ちょっと間があきましたが『怪物團』の続きです。
「見世物小屋が舞台となっている約100年前の白黒映画を観た」というお話でしたね。
しかも二つの共通点は まだあって
映画の最初と最後が現在で、メインは過去の回想シーン(恐ろしい事件について)ということ。
「衝撃のラストが!」という展開まで同じ(まぁ今ではよくある手法ですが)。
1920年に公開されたドイツ映画『カリガリ博士』
なんとYouTubeでも公開されています(著作権切れとのこと)。
サイレント映画で「世界初のホラー映画」とも言われるこの映画。
多くの映画監督やアーティストらが影響を受けています。
アメリカ公開時のポスター↑
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
とある町に興行(見世物小屋を開き)に来たカリガリ博士。
眠り男「チェザーレ」は25年間 眠り続けており、予言をするという。
見世物小屋で主人公の青年フランシスの友人アランが
「あと何年生きられる?」と尋ねたところ
チェザーレの予言は「間もなく 夜明けに死ぬ」とのことだった。
その夜、何者かに殺されたアラン。
予言をしたチェザーレが怪しいと疑ったフランシスは
婚約者ジェーンの父とともに殺人事件について調べる。
父の帰りが遅いジェーンは父を探しに見世物小屋を訪れるものの居らず
「疑われている」と察したカリガリ博士はチェザーレにジェーン殺害を言いつける。
ジェーンを殺そうとしたチェザーレだったが、あまりの美貌に躊躇し
そのまま連れ去り、力尽きて(心臓発作で)死ぬ。
カリガリ博士は警察に捕まるのを恐れて逃亡し精神病院へと逃げ込む。
後を追ったフランシスは「カリガリという患者はいるか」と尋ねたところ
連れていかれたのは院長室で、そこにいたのはカリガリ博士だった。
院長(カリガリ博士)が寝た後、院長室へ忍び込むフランシスと病院の職員は
「カリガリなる人物が夢遊病者チェザーレを操って殺人事件をおこした」
と書かれた古い書物を発見する。
それを真似ているのだと院長の日記で確信し、
チェザーレの亡骸を見て錯乱する院長を拘束する病院職員たち。
しかし、実は・・・。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
以下ネタバレ
まさかの大どんでん返し。
狂人だと思っていたカリガリ博士は精神病院の院長で、
実は主人公フランシスが精神病患者で
すべての話は彼(フランシス)の妄想だったのです。
・・・と結論付けられていますが、果たして真相はいかに?
それでもやはり本当はカリガリ博士(病院長)がマッドサイエンティストの可能性も・・。
と穿った見方をしてしまうのは、毒されている証拠でしょうか。
私もまた狂っているのか?
無声映画でセリフは極端に少なく
セットが絵画(しかも平衡感覚を失うような歪な絵)であり
(これはフランシスの“妄想の世界”なので歪んでいる。
見ているものを不安にさせるような絵)
カメラワークも今の映画とは違って(細かいコマ割りではなく)
遠くから全体を映しているので
映画と言うよりも舞台(お芝居)のようで、
役者のオーバーなリアクションも殊更その印象を強くさせています。
私が『カリガリ博士』を知ったのは
丸尾末広先生の漫画『薔薇色ノ怪物』で
その中の短編作品にカリガリ博士が登場するのです。
作品のタイトルがまさに『カリガリ博士復活』
ずっと映画を観たいと思っていたけれどレンタルビデオ屋には置いてなく
時が流れ、先日観た『怪物團』を見終えた後“オススメ”として出てきたのがこの『カリガリ博士』だったのです。
↑左上の青年が主人公フランシス。
下のシルクハットの男性がカリガリ博士、
右が眠り男チェザーレです。
まさに30年越しに観ることができて
「これか!これなのか!!」と感激しかありません。
嬉しい。
そして素晴らしい。
「なんだよ、まさかの夢オチかよ」みたいなレビューもあったりするけれど
これ100年前だからね(激ギレ
)
尚、夢野久作の『ドグラ・マグラ』(1935年刊行。1926年に書き始めている)も精神病(精神病院)を扱っていて
構成も少し似ているなと思いました。
●精神病患者を使って実験しているマッドサイエンティスト(キチガイ医師)がいる
●人を操って殺人事件をおこした
●主人公(精神病患者)は自分が何者なのか分からない
(『カリガリ博士』では、自分が分からないのではなく相手を狂人だと思い込んでいる=結局、自分の状況が何も分かっていない)
やっぱり夢野久作も公開当時(日本での公開は1921年)『カリガリ博士』を観て、影響を受けていたのかな?