報文紹介「無降雨が続いた後の樹液滲出の回復期間について」

 
 前回の報文紹介では、次回にはカミキリムシの話をすると予告していたものの、順序を変更させて頂いた。
 
 今回もクワガタ採集者にとって、関心のある題目ではなかろうか。
 
 
 暫く晴天が続くと、樹液の出が悪くなり、樹液採集の効率が低下する。
 その後、雨が降ったとき、いつになったら樹液が回復するのか? 採集に出掛けるのにいつが効率的なのか? と言ったことに参考になる情報となればと思う。
 
 今回紹介する報文は、フウ(楓、マンサク目マンサク科フウ属、
Liquidambar formosana)の木を研究題材に用いたものであって、クヌギなどのコナラ属の木ではないものの、ヒノキ1)でも似たような結果が報告されていることから、その傾向は、コナラ属でも同様ではなかろうか。
 
 
 ここで紹介する報文は、次のものである。
 
     題名:夏の無降雨期間がフウの樹液流速度に与える影響
     著者:上田正文、吉川賢
     雑誌:日本林学会誌、
76(3)、249-257
     年代:
1994
 
 今回の紹介には、図はなく、文字だらけであることはご了解頂きたい。
 また、報文の要約をするのではなく、冒頭で述べた採集者の視点から、この報文で興味を惹いたポイントを箇条書きで列挙すると、このようになる。
 
 
● 樹液流は、年輪に沿って流れている。
 
● 年輪によって、樹液流の速度が異なる。
 
● その速度は、表面から樹幹に進むにつれ、速度が上昇し、ある場所で最大になり、さらに樹幹へ進むと下がっていく。
 
● 既知見では、表面から樹幹に向けて、
10~20mm奥のところが、樹液流が最も速い。
 
● この報文では
7mmのところが最も速かった。
 
● 土壌に水分がある場合の樹液流の日内変化は、日の出とともに上昇し、正午頃が最大となり、そこから、低下して夜になる。
 
● このパターンは、断続的に雨が降っている場合は、晴天でも雨天でも同じ傾向となる(2011.5.18追記)。
 
● 夏の無降雨とは、約
2週間雨が降らないときのデータを踏まえている。
 
● この無降雨期間では、樹液流の速さの分布に変化が生じていた。
 
● すなわち、最も樹液流が速いところには樹液が流れるが、表面や奥は、樹液流が著しく遅くなる。
 
● 無降雨期間の後、雨が降った場合には、表面部分の樹液流が回復するには
2週間掛かる。
 
 
【雑感】
 樹液流の最大の場所は、表皮から奥に
7~20mmのところと、意外と表皮に近いことが分かった。
 
 コナラ属の木で無降雨期間を経た場合、雨後の樹液滲出の回復に
2週間掛かるかは不明であるものの、雨上がり直後・翌日くらいでは、採集出撃には時期尚早であろう。
 人それぞれ、雨後何日後との経験則をお持ちではないだろうか?
 
 
 
【参考文献】
1)
 上田正文、柴田叡弌、(2002)、「ひずみゲージ法」によって測定した樹木の幹・枝部の直径日変化と水分状態、樹木医学研究、6(2)、75-84
 
--------------------------------------------------------------------
 
 本日のマンホールは、山形県大蔵村。
 これは、ペンチ君さんから、複数ご提供頂いたものの一つである。
 画像のご提供は非常にありがたいことである。
 
 マンホールはこれ。
 
イメージ 1
ヤマドリ(村の鳥)、リンドウ(村の花)がデザインされている
 
 このマンホールも、マンホールギャラリーのブログ(下記リンク)に追加させて頂きます。
 
 皆さんからの、さらなる応募も待っています。送付先のアドレスは、マンホールギャラリーのブログに掲載しております。