刑事の子を読んでから宮部さんがマイブームになりまして。


そんで「ブレイブ・ストーリー」読みました。あと「RPG」と「今夜は眠れない」も読んだ。

暇さえあれば本を読んでます。電車や風呂は当然として、CUBASEでオーディオファイルを書き出したり、ソフトシンセで音源読み込んでる間にも読んでるので、ちょっとアブナイ域に達してるかも。


ブレイブ~は和製ファンタジーってやつです。もしかすると児童文学なのか!?とも思うのですが、ワタシ、読書に節操が無いので割と児童文学も読んだりします。ラノベも読むし、戦史とかも読むし、無節操です。



ブレイブ・ストーリー(amazon飛びます


おだやかな生活を送っていた男の子に、突然、両親の離婚話がふりかかる。家を出た父を連れ戻し、再び平和な家族に戻りたいと強く願う少年が向かった先は、運命を変えることのできる女神の住む世界「幻界(ヴィジョン)」だった。5つの「宝玉」を手に入れ、女神のいる「運命の塔」を目指す彼を待ち受けるものとは!? トカゲ男にネコ娘、火を噴くドラゴン。コミカルなキャラクター勢とともに、次々と沸き起こるトラブルを乗り越え、少年は強くたくましくなってゆく。〈商品説明より〉


王道っぽい雰囲気が伝わってきます。実際、王道だと思うのですが、そこは流石に宮部さん。
ただの王道には収まらない。

そして子供向けの第一印象とは違って、実に重厚な作品だったりする。老若男女問わず楽しめると思います。






以下、ネタバレ




ミツルがかわいそすぎる・・・

ワタシ、ミツル好きですよ。何故、彼がワタルに負けたかといえば、「願いを叶えたい気持ちがあまりにも、あまりにも強すぎたから」と思うのです。

(当初の)ワタルの願いは"父の浮気を無かったことにする"=家族の再生。

ミツルの願いは、父親に殺された妹の復活・再生
もしかしたら"事件そのものを無かったことにする"ことでの家族の再生かもしれないけど。


ワタルもミツルも家族再生という点では同じなんだけど、ワタルの家族は生きている=女神に頼らずとも再生の可能性がある(低いけど・・・)。

けど、ミツルの場合は既に殺されてしまってるわけで、女神の力以外には方法が無い。



どちらの方がより切なる願いかといえばミツルだろう。彼は幻界に旅立つ前に追い込まれすぎていた。


そして、ミツルは切なるが故に、追い込まれていたが故に、自分の通った跡にどれだけ人が傷つこうが構わずに目的へと進む。幼い心が軋みをあげながら突き進む姿が痛ましい。

ミツルは人々を傷つけたことを気にはしていたと思う。最後の最期のお祈りの場面で、ワタルに答えた事は本当だったと思う、思いたい。





ワタルの方は、ミツルと比べれば余裕があった。それでも子供心には天地が引っくり返るような出来事だったとは思うけど。とにもかくにも明も邦子も生きている。その違いは大きい。

もし、邦子のガス自殺が成功していたなら、ワタルもミツルのように突き進んだかもしれない。
二人の立脚点が違いすぎて、同じ世界で競争させるのがツライと思うほどだ。。。


ミツルは必死すぎた故に、最後の憎しみの壁を突破することができなかった。王道としては、ワタルに勝利が微笑むのは当然としても、ミツルの心が哀れに過ぎる。現世に戻ったミツルがどう生きているのか気になります。


文庫下巻の解説で「ミツルが人として堕落」といった表現を使っているのだけど、最初から最後まで誰よりも必死だっただけだ。それを堕落なんて単語でまとめないで欲しい。




最後にひとつ気に食わなかった点を。

亘の父親・明が、ワタルに降りかかった不幸の最大の原因だと思うのです。

そりゃあ妊娠してないのに「妊娠した」と嘘を言って結婚にこぎつけた母・邦子にも咎はある。理香子さんに至っては、不当にワタルの心を傷つけた咎はあるものの、大人たちの行動の中では特に悪いことはしてないと思う。理香子は邦子の策略で不当に恋人・明を奪われたわけで、それを明と合意の上でヨリを戻したいと思うのは当然。

つまり、父・明が邦子と浮気をしていなければ何も問題は無かったのです。けど、作中では理香子が悪役扱いになってて、こればかりは納得できなかった。母・邦子が被害者として強調されてるのも納得できなかった。

悪役が必要というなら、それは明にこそ帰せられるべきだったと思う。
いや、"ワタルの幻界"なので当たり前の事と分かっちゃいるけどナ・・・。