道端にセミの屍骸が落ちていた。

"落ちていた"という表現ではなく、横たわっていたとか然るべき表現があるんじゃないかと疑問を持たないわけでもないけど、ともかく屍骸が落ちていた。



セミの寿命は短い。


地中で過ごす幼虫期が10年前後で、成虫になって地上に出てきてからは10日程の命なんだそうな。

なにかの感慨を覚えずにはいられないのだけど、僕はセミのきもちは分からないので、勝手に憐れむのも失礼かなと思っている。



人間の側では幼虫とか成虫と呼んで区別してるけど、もしかしたら、セミにとっては全然違う概念なのかもしれない。


幼虫期ってやつが、セミにとっての現世だとする。

パッと見では何をするでもなく、ひたすらに成虫になる時を待っているようだけど、実はセミの脳内では途轍もないパラダイスだったりする、かもしれない。

そこで食っちゃ寝して10年前後の時を過ごしている。そこは彼らにとって極楽、かもしれない。



ところが、時が来ればイヤでも地上に出なければならなくなる。
「くっそ、成虫になるのを止める手立てはないものか」などとセミ界では、人間界における不老不死の如く研究されている、かもしれない。


あー、いやだ、いやだ。

と思いつつ、仕方なくセミは地上に出る、のかもしれない。
セミの概念では地上は死後の世界だったりするのかも。





セミの命は儚いわねぇなどと言って、一方的に憐れみを覚えるのは傲慢かもなーと思った。

ぼくらにセミの気持ちは分からない。




不老不死と言えば、以前読んだ星新一さんの作品を思い出す。


宇宙人が地球人に不老不死の技術を教えてくれるんだけど、地球人はそれを爆発的に広めてしまった結果、過度の人口超過、食糧危機を招いてしまい、やがて宇宙人に奴隷として連れて行かれるのでした。


という感じのお話。


不老不死って、老いないし死なないけど腹は減るんだよな。
どんなに空腹でも死ねないというのは、どんな気分なんだろう。。。



そーいえば、手塚治虫さんの「火の鳥」で一人だけ永遠の命を手に入れた人間が、人類滅亡後の世界を何千年も一人で生き続けるという場面があったな。


2作品とも子供の頃に読んだんだけど、あまりにも怖くてちびりそうだったのはナイショである。