とうとう本日は大晦日の12月31日です。

今日くらいは作業しないで休みにしようかとも思ったのですが作業のキリが悪かったので大晦日も作業をする事にしました。

 

 

キヤノンの NEW FD 28mm F2 レンズです。

過去に私が分解しようとして難しかったために分解を断念して放棄されていたと思われるレンズです。

今回はレンズの分解&清掃というよりもフォーカスリングのガタを取るための修理となります。

ガタはヘリコイドが原因ではなくズームレンズと同じフローティングシステムのを制御している三本ピンのダンパーというかブッシュの役割をしている樹脂が劣化して粉砕されてしまったのが原因です。


 

さて、樹脂がボロボロになってしまったピンですが

若干腐蝕してしまって緑青が出てますね。

 

 

緑青と言えば CRC 3-36 です。

本当に良い仕事をしてくれます。

地金を傷めず(既に浸食されてしまった地金は除く)に綺麗に緑青を除去できます。

磨かずにこのしあがりですからね。

 

さて…。

ボロボロになってしまった樹脂の代替品をどうるのか?

またその樹脂をどうやってピンに被せて覆わせて固定するのか?

これが難問です。

幸いな事にこれと同じレンズで今回の私と同じ症状の修理をされていた先輩の記事をネットで発見して目を皿のようにして拝読&拝観させていただきました。

その記事を読ませていただくと驚いたことに「フローティングシステム」のピン部の部品構成が若干違っていました!

本当にいろんなところで更新(コストダウン)がかかっているんですねぇ。

 

 

幸いな事にピン本体の部品は共通のようでしてその先輩のアイデアを借用させていただくことにしました。

それが画像の『熱収縮チューブ』です。

これはハンダ付けや電極・端子を圧着して裸になった電線部分の短絡(ショート)防止のためにこの熱収縮チューブを被せてからヒートガン(私はドライヤーで代用)で加熱するとチューブが縮まって電線の径より細くなろうとする事で固定されるという物です。

私はカメラの露出計関係の電線のハンダ付けなんかで使う事がるのでいくつかの太さの『熱収縮チューブ』を持っています。

しかしこの先輩がどのような経緯でこの『熱収縮チューブ』に辿り着いたのか、辿り着けたのかが是非とも知りたいです。

とんでもない慧眼というか無手勝流の極致ですね。

ではこの『熱収縮チューブ』を代替品としてピンを復元していきましょう。

 

 

まずピンを治具となりそうな棒に差し込みます。ピンには内径2.0mmの穴が開いています。

私は極小のプラスドライバーを使いました。

 

 

そして4.0mmの『熱収縮チューブ』を適当な長さにカットしてピンに被せます。

 

 

そしてドヤイヤーの温風で加熱すると画像の要に縮んできます。

 

 

さらに過熱して完全に縮んだら両端をカットして出来上がりです。

 

 

しかし、ちょっと気になる問題が起きました。

ピンは画像の赤色矢印のように中心部が窪んでいます。

 

 

そのため『熱収縮チューブ』を被せて覆うと同じように中心部が少し窪んでしまいます。

この部分が窪んでいるのは良い事ではないと私は判断しました。

恐らくこの部分の樹脂の肉厚を厚くさせたくて窪ませているのだと思います。

そしてフローティングシステムの構造上この部分に荷重や負荷が一番かかるのではないかと思われるからです。

 

 

そこで今度は3.0mmの『熱収縮チューブ』の登場です。

 

 

同じ様に加熱してチューブを収縮させたら窪みの部分にだけチューブを覆わせて、それ以外はカットします。

 

 

それから4.0mmの『熱収縮チューブ』を被せて加熱するとあの窪みは無くなりました!

これで問題無いでしょう。あと二個のピンも同じ方法で『熱収縮チューブ』で覆います。

外径は4.0mmジャストとなりました。

 

 

出来上がったピンはこの穴に入らなければなりません。

また、隙間があり過ぎてもいけない。というかできれば無いに越したことはありません。

運よく出来上がったピンはピッタリとサイズが一致してくれて穴に入ってくれました。

 

 

二個同時に作業して作業効率を上げます。

 

 

これでピンが出来上がったわけですが実はこのピンには向きがあります。

赤色矢印と黄色矢印でピンの端部の形状が違います。

 

 

赤色矢印側だとピンをこてするネジの頭がピッタリと収まります。

 

 

黄色矢印側だとネジの頭が飛び出してしまいます。

ですから取付の際には向きが有る事を注意しなければなりません。

 

これで最大の難問だったピンの油脂の問題は解決しました。

この記事を読んでくださっている方の中には『そんな付け焼刃の様な修理はインチキだ!そんな樹脂を使って耐久性は大丈夫なのか?そんなので一体何年持つと云うんだ?』

と感じる方がいらっしゃると思います。

全くその通りだと私も思います。

でもね。…

『製造元のキャノンが製作した当時のピンでさえ結局は経年劣化して破砕してしまっているではないか!つまりこのピン(部品)はキャノン自ら将来劣化破砕してしまう事前提で取り付けているのではないか』

とも言えますよね。

『製造元が将来経年劣化で破砕する事が解っていて使われた部品ならば、破砕したら(純正品が無いので)代替品で修理すれば良い。それがまた経年劣化で破砕したら再び代替品で修理すれば良い』

という事だと私は思います。

自動車のクラッチという部品はその特性上シューが摩耗する事が解っていて使用されています。

そして規定量以上摩耗したら新品に交換します。部品が無ければシューを貼り替えて再使用して走行します。

それを製造時の部品じゃなくなるからという理由でクラッチを交換せずに走らずに保管するという人はかなり少ないと思います。

レンズだって飾るだけじゃなくて実際に撮影してみてこそナンボの存在だと私は思いますので今回のピンの修復方法は良くない事だとは思っていません。

延命修理だと思います。

 

丁度キリが良いので本日はここまでとさせていただきます。