キヤノンのニューキャノネットQL17-Lです。

 

 

レンジファインダーの無限遠のピントについては今までアンタッチャブルとしていました。

ですが今回は沼に嵌ってしまったり度重なるケアレスミスで時間を浪費してしまったためこの先更に時間ががかかっても構わん!

との開き直りで無限遠のピントを確認することにしました。

結果は想像の通り今一つズレていました。

まぁこれらのレンジファインダーカメラも大衆向けの量産品ですからコストを考えれば当然と言えば当然なんですが…。

ただどのメーカのどんな機種でも無限遠の位置は大体同じように本来の無限遠よりも手前(近距離)にセットされているような感じがします。

ひょっとするとメーカーは何らかの理由があってわざとこの位置にセットしているのではないでしょうか。

 

 

そう思いはするも無限遠のピントの再調整を行いました。

まずフォーカスリングとヘリコイドを連結している三カ所のイモネジを緩めます。

 

 

ヘリコイドに1.0mmのドリル刃を使ってピンバイスに浅い穴を掘ります。

コレで爪が引っ掛かりやすいようにしてヘリコイドを直接回転させられ量にします。

 

 

ヘリコイドの移動距離が今までに較べ以上に短いというか動きが非常に渋いのでフォーカスリング周辺を改めて精査すると、もう一本プラスネジがヘリコイドとフォーカスリングを連結していたのを発見したので緩めます。

画像は既に目一杯迄左に回転させた後です。これ以上はヘリコイドリングに当たってしまい左に回転させられません。

プラスネジの右側に元の位置を示す緑の緩み止めの接着剤の痕が見られます。

 

 

結果画像の様な状態まで追い込むことが出来まし板が、構造上これ以上無限遠のピントを追い込むことが出来ませんでした。

それでも再調整前よりは大分良くなったと思います。

ちょっと残念ですねぇ。

今回キチッと追い込んでからテスト撮影をしてその結果から今後の方針の参考にしたかったのですが…。

残念です。

 

 

露出計関係の組上げがようやく完成し、峠を完全に乗り越えられました。

泥沼からの完全脱却です。

前板を取付け革を貼り直しました。

 

 

次にファインダーの清掃です。

画像斜め45度に設置されているガラスは片面が蒸着式のハーフミラーになっているため非常にデリケートです。

軽~く乾拭きする程度に収めておいた方が無難です。

 

 

ここでようやくレンジファインダーの二重画像の一致(ズレ)についてです。

無限遠の位置をずらした結果やはり二重画像もズレてしまいました。

左右、上下ともにズレています。

左右の調整は中心のファインダー下にある銀色のマイナスネジで調整できます。

 

 

上下のズレはこのちょっと異様に飛び出した長めのイモネジで調整していきます。

現在またもや夜間のため夜の灯を目印にして二重画像一致の調整をしたのですが、

今一つ??? な部分があるため、明日の日中に再び詳細に調整してみます。

 

という事で翌日の日中に再び二重画像の一致を確認してみました。

結果はフォーカスリングを近距離から徐々に無限遠に向けて回転させていくと…。

二重画像が徐々に接近していきまして10m位で一瞬合致してからその後二重画像が行き過ぎて再び離れて行きます。そして最後にフォーカスリングが『ゴリッ』とした重みを伴いながら終点まで回転して再び二重画像が一致するというとても不自然な動きをしました。

いや~、流石にその動きは違うだろう⤵⤵⤵

更に試しにと10m辺りと思われる場所ににピントを合わせてみると...、フォーカスリングの方は3m辺りを指していました。

不審に思って部品取り機で同じ場所にピントを合わせてみるとフォーカスリングは10m前後を指していました。

明らかにおかしいです。

(たとえジャンクの部品取り機でも同じ個体があればこの様な比較テストができるのでとても便利です。)

 

 

これは流石に無限遠のピントの位置を限界まで詰め過ぎたのだろうと思いまして徐々に戻していきました。

その際に部品取り機のフォーカスリングが指した距離と同じになるように調整しました。

その結果、画像の位置に落ち着きました。

ネジの締め付け痕を見ていただければ解ると思いますが、オリジナルの位置と前回調整した位置の中間点くらいになりました。

 

 

その結果無限遠のピントはこの様になってしまいました。

 

 

こちらが前回ピントを追い込んだ結果ですから大分甘くなってしまいましたね。

 

 

まぁオリジナルの状態よりは少し良くなっていると思いますが…。

 

以上の結果を踏まえると『無限遠のピントの正確さは果たして本当に必要なのだろうか?』という疑問が私の頭の中によぎってきます。

レンジファインダーカメラの場合、いくらレンズだけのピントを調整してもレンジファインダーの二重画像の一致と正しく連動しなければ意味が無いだろうとは思っていました。その辺の相関関係に対する正しいと思われる解答を私には出せなかったので、今までレンジファインダーカメラの無限遠のピントの再調整は触れずに避けていたのです。

そもそも超一流の技術力を持つ各メーカーが『これでヨシ!』とセッティングしているわけですから私には考えも及ばない理由があるのではないでしょうか。

しかし…。

であれば一眼レフカメラの場合はなぜあんなにも無限遠のピントに拘るのでしょうか?

そしてナゼあれほど正確・精緻なのでしょうか?

到底私には考えが及びません…。

しかたがないので取り敢えずは今回のテスト撮影の結果を待ちましょう。

 

 

再調整が終わったので

再び前板を取付け革を貼りました。

もうこれ以上この個体の同じ部分を分解するつもりはありません。

それにしてもキャノネットの革の貼り付けはとてもやり易いですね。

 

 

ファインダーも清掃及び二重画像の調整が完了したので蓋をします。

 

 

そして…。

モルトの貼り替えです。

加水分解したモルトのカスをラッカーシンナーを使って除去します。

昔若い頃に先輩方から『仕事は段取り八部だ!』と教わりましたがまさにその通りです。

いかにモルトのカスを綺麗に除去できるかが仕上がりに影響します。

 


 

今回は交換の必要があったため裏蓋をボディから取り外していたので非常に作業がやり易かったです。

 

 

裏蓋をボディに取り付けます。

ここの部分の遮光にはモルトではなく植毛紙が使われてますのでこのまま再使用できます。

 

 

Quick Loader (QL) システムのベロ?の様な部分を裏蓋に接合します。

腕時計のバンドの取り付け部に似ています。

 

 

裏蓋をボディに3本のネジで取り付けます。

 

 

革を貼り付けます。

それにしてもニューキャノネットの革は貼り付け易いです。

 

 

軍艦を3本のネジで取り付けます が…。

 

 

フィルムカウンターが動いていていませんでした。

バネが外れていて爪の張力が掛かっていませんでした。

私は毎回この部分の動作確認を見落としてしまいます。

 

 

さらフィルムカウンターの数字がインジケーターの中心に来るように調整します。

 

 

フィルム巻き戻しレバーを取付けます。

 

 

フィルム巻上げレバーを取付けます。

 

 

完成です。

今回はえ~~ら~い~時間が掛かってしまいした⤵⤵⤵

機械物をいじっていると普段は全く問題ない微細な作業なのにひょんなことからミスをしてしまい、それをきっかけとしてその後次々とドミノ倒しのようにミス又はトラブルが発生し泥沼に嵌ってしまう事がたまにあります。

当に負のスパイラルに飲み込まれるような現象です。

今回がその典型例といえるでしょう。

 

まぁとにかく

コレでようやくテスト撮影ができる…  訳にはいきません。

まだレンズ後玉の問題が残っています。

レンズを青色LED光に晒すと見える謎のクモリの対処を考えなければなりません…。

もう一台部品取り機を安く入手できないかと悩んでいます。