キヤノンのデミEE17です。

露出計の動きがおかしいということでアメリカから返品されて来ました。

今回はこれを再び分解して原因を究明し修理していきます。

 

 

でもその前に前回に別のデミEE17で

『マニュアルでBにした状態で絞りをF1.7にしてもF8程度の開度になってしまう。またマニュアルで絞りをF8にした時、最も絞られた状態になる。』との症状を指摘されたので修理を受け付けましたが全く問題なく正常に作動していました。

そこで購入者様に『より詳細な症状の説明をいただきたい』旨のメールを送ると

『シャッター速度をBにした状態でシャッターボタンを押したままを、絞りが見える状態で絞りの確認を行っていた際にautoからマニュアル側になると上記のような異常となる。』

との返事をいただきました。

なるほど!

そういうことか!

ようやく事の顛末が理解できました。

これは他にも今回の購入者様と同じような誤解(勘違い)をしている方がいらっしゃるかもしれないと思い注意喚起の意味も含めて今回修理するデミEE17を使って説明していきたいと思います。

 

結論から書いてしまうと

『シャッター速度をBにした状態でシャッターを切ったまま、絞りが見える状態で絞りの確認を行っていた際にAUTOからマニュアル側になると上記のような異常となる。』というような操作は絶対行ってはいけない。

です。

私は過去に同じ操作をして絞り羽根を破壊してしまい修理不能にさせた事があります。

ですから私はこの様な操作をお勧めしません。

 

 

デミEE17の絞りリングにはこの様にAUTOからF1.7まで連続に表記されています。

このためAUTOとマニュアル絞り羽根の制御機構が同じように思いがちです。

ですが実際はAUTOとマニュアルの絞り羽根の制御機構は全くの別物です。

 

 

まずマニュアル状態の時の絞り羽根の開閉は絞りリングに繋がるバーが赤色→の方向に回転して絞り羽根を制御します。

そして黄色→のレバーが下がっていて水色→のピンをロックしています。

 

 

絞りリングをAUTOの位置にするとバーが黄色→のレバーの爪に当たりレバーを押し上げます。

この状態でシャッターボタンを押し込んでいくと水色→のピンはロックが解除されて黄色→のレバーの下を進みます。

そう、AUTOの時はこの水色→のピンが絞り羽根を制御するのです。

マニュアル時とは全く別の方法で絞り羽根を制御します。

 

 

電池が入っていない時は最大この位置まで水色→のピンが進み絞り羽根は開放=F1.7となります。

この水色→のピンは露出計と連動しており露出計の針をカニばさみのようなレバーが針を挟み込む事で絞り値を変化させます。

以上の構造のため

『AUTOの状態でシャッター速度をBにした状態でシャッターを押したままにしてシャッター開放状態から絞りリングをマニュアルに回転させてしまうと、AUTOの作動を完了させない状態でマニュアル制御に切り換えた事になり二重制御となってしまい最悪の場合は絞り羽根が破壊されてしまいます。』

 

絞り羽根の動作確認をしたい場合はB=開放にして動作を確認するのではなく、シャッターを閉じた状態でフイルム室の蓋を開けてフィルム室側から絞り羽根の動作を見てください。

 

とここまで書いてきましたが実験のために何度が上記の操作をしていたらやはり絞り羽根の動きがおかしくなり最終的には絞り羽根がまともに開閉しなくなってしまいました。
 
 
マニュアルF16の時の絞り羽根の状態です。
 
 
マニュアルF1.7(開放)の時の絞り羽根の状態です。
この様にまともに動作しなくなってしまいました。
はからずも実証してしまう結果となってしまいました。
こうなると絞り羽根まで分解して各絞り羽根の組合わせというか重なり合わせをやり直す必要がありそうです。
そこまで手間をかけるなら前板ごとシャッターユニット全て交換した方がじかんの節約になりそうです。