報文紹介「クヌギの樹液滲出とボクトウガ幼虫との関係」

 今日は、私のブログの訪問者数が過去最多のような気がする。
 ランダムブログにエントリーされたのだろうか?
 
 そこで、本当か嘘か分からないが、ランダムブログについて、小ネタをひとつ。
 
 とあるオセロのブログを拝見すると、面白い内容があった。
 ブログを投稿する時刻で、末尾に9分が付けば、ランダムブログにエントリーされる確率が高いそうだ。
 要するに、9分、19分、29分、39分、49分、59分を目指して、投稿したら確率UPのようだ。
 
 私は、試したことがなく、また昨日の投稿は、末尾は
8なのだが。
 
 
 
 さて、本題。
 
 今までの報文紹介は、敢えて分類するならクワガタ飼育に関係するものであった。
 今回は、初めてクワガタ採集に関係する報文を紹介する。
 
 この報文との出会いは、東大の先生の報文で、参考文献として挙げられているのを見つけたことから始まった。
 
 クワガタ採集者ならば、このタイトルのような報文を読まなくても、人づてで、クヌギの樹液滲出にボクトウガ幼虫が関係していることは聞いたことがあるのではないだろうか。
 
 ではなぜ、ここで紹介することにしたのか?
 
 この報文が2010年に発表されたという点である。
 
 読んでいくうちに分かってきたが、ボクトウガに関する研究はあまりなされていなかったことである。
 
 私は入手していないが、同じ著者が2003年に、昆虫と自然(38(1), 37-41)の雑誌に今回のような内容のものを投稿しているようである。
 
 また、他の報文を読んでいると、この著者は、どうやら、ボクトウガと樹液の関係については、国内では第一人者ではなかろうか。
 
 ただし、このタイトルに関する内容で、学術論文としてはこの報文が初めてのようである。
 
 では、ここで紹介する報文は次のものである。
 
 
    題名:ボクトウガ幼虫による樹液依存性節足動物の捕食-予備的観察
    著者:市川俊英、上田恭一郎
    雑誌:香川大学農学部学術報告、第62号、p.39-58
    年代:2010年
 
 
 この報文の全体像を一言で説明することは難しい。
 
 読んだ後の感想を羅列すると次のようになる。
 
 ポジティブには、
・2010年発表だけあって、参考文献も新しい。最新かつ質の高い知見が得られた
・ボクトウガ以外の情報も豊富である
・特に樹液滲出のメカニズムが網羅的に書かれている点は参考になる
 
 ネガティブには、
・論文としては、骨子と関係のない話が脈絡もなく続き、一貫性がない。要するに、知っていることを報文に無理やり詰め込んだ感じだ
・文章としては、日本語の修飾語の使い方が苦手のようであり、読み手にとって難解であった
 
 さて、この報文の骨子は、私が理解したところによると、こうである。
 
「今までは、ボクトウガ幼虫とクヌギの樹液滲出の関係が不明であったが、ボクトウガが意図的に樹液を滲出させていることが分かった。また、四国ではボクトウガ自体の存在が確認されていなかったが、併せて、その存在も確認された」である。
 
 私は、この報文の脈略のない内容を忠実に要約するつもりはない。
 
 クワガタ採集者アカモビ独自の切り口で、特筆すべき点のみを列挙する。
 
 なお、いろんなことが文献を引用しながら書かれているので、背景となる研究分野に興味があれば、この報文を入手して、孫引きするのがお奨めである。
 
 
【樹液の滲出時期・場所】
 
・香川県の林で、1998年から2000年の間の調査結果である。
 
・樹液滲出開始時期は、平均気温で言えば20℃以上になった頃、時期としては5月中旬から6月中旬頃。
 
・その後、6月下旬から7月上旬に樹液が急激に増え、そのレベルが7月下旬まで続き、8月上旬から9月上旬までさらに一層、樹液が増加する。
 
・その後、樹液量は減少し、平均気温が20℃に低下する10月頃まで樹液は出続ける。また、平均気温が15℃になる11月上旬にはほとんどのものが樹液を出さなくなる。
 
・樹液の滲出する部位の高さは、根元から1mの範囲が最も多い。2mまでも含めると、樹液滲出木の70%を超える。
(新規探索では頭上の樹液場はあまり気にしなくてもいいかも知れない。)
 
 
 
【樹液滲出のメカニズム】
 
・木の傷から樹液は出るものの、木の持つ防御機構が働き、通常は1ヶ月程度で樹液の滲出は止まる
 
・これを持続させているのが、ボクトウガ幼虫である。
 
・ボクトウガ科の幼虫の多くは材食性であるが、樹液場で見られるボクトウガ幼虫のみ肉食性である
 
・このボクトウガ幼虫は、樹液に集まる昆虫を捕食するため、坑道の周辺を意図的に齧り、樹液を滲出させている
 
・ボクトウガ幼虫のあごは強くないため、健康な樹皮を齧って樹液を滲出させることはできない
 
・そのため、カミキリムシの脱出痕、ススメバチの齧った跡、人間が作った傷などから、ボクトウガ幼虫が入っていく
 
・一方、ススメバチは、健康な樹皮であっても、巣材採取のため、その樹皮を齧り、樹液を滲出させる能力を持っている(もちろん樹液を餌にもしている)
 
・カブトムシも樹液滲出に関与しているが、クヌギのような硬い樹皮のものではなく、南国に分布しているような薄い樹皮の木を削っている。
 
 
 この報文に関しての紹介は以上である。
 この次の題材は、同じく採集者目線で、カミキリムシである。
 
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 本日のマンホールは、山形県戸沢村。
 これは、ペンチ君さんから、複数ご提供頂いたものの一つである。
 画像のご提供は非常にありがたいことである。
 
 マンホールはこれ。
 
イメージ 1
 
 ヒメサユリ(村の花)と舟運の村を象徴する最上川舟下り。また、日本三大急流、世界三大舟唄としても有名なようだ。
 
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