『藤本タツキ 17-26』 | From Rabbit House

From Rabbit House

好きな音楽や日々の暮らしを
思うまま感じるまま。

YouTubeのオススメに予告(ダイジェスト)があったので見てみたら、思いのほか良かったのでアマプラで本編を観てみることに。

 

『チェンソーマン』でお馴染み藤本タツキが17歳から26歳の間に描いた短編集『藤本タツキ 17-26』

 

私は『チェンソーマン』を読んだ(アニメも観た)ことないし、映画『ルックバック』は残念ながら私には ちょっと合わなかったので、「どうかな~?」と思っていたのですが全編 面白かったです!!

 

『藤本タツキ 17-26』17分26秒の特別映像

 

一言で言えば「愛」だな。

 

愛情・友情・思いやり・・それらがテーマとなった作品集でした。

 

お互いがお互いを救いたい護りたい、或いは何を考えているのか分からない相手のことを知りたい理解したいという そんな関係性かな。

 

 

1本20分前後の短編だと飽きないから良いね。

 

どれもが序章(プロローグ)で、ここから本当の物語が始まりそう。

 

以下、ネタバレあり注意

 

 

「庭には二羽ニワトリがいた。」

 

宇宙人に侵略された地球に生き残っている人間に対して、他の宇宙人から守ろうとする優しい宇宙人もいたんだってお話。

 

上に貼った動画からスクショしています

(以下同じ)

 

宇宙人に学校の庭で飼われる人間という、たまによくある逆転設定が面白くもあり怖くもある。

 

飼育係の洋平は とても心優しき宇宙人だし(変身した姿もかっこよかった)、アミが同じ人間だと思って庭で一緒に飼われていたユウトも宇宙人だったのだけれども(フリーザみたいだったねw)

 

「人間を知りたい」と人間と同じ立場に立つことでユウトの心境に変化が起きた。

 

でもアミはユウトの本心(変わった気持ち)を知らなかったから、最後まで宇宙人は人間を食べる怖いバケモノだと思って逃げたけれど。

 

 

洋平の亡骸を目にした超絶ツンデレの女宇宙人・萌美(見た目は強そう)も可哀想だったな。

 

最初は世界観に入り込むのに少し時間を要したけれども、2度目に観た時は ほんのり涙が出た。

 

人種や文化の違いがあったとしても「同じ立場に立って考える=相手を思いやる」ことで、お互い手を取り合うことが出来るかもしれないということを言いたいんだろう。

 

 

ま、結局は無理(そんなのは綺麗事)で人類は滅亡しちゃったんだけど。

 

「人間と宇宙人はその後 仲良く暮らしましたとさ、めでたし めでたし」にならない所が、またリアル。

 

 

 

「佐々木くんが銃弾止めた」

 

大好きな川口先生の貞操を守るため、拳銃を持った暴漢に立ち向かった佐々木くんのお話。

 

 

先生の「どんなに低い確率でも可能性は0%ではない」「常識にとらわれない」という考え方が良いなと思いました。

 

銃弾を止められたのは、先生が神様だったからなのか?佐々木くんの特殊能力なのか?可能性を信じたからか?

 

佐々木くんは賢くて(先生を守るのに必死だったから?)、その場でうまく暴漢を説得できたのは良かった。

 

ま、それも銃弾を止めたゆえに未来人という設定に説得力が増したからだけど。

 

 

「どんな人にも可能性はある」という前向き希望のある話だったな。

 

自分の若い(10代)頃だって「自分はなんでも出来る」って根拠のない自信と謎の無敵感で いっぱいだったのにな。

 

現実を知って大人になっていくんだけど、可能性を信じる生き方をしていたら佐々木くんみたいに夢を実現できたのかな?

 

 

 

「恋は盲目」

 

高校卒業を明日に控えた生徒会長の伊吹が恋するユリに一世一代の告白をしようとするお話。

 

 

嵐になろうが 見知らぬおっさんからカツアゲされようが 宇宙人に地球を壊すと言われようが、絶対に告白したいという伊吹の情熱をひしひしと感じた。

 

いや、その 怖いから!!

 

でも その告白のおかげで全ての危機的状況を回避してめでたい結末となった。

 

ユリちゃんが素直でかわいい。非常に漫画っぽいけど返事が「押忍」なとこも。

 

 

 

「シカク」

 

不死身で退屈すぎるのが嫌で死にたがっている吸血鬼ユゲルが、風変りな殺し屋シカクとなら生きていても楽しめそうだと思って死にかけのシカクの命を救うお話。

 

 

シカクは言葉をそのまま受け取って親の言うことを聞いているつもりなのに叱られてばかりで許してもらえなくて(アスペ的な感じ?)

 

そんな中ユゲルだけは自分を許して(=認めて)くれたのが本当に嬉しかったんだろうね。

 

病院で警察に撃たれながらもユゲルに告白するシーンが良かった。

 

 

どんな展開になるかと思ったら、ラストとっても可愛かった。いつまでも お幸せに♪って感じ。

 

でも何千年も永遠に死ねないのはやっぱり辛いかな?ユゲルも優しいしド天然なシカクとなら退屈しなさそうだけど。

 

声(声優さん)が花澤さんと杉田さんなのも普通の人間らしくない者を演じている感じで良いな。

 

 

 

「人魚ラプソディ」

 

海底にあるピアノを奏でる少年トシヒデ人魚シジュとの恋物語

 

 

トシヒデはシジュにピアノを教えるうちに お互いどんどん惹かれあっていたが、ある日 運悪く豹変したシジュに耳を噛まれてしまう。

 

人魚が人間を食べるのと同じく人間もかつて不老不死になるからと人魚を食べており、互いに憎しみ恐怖心はあるけれども

 

トシヒデが弾くピアノの音色の美しさに人魚たちはシジュと会うこと、海にいることを許すのだった。

 

 

これも種族を超えた愛だね。

 

見知らぬ者との交流は恐ろしいけれども喜びもあるということ。

 

 

 

「目が覚めたら女の子になっていた病」

 

目が覚めたら女の子になるという不治の病にかかったトシヒデと、その彼女リエの今後の性も含めた関わり方について。

 

 

トシヒデが女になったことで学校での虐めが性的になり、リエの兄アキラに助けられたことで女としてアキラに好意を抱くトシヒデにどう対応すれば良いのか分からないリエ。

 

子どもの頃から女の子みたいに泣き虫でいじめられっ子だったトシヒデを、いつもリエが護ってくれていた。

 

女になってしまったけれど今までとは逆に男としてリエを護りたいと決意するトシヒデにキュン♡としました。

 

 

『人魚ラプソディ』も主人公がトシヒデだけど、好きな名前なのかな?

 

作者は同じ名前をつけたがるね(『佐々木くんが銃弾止めた』の佐々木くんと『人魚ラプソディ』の佐々木のじいちゃんとか。『チェンソーマン』知らないけどナユタって人もいるみたいだし)

 

 

 

「予言のナユタ」

 

意味不明な熟語を呟き動物を残虐に殺す角の生えた妹ナユタ兄ケンジが護り理解していこうとするお話。

 

 

特別な力を持ったバケモノのようなナユタを理解したいけれども、まるで理解できずに悩むケンジ。

 

ナユタは なぜ本を読んでいるのか?なぜ生き物を殺すのか?なぜその死骸を兄の自分(ケンジ)に投げつけるのか?

 

それらの行動には全て理由があった。

 

表現方法が間違っていただけでナユタもケンジのことを想っていたんだね。

 

 

兄と妹のお話だけれども親がいないので実質 親子の関わり方、子どもの育て方についてって感じかな。

 

どんな状況・状態でも身を挺してナユタを「俺の妹だから」と護ろうとするケンジが健気だったな。

 

原作漫画が読めます下矢印

【ジャンプ漫画】『チェンソーマン』の藤本タツキが

描く新ファンタジー読切『予言のナユタ』前編

 

【ジャンプ漫画】『チェンソーマン』の藤本タツキが

描く新ファンタジー読切『予言のナユタ』後編

 

 

 

「妹の姉」

 

いつも後ろをついてきていると思っていた妹がいつの間にか前を走っていたことで崩れた 光子と杏子の関係を元に戻すお話。

 

 

これは美術(絵画)も関係あるし構造として『ルックバック』と似た感じかな。

 

比較的 共感する人も多いテーマなのかもしれない?けれど、個人的には言いたいことは頭では分かるんだけど あんまり心情的には分からないというか

 

根底に相手に対しての「見下し」「嫉妬」があるわけでしょ?

 

私はあんまり その辺が自分の中に無いので、その点でこういう作品は今一つなんだよね(『ルックバック』とかも主人公の性格悪いって思っちゃって入り込めないの)

 

 

妹は何も悪くなくて今でもずっと自分(姉)のことを尊敬して慕ってくれていたということが発覚してからのお話は良かった。

 

姉が賞を獲った後 美大に進学するのかと思ったら、結局やっぱり就職したんだなぁ。

 

最初は妹の才能に嫉妬していたけれど、自分も賞を獲って すっきり諦めがついたのかな(絵画に関しては どれだけ頑張っても妹には勝てないと察したから)。

 

 

8話の中でも特に「ニワトリ」「ナユタ」が好きでした ウインク