どんぐりの木についての小ネタ

 クワガタ飼育者にとっては無関係な小ネタであり、またクワガタ採集者にとっても、ほとんど採集成果向上には寄与しない、言わば、どうでもいいような小ネタを書くことにする。今回は文字だけである。
 
 
Ⅰ.クヌギ、コナラの落葉について
 
 特にクヌギやカシワの木は、秋に完全には落葉せず、冬場でも枯葉が枝についているものがある。
 そのため、冬場にクワガタ採集場所の新規開拓には、この枯葉をクヌギと見なして探索すれば効率的に樹液場を発見できることもある。
 
 では、なぜ、クヌギは落葉せずに枯葉が残っているのであろうか?
 
 実は、その一部は落葉するのである。
 そのメカニズムは次のとおり。
 
 落葉樹の枯葉が枝から落ちるには、離層という組織が関係している。
 その離層が発達すると、そこが起点となって、葉が枝から脱離する(落葉する)ことになる。
 この脱離には、エチレンやオーキシンと言った化学物質が関係すると考えられている。
 
 ある論文(脚注②)によると、エチレンの働きにより、セルラーゼやポリガラクチュロナーゼの合成が促され、これらの酵素の作用によって離層組織の細胞の細胞壁が機械的に弱くなり、落葉しやすくなるようだ。
 
 そして、クヌギやカシワなどのコナラ属の木は、この離層の発達が遅い種類なのである。
 
 では、この発達が遅いと、どうなるのか。
 
 基本的には、離層の発達は、気温の低下により促される。
 そして、秋から冬に向けては、空気が乾燥気味になる。
 
 そこで、気温があまり寒くならず、中途半端な場合、離層が発達して組織が弱くなる前に、その部分が乾燥してしまい、落葉しにくくなる。
 
 これが、枯葉が枝に残ってしまうメカニズムである。
 
 ただし、風に吹かれることによって、茎が強制的に切断され、落葉することもある。この場合は、乾燥してても落葉はする。
 
 また、別の論文(脚注①)では、同じ地域でも、山のように標高分布(垂直分布)がある場合には、標高が高いほど(気温が低くなるので)、離層が発達しやすく、落葉しやすいことなる。
 
 これらを踏まえると、コナラ属の枯葉が枝に多量に残っているところは、離層が発達しにくい、暖かい場所であるとも言えるかも知れない。
 
 
 
Ⅱ.どんぐりの木の雑種について
 
 クワガタ採集のために、林を歩いていると、おやっ?と思うことがある。
 
 それは、幹はコナラの形をしているが、葉はクヌギの形をした木があったり、幹はシラカシのようであるが、葉はアラカシだったりもする。
 
 また、一つの木に、形の異なるどんぐりが成るものもある。
 
 これは、どういうことであろうか?
 
 実は、どんぐりの木は、互いに親和性が高いものがあり、交雑して雑種ができやすいのである。
 また、ナラガシワなどは種(しゅ)として、十分に固定されておらず、先祖返りすることもあるようだ。
 
 そこで、どんぐりの木の雑種のリストを下に挙げてみた。
 
   ナラミズガシワ    = ミズナラ × ナラガシワ
   カシワモドキ      = ミズナラ × カシワ
   ミズコナラ       = ミズナラ × コナラ
   コガシワ        = コナラ × カシワ
   オオバコナラ      = ナラガシワ × コナラ
   ホソバガシワ     = ナラガシワ × カシワ
   イズアカガシ    = アカガシ × アラカシ
   オオツクバネガシ = アカガシ × ツクバネガシ
   チイゼイガシ       = ハナガガシ × アラカシ
   名称不明        = オキナワウラジロガシ × ウラジロガシ  
 
 
 他にも組み合わせがあるようだが、私が読んだ本はこれくらいしか書かれていなかった。
 それにしても、結構、雑種の種類があるようだ。
 
 
 
 以上で、本日の小ネタはこれまでである。
 
 私は、何でもかんでも、おやっ?と思ってしまうので、クワガタ採集、クワガタ飼育がなかなか先に進めない。
 
 困った性分であるが、今更直らないので、仕方ない。
 それにしても、何の役にも立たない知識である。
 
 
 
【参考文献】
Ⅰ.
 山本将功、中島敦司、上田了輔、(2007年)、異なる標高に成育するコナラとクヌギの離層発達と落葉に関する研究、ランドスケープ研究(日本造園学会誌), Vol.70, No.5, pp.471 - 474
 
 和田アイ子、(1992年)、落葉における離層形成過程と細胞化学、化学と生物、Vol.30, No.5, pp.325 - 331
 
Ⅱ.
いわさゆうこ著、どんぐりハンドブック、文一総合出版