行い、それでも再現性よく、林縁の照度の方面に向かって行くのであれば、カミキリムシは林縁の光を好むと推察できるかも知れない。
しかしながら、調査結果の図
3のマッピング結果は事実であり、貴重なデータであると考えられるので、私としては、その結果のみを受け入れることにする(林縁、林内に関わらず、明るい場所にケブカトラカミキリが産卵をする)。
以上が本題である。
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本日のマンホールは、北海道名寄市。
これは、じろうさんから、ご提供頂いた。
画像のご提供は非常にありがたいことである。
↓ マンホールはこれ。
![イメージ 1](https://stat.ameba.jp/user_images/20190814/10/red-mobilio/bc/7f/j/o0369037214535154018.jpg?caw=800)
市の鳥であるアカゲラが、雪国らしくスキーをしている。
このマンホールも、マンホールギャラリーのブログ(下記リンク)に追加させて頂きます。
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