神はサイコロを振らない
 それでも君は生きてくから

 世界に対する検討能力が上がっていくと、予想外がたまに起きる。
 範囲内に人の気配があると、その男は周囲を凍てつかせた。Ⅱ型と呼ばれる陰性の脳波を出して周りをぎこちなくさせた。ちなみに清浄展開や狼転はⅠ型に属し、周囲を高揚させる。ただし、清浄展開の場合は空間の支配権を、狼転の場合は時間内、高次領域を独占するため、その影響を受けたものは威圧される場合がある。さらに余談だが、この二者がもし衝突した場合は狼転の方が権利を握る場合が多い。しかし狼転が有効な時間はだいたい一秒か二秒なので、その後は清浄展開のものとなる。そもそも清浄展開と狼転とではその用途と力の質が異なるため、武力衝突においては清浄展開が使われる場合が多い。
 話を戻すと、その男は精神疾患により自劣の底へと落ち、人とも関わることができない、という状態で「減少律」の状態へと入ろうとしていた。
 減少律によって死を遂げるとその場所は「曰く付き」となってしまう。その男を追いやっていたものは集合思念と呼ばれるものだった。集合思念に単身で向き合った結果だった。
 男は死の淵で発露に至った。そのときに放った言葉が冒頭の言葉だ。
 この言葉は「戦略」として有効となり、集合思念の一部を大きく封じるこにとなった。
 同時に銀世界が揺るぎない領地を獲得した瞬間だった。

 集合思念をまとったものは、もとは人間だ。
 再び人間に戻れる場合もあるが、戻れない場合もある。

 目には目を

 気がつくと精神病というもので、すべてまるごと括られていた。これではどこにいるかわからない。
 私は思う。
 この括りがおそらく、最も劣悪なはじまりなのだろう。




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