スズキGSF1200のトルクへ極振りされたエンジンについてです。

このエンジンについてネットで検索して調べてみてもなかなか良い情報がみつかりません。

ということはそれだけこのエンジンは人気が無いのでしょうかねぇ⤵⤵⤵

 

 

口巷ではGSFのエンジンはGSX-Rのエンジンのデチューン版、つまり下位互換と扱われている感じがします。

 

前回でGSFのエンジンはGSX-Rのエンジンから馬力とトルクがそれぞれ

 

最高出力 155ps/10,000rpm   から  最高出力97ps/8,500 rpm  へ  37.5%

最大トルク 11.7kg/9,000rpm  から  最大トルク9.8kg/4,000rpm へ 16.2%

 

ダウンしています。

これを単純に見ると『あぁ、デチューンだな』と思えるんですが、見方を変えて考えてみると、『でも最高出力は37.5%も下がったのにトルクは半分以下の16.2%しか下がっていないんだ?』とも考えられます。

そこで今度は最大トルク発生回転数の差を見てみましょう。

 

GSX-R  9,000rpm    から   GSF   4,000rpm   

 へとなんと  55.5%  もダウンしている、つまり55.5%もなんと半分以下に回転数が下がっていることになります。

それなのにトルクはたったの16.2%しか下がっていないのですからこれは考え方によってはGSFのエンジンはデチューンではなく実は極低速トルク型へと『極振』りしているのではないでしょうか?(若しくは元々の素性が低速トルク型だったのかも)

これは私もこの記事を書いてみるまで気づきませんでした!

エンジンは流体力学も含めた様々なファクター・要素が絡み合って数値が出てきますからこんなに単純な数字の比較で答えが出るとは思えませんが、

一応一つの考え方というか数値として見ても良いのかもしれません。

 

 

閑話休題

 

 

今回このGSF1200をヤフオクに代理出品するにあたり、より詳細な商品説明を記載するためにオーナーさんに本車輌の長所や短所をインタビューしました。

 

その時にオーナーさんが非常に面白いというか、私には非常に興味深いまるでスクープのような話をしてくれました。

 

それは…。

オーナーさんは当時かなり注目されていたKensoさんの『バクダンキット』を装着しようと考えKensoさんに直接お話を聞きに伺ったそうです。

すると店長らしき人がご丁寧に対応してくれたそうです。

すると店長さんがオーナーさんに『GSFにはマフラーなに付けるの?ノーマルのまま?』と聞かれたそうです。

なのでオーナーさんが『今のところSTRIKERのフルエキゾーストを付けようと思っています』と答えると

と店長さんが…『クラッチが滑っちゃうよぉ~!!!』と笑いながらアドバイスしてくれたそうです。

私はてっきりバクダンキットを装着するとパワーが出てクラッチが滑るという意味だと思っていたのですが、そうではなくてただマフラーを交換しただけで本当に滑ってしまってまともに走れなくなってしまったんだそうです!

どうしてそんなバイクが市販できたんでしょうかねぇ。

 

 

閑話休題

 

 

結局オーナーさんはKensoのバクダンキットを購入して装着したのですが、彼のGSFの面倒を見てくれていたのが昔東京の環状八号線にあった『ガゼル』というバイク屋でチーフメカニックだった人だったので彼は同業者同士の横のつながりに顔が広くsbsスズキの店長さんよりGSF1200のクラッチトラブル対策として現行販売車よりクラッチフリクションプレートとクラッチ板を1セット増やした大容量タイプに変更されているとの情報を入手してくれたそうです。なのでオーナーさんは画像のパーツリスト一番下にあるクラッチレリーズシリンダー以外の全てを発注して交換したそうです。

部品代全部で全部で15万円以上かかったそうです。

『いやぁ~、あれは高かった高くつきましたねぇ高すぎましたねぇ~』との事でした。

が、オーナさんの憂鬱はここで終わりませんでした⤵⤵⤵

一式交換してからしばらくしてから再びクラッチトラブルが発生してしまいました。

 
 
今度は画像の矢印4番の部品
 
 
クラッチスリーブハブがエンジンのトルクに耐えられなくなり、パキパキと何分割かに割れてしまったそうです!!!
そのため再びsbsスズキの店長さんに尋ねるとやはりまたもや材質を変更した対策部品に変更されていたそうです。
結局このクラッチハブも交換したそうです。
『結局なんだかんだで部品代合計で合計で21万円を超えましたよ』
と、当時を思い出しながらオーナーの眼は遠くを向いていましたが彼の眼のピントは合っていなかったでしたね。
 
以上の話は私が個人的に思うに非常に興味深いというかかなり珍しい話というか事象だと思います。
私は1959年から1969年にホンダが生産した全ての製品を愛するマニア、エンスージアストです。
その1960年代のホンダの場合ですと極初期型は試作品の雰囲気が濃くて過剰品質気味な傾向にあります。
その後生産を継続しながら設計&変更を繰り返しながらコストダウンを行っていきました。
これはホンダという企業だけではなく、カメラの製造メーカのキャノンなんかも似た手法を行っていたので当時の日本の名だたるメーカーは同じ手法を用いていたと思います。
しかしGSF1200が生産された1990年代であればメーカー(マニュファクチュアラー = 生産者)は既に膨大なデータとノウハウを持っているはずですから後期型になるほど品質を上げてしまい利益率を下げるなんて本末転倒な事はあってはならない、やってはならない事です。
ましてや『コストカットの鬼』と噂されるスズキがそんな事を許すとは思えないんですよねぇ。
という事でその後いろいろと調べてみたのですが…。
GSX-R1100のエンジンを直接・直にGSF用にデチューンしたのではなくその前に輸出モデルのGSX1100Gというシャフトドライブのツアラー用のエンジンというのがワンクッション入っていたようです。それを更にブラッシュアップして低速トルク型に『極振り』してGSFに搭載したみたいです。
それでここらは私の推測なのですがクラッチ周りはシャフトドライブのGSX1100Gの物はが使えないでしょうからコストダウンの意味からもGSX-R1100をポン付けで流用したのかもしれません。
当時のスズキのフラッグシップマシンで155馬力も出ているGSX-Rのクラッチ周りなら無問題と考えたのかもしれませんね。
いかし『極振り』の潜在能力がそれを上回ってしまい破断を繰り返したのではないかというのが私の推測です。
百戦錬磨の技術者も見抜けなかったのでしょうか。
 
結局GSFシリーズは2015年まで存在しましたが『元祖極振りの究極アンバランスGSF1200』であるGV75A/Bは1998年までの3年しか生産されませんでした。
 
高校生時代に我が母校の自動車整備の座学担当の先生が授業中に呟きました。
『馬力なんてのは回転数を限りなく上昇させることができれば理論上無限に出力を上げることが出来るんだよ。。。』
 
この師匠の言葉を私が憧れた究極のアンバランス極振りマシンGSF1200に捧げると共に、世のトルクの理(ことわり)を解(理解)する漢達(おとこたち)と共有したい。
 
こんなバイクは二度と現れないのではないのではないでしょうか。