2020年1月からテレビにて放映された『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』というちょっと変わった、だけど何か期待できそうなタイトルのアニメに出会い見てしまった事で私は『極振り』という言葉の存在を知りました。

ストーリーは主人公がメイプルという名で初めてゲームに参加する際の初期設定で「子供の頃に受けた予防接種の注射が痛くて大泣きしたと」という経験から痛いのは嫌だからとステータスポイントの全てを『防御力に一点特化』という極振りをしてしまいます。

しかし、ゲーム初心者のビギナーズラックなのか持ち前の天真爛漫な性格が幸いしたのか偶然にも助けられて次から次へと困難をクリアして最終的には人外のレベルまで成長してしまうというかなりハチャメチャで文字通り極振りで究極のアンバランスな感じの物語なんです。

あまりにもハチャメチャなストーリーなため斜め上感が強く毎回驚かされ、笑わされ、ハラハラさせられるけど最後には炭酸の効いた清涼飲料を飲み干したようにすっきりとした気分になるんです。(私の場合)

『そんな無茶苦茶な極振りなんかがまかり通るのはアニメの世界だけだよ。現実の世界ではそんなの無理だから。あり得ないから!』との意見が聞こえてきそうですが案外そうでもないんですよ。

存在するんですよ現実の世界にも究極のアンバランスが。

あまりにも純粋にトルクに拘って極振りして究極とも云えるアンバランスな仕様に仕上がってしまったバイクが。。。

それがスズキのGSF1200です。

 

 

トルクという名の世の理(ことわり)を解する漢(おとこ)なら一度はその琴線に触れる触れたであろう唯一無二の存在、それがSUZUKI GSF1200です。

 

 

400cc並(並じゃなくそのもの)のフレームに1200ccの巨大なエンジンを搭載したショートホイールベースでグラマラスなフォルムは古の我らが帝国海軍軍艦『大和』を(私には)彷彿させます。

その短いフレームが災い(むしろ歓迎されている向きもある)してそのエンジンのトルクと相まって気軽にウイリーが出来てしまうというメイプルのような化け物マシンに仕上がってしまったそうです。

この結果あくまで紳士な普通のライダーには乗って運転していると恐怖を感じてしまい人によってはまだ新古車の状態なのに手放してしまわれるような車輛でもあったそうです。

 

カワサキZ750Twin,Z750ツイン | 空冷 カワサキ Z1,Z2,Z1000R,のカスタム@京都コンピュータ学院自動車制御学科

 

実はGSF1200が登場する約19年前の1976年にもトルクに極振りしたアンバランスな化け物バイクが存在しました。

カワサキのZ750TWINです。

私の想像ではカワサキ・メグロの銘車W1&W3の後継として開発されたのではないかと考えているのですが。

それはさておき、このバイクは

55馬力を7,000回転

6.0kg-mの最大トルクをなんとたったの3,000回転で発生したそうです。

 

ここで私の時を43年巻き戻して高校一年生で16歳の1981年に遡ります。

休み時間の時に友人が話しかけてきました。

『あのさ、変なバイクを見つけたんだよ。750㏄なのに55馬力しか出ていないのにさ 時速55km/hから120km/hまでの追い越し加速だけは日本車トップなんだよ。』

なにそれ?と私が相槌を返すと友人は

『しかもそのバイク2気筒なんだよ。』

時は4気筒が隆盛の時代に2気筒と言うもんだから天邪鬼の私は私は益々興味を持って友人に更なる詳細を教えてもらいました。

そしてこの時に加速=トルク、ロングストローク=高トルク型エンジン

この時にトルク型エンジンはビッグツイン系がふさわしいと朧気ながらに頭にインプットされたのでした。

 

GSF1200

 

それから現代へ向けて下る事14年後の1995年

スズキが発売したGSF1200の諸元表を見て私は見事に度肝を抜かれました!!!

 

  寸法(mm) 全長 2,105
全幅 785
全高 1,095
軸間距離(mm) 1,435
車両重量(kg) 208(乾燥)
  エンジン種類 油冷4サイクル直列4気筒 DOHC4バルブ
総排気量(cc) 1,156
ボア(mm)×ストローク(mm) 79×59
最高出力 97ps/8500rpm
最大トルク 9.8kgm/4000rpm
変速機形式 常時噛合式5段リターン
タイヤサイズ(前) 120/70ZR17
タイヤサイズ(後) 180/55ZR17
価格(円) 798,000

 

 

それまでの私は4気筒のエンジンは高回転向きのエンジンだと思っていたのですが、GSF1200というバイクが私の固定観念を見事に破壊してくれたのです。

 

そして今回改めてというか私にとって初めてGSF1200の元・ベースとなったであろう1993年のGSX-R1100と比較するとそれなりに面白い部分を発見できました。

 

 

 

GSX-R1100

 

 

  寸法(mm) 全長 2,130
全幅 755
全高 1,190
軸間距離(mm) 1,485
車両重量(kg) 231(乾燥)
     
総排気量(cc) 1,074
ボア(mm)×ストローク(mm) 75.5×60
最高出力 155ps/10,000rpm
最大トルク 11.7kgm/9,000rpm
   
タイヤサイズ(前) 120/70ZR17
タイヤサイズ(後) 180/55ZR17

 


まず馬力が元の155ps/10,000rpm  から 62.5% の 97ps/8,500rpm 

 

 
トルクが   11.7kg/ 9,000rpm     から  83.0% の   9.8kg/4,000rpm  へ
 
それぞれ下がっています。
 
これを見る限り『なるほど!GSF1200のエンジンはGSX-R1100のエンジンをボアアップしたデチューン版だな』と思いますよね。
事実私もこのブログの記事を書くまでそう思っていました。
 
しかしですね ボア X ストロークに目を向けてみると、なんと!たった1.0mmとはいえGSF1200方がストロークが短いんですよ!
?????
なぜでしょうか?
正確な事は判りませんが、私が想像するには……。
燃焼… 燃焼効率が関係しているのかも。
おそらく吸排気バルブの大きさやリフト量更には圧縮比等がGSX-Rと違ってくれば燃焼室内で起きるタンブルやスワールといった気流の流れは変わってくるのではないでしょうか。
燃焼室というのはピストン頂部つまりピストンヘッドの表面積とシリンダーヘッドの燃焼室の表面積によって囲まれた空間の事を言います。
ですからより良く燃える燃焼室形状を模索した結果79mmのボアが一番トルクを発生したのではないでしょうか。
その辺を考えていくというか想像していくとGSFのエンジンはGSX-Rのデチューン版のエンジンという事では片づけられないような気がするのですが。。。
 
(続く)