カラオケ禁止されてからDAMとも世界の赤魔道士REDは魔法使えず沈黙せざるを得ないので、想像者の私が音楽談義してるだけに😅
今回はそのXでポスト分割で長々になってる
ちょっと曲してる人向けなマニアックなのを
書いた備忘録です😅
【音楽の「重力」について】
人間って、音楽を聴くときに、ただ音を受け取っているわけじゃないんですよね。
どれだけ複雑なポリリズムやシンコペーション(本来の拍とは違う位置にアクセントを置く技法)が鳴っていても、脳はその混沌の奥にある「たったひとつの重力」を探し続けている。
音響心理学(音と人間の知覚の関係を研究する学問)的に言えば、脳は音の規則性を見つけ、次に何が来るかを予測しながら聴いています。
完全な無秩序を、そのまま処理するのは難しい。
だから脳は、音楽の中に基準拍(時間を測るための心の物差し)を勝手に作って、「ここが1拍目だ」「ここへ戻ればいい」と、鳴っている音を整理しようとする。
僕は、音楽を作るって、この脳の本能と対話することだと思うんですよね。
キックやベースが作る、強くて動かない中心軸がある。
その軸があるからこそ、歌やギターやシンセがどれだけ不安定に揺れても、聴き手はそれを「心地よい揺らぎ」として楽しめる。
逆に、すべての音が同じ強さで、同じ場所から、同じ密度で鳴っていたら、脳はどこを基準にすればいいのか分からなくなる。
だからグルーヴって、単にリズムが正確なことじゃない。
脳が「重力はどこだ」と手を伸ばした瞬間に、作り手が用意した一音で答えを返すこと。
その脳と音の衝突が、鳥肌の立つような快感になるんだと思います。
DTMでこの「重力」を作るとき、重要なのは、音を足すことよりも、どこで消すかなんですよね。
例えばサビ前で、キックもベースも低域も一瞬だけ全部消す。
それまで一定のパルスを追っていた脳は、突然地面を失って、「次はどこに着地するんだ」と猛烈に重力を探し始める。
その渇望が頂点に達した瞬間、キックとベースを叩き込む。
すると、実際の音量以上の衝撃として聴こえる。
サイドチェイン(キックなどをきっかけに、別の音量を一時的に下げる処理)も、単なる音量調整じゃないんですよ。
キックが鳴る瞬間だけベースやシンセを沈ませ、その直後に音を戻す。
脳から一瞬だけ重力を奪って、次の瞬間に返している。
だから身体が勝手に揺れる。
定位(音を左右のどこに置くか)も同じです。
キック、ベース、メインボーカルは中央へ置いて、不動の柱にする。
その周囲で、ハイハットやパーカッション、シンセを左右へ散らす。
脳の意識は外側へ引っ張られるけれど、最後には必ず中心へ戻される。
この「引き裂かれて、帰ってくる」運動が、立体的なグルーヴを生む。
EQ(周波数の調整)だって、ただ音を綺麗にする処理じゃない。
高域の鋭いアタックで脳に拍の位置を知らせ、その直後に低域の塊を押し寄せさせる。
つまり作っているのは音色だけじゃない。
「どの瞬間を重いと感じさせるか」という、聴き手の時間知覚そのものなんですよね。
そして、高速BPMのボカロ曲で一番面白いのが、日本語そのものの時間設計です。
日本語は基本的に「子音+母音」でできています。
例えば「せ」なら、最初に高域の摩擦音「S」が鳴って、そのあとに母音「e」のエネルギーが来る。
でもBPM180では、16分音符は約83ミリ秒しかない。
そこで子音から母音まで20ミリ秒ずれただけでも、歌全体が後ろへ転んで、もっさり聴こえることがある。
だから調声では、子音をグリッドより少し前へ出して、母音の立ち上がりを拍の中心へ置く。
VEL(子音の長さや速さを調整するパラメータ)やOPE(口の開き方や母音の明るさを調整するパラメータ)も、単なる表情付けではなく、言葉の重心を制御する道具なんです。
さらに日本語には、「っ」と「ん」がある。
「っ」は音ではなく、空白です。
だけど、その無音があるからこそ、直後の音が強烈に立ち上がる。
ボーカルだけでなく、シンセやリバーブまで一瞬切れば、脳は完全に地面を失う。
そして直後のキックや母音を、絶対的な重力として受け取る。
一方の「ん」は、高域が減って中低域が残る。
そこへベースを滑らかに受け渡せば、言葉と楽器の境界が消えて、歌詞そのものがリズムになる。
結局、作曲や編曲って、音をたくさん並べる仕事じゃないんですよ。
言葉、無音、周波数、定位、ミリ秒。
その全部を使って、人間の脳の中に見えない重力を設計する仕事なんだと思います。
脳が予測した場所へ着地させるのか。
ほんの少しだけ裏切って、さらに大きな快感へ連れていくのか。
その選択の積み重ねが、僕たちの言う「グルーヴ」なんじゃないでしょうか。
☆音楽の「重力」についての実践編
【サイドチェインという重力設計】
ここからは実際のDTMでの話。
もちろん曲や音源、コンプレッサーの種類によって最適解は変わるんですけど、一つの考え方として紹介します。
例えばBPM128前後なら、キックとベースのサイドチェインは、
・Attack:0.1〜1ms・Release:40〜60ms・Ratio:8:1〜10:1・Threshold:-20〜-30dB
くらいから試すことがあります。
狙いは「音量を揺らす」ことじゃない。
キックが鳴った瞬間だけベースを完全に引っ込めて、脳の重力を一点へ集中させること。
そして40〜60msほどかけてベースを戻すことで、「キックの重力」から「ベースの重力」へ自然に受け渡していく。
サイドチェインはエフェクトじゃなく、人間の時間知覚を設計する道具なんですよね。
【定位とEQ】
次は空間設計。
僕なら、
・Kick:Center
・Bass:Center
・Lead Vocal:Center
ここは絶対に動かさない柱にします。
逆に、
・Hi-Hat:L30〜R40
・Shaker:R60前後
・Arpやシンセ:L70〜R70
くらい大胆に振ることもあります。
脳は左右へ引っ張られるけど、最後はセンターへ戻ってくる。
この往復運動が立体的なグルーヴになる。
EQも同じ。
例えばアタックになるクリック成分を2〜5kHz付近で少し見せて、超低域(40〜80Hz)は少し遅れて感じさせるように作る。
耳は高域でタイミングを判断し、身体は低域で重さを感じる。
つまりEQは音色だけじゃなく、「時間の重さ」までデザインできるツールなんです。
【高速BPMのサイドチェイン】
BPM180まで上がると話はさらにシビアになります。
16分音符は約83ms。
この中でキックとベースが完全に重なると、脳は重力の中心を見失いやすい。
だから一例ですが、
・Attack:0〜0.1ms
・Release:20〜35ms
・Ratio:10:1〜∞
・Threshold:-25〜-35dB
くらいまで深く掛けることもあります。
キックの「点」を脳へ刻み、その直後20〜35msくらいでベースという「面」が押し寄せる。
音量は減っているのに、なぜか重く感じる。
実際に変わっているのは音量ではなく、脳が感じる重力のタイミングなんですよね。
【日本語とボカロ調声】
高速ボカロ曲では、日本語そのものも打楽器になります。
例えばBPM180。
16分音符は約83msしかありません。
「せ(Se)」なら、最初の「S」は摩擦音で、本当のエネルギーは後ろの母音「e」にあります。
この差は15〜30ms程度になることもある。
だから母音が拍の中心へ来るように、子音をほんの少し前へ送るような調整をすることがあります。
さらにVOCALOIDなら、
・VEL:90〜110(子音を短く)
・OPE:重力点だけ100〜127付近まで上げ、その後70前後へ戻す
といった考え方もあります。
もちろん声種やエンジンによって最適値は変わります。
でも、大切なのは数値そのものじゃない。
「脳が拍をどこで感じるか」を逆算して調声すること。
僕はそこが、高速ボカロ調声の一番面白いところだと思っています。
【予測誤差という、脳が一番気持ちいい瞬間】
ここまで「脳は重力を探している」という話をしてきました。
でも、もう一歩だけ踏み込むと、脳が本当にやっていることは「重力探し」ではなく、「未来予測」なんですよね。
認知科学では「予測処理(Predictive Processing)」という考え方があります。
脳は外から入ってきた情報を受け身で処理しているんじゃなく、「次はこう来るはずだ」という予測を常に立て続けていて、実際とのズレ(予測誤差)を修正しながら世界を認識している。
音楽もまったく同じ。
だから「グルーヴはズレだ」と言われることがありますけど、僕は少し違うと思っています。
ズレそのものが気持ちいいんじゃない。
予測した位置から、ほんの少しだけ裏切られることが気持ちいい。
全部ジャストなら、脳は「予測どおりだった」で終わる。
全部後ろなら、ただ遅れて聴こえる。
全部前なら、焦っているように感じる。
でも、予測を崩壊させない程度に、数ミリ秒だけ期待を裏切る。
その瞬間、脳は「あっ」と反応して、世界をもう一度更新する。
この「予測誤差」が、小さすぎても退屈、大きすぎても混乱。
ちょうどいい誤差だけが、鳥肌になる。
だから作曲って、メロディを書く仕事でも、コードを並べる仕事でもない。
聴き手の脳内にある未来予測をデザインする仕事なんです。
サビ前で全部止めるのも、転調するのも、シンコペーションを入れるのも、4小節目だけコードを変えるのも、全部この「予測」と「更新」のためにある。
僕らが作っているのは音じゃない。
聴き手の脳が、次の一音をどんな顔で待っているか。
その期待を設計することなんですよね。
だから、最高の音楽っていうのは「予想外」なんじゃない。
「予想していたのに、予想できなかった」
その矛盾した一瞬を作ること。
そこにしか、本当のグルーヴも、感動も、生まれないんじゃないかなって思っています。