前回ヤシカのLynx-14のテスト撮影をした結果の画像を確認していた時に『あれ、コレって無限遠のピントがズレてるんじゃないの?』と思われる画像がありました。
通常というよりか私個人としてはレンジファインダーカメラのマニュアルフォーカスならフォーカスリングが無限遠∞の位置で二重画像が合っていれば無限遠のピントは合っていると考えていました。
しかしゾーンフォーカスのカメラであれだけ沢山無限遠のピントが合っていない個体が出てくるとイマイチ怪しく感じるようになりました。
つまりレンジファインダーの二重画像が合っていてもレンズ本体の無限遠のピントが合っているとは限らないという可能性があるかもしれません。
ということでレンジファインダーカメラの無限遠のピントを実際に確認してみましょう。
という事で今回の実験に使用するカメラがキャノンのニューキャノネットQL19 GIIIです。
このカメラを選んだ理由はただ単に机の下に転がっていて手に届く範囲にあったからです。
ケースの形状からキャノネットだとは解っていましたがまさかGIIIだとは思いませんでした。
この個体の状態をチェックしてみると驚いたことにバテッリーチェックと露出計が動きました。露出計の精度も合っているようです。
ただフィルムレバーを巻き上げてフィルチャージをしてもシャッターが切れませんでした。
試しにAUTOからマニュアルに設定を変えたらシャッターが切れました!
シャッター羽根も絞り羽根も動作は良好でした。
何故?ナゼ?AUTOだとシャッターが切れないの?と思っていたら実は『AUTOで露出がオーバー又はアンダーに振り切れてしまうとフイルム節約のためにシャッターにロックが掛かる』機構が付いているんです。流石キャノンですね。
という事で不具合の箇所は
① ファインダー内が汚れていて見えずらい。
② レンズの前玉内部にカビがある。
③ モルトを新しい物に貼り替える
といった程度で非常に程度が良いです。
まずは前玉レンズのカビ取りです。
銀色の薄いリングナットをカニ目スパナで外します。
露出計の光センサ(cds素子)の光量を変化・調節するリングを外します。
このリングはシャッタスピードリングと連動しています。
前玉を外すためにカニ目スパナで緩めたのですが…。
一番手前のリングが外れただけでした。
cds素子を移動させて矢印の狭い溝の下にあるナットにカニ目スパナを掛けて緩めます。
昭和47(1972)年10月と読める印字があります。ニューキャノネット GIIIは70年代のカメラになるんですね。
前玉が外れました。
絞り羽根とシャッター羽根は油染みは全く無く非常に綺麗です。
クリーニング液を使って清掃したらカビも取れてとても綺麗になりました。
素晴らしいコンディションです。
ここまでクリアなレンズには滅多に出会う事がありません。
後玉も同様に素晴らしいコンディションです。
レンズのコンディションがあまりにも良かったので念のため電池室の状態もチェックしてみました。
素晴らしいです!電極もハンダ付け部も電線も全く腐食していません。
非常に素性の良い『当たり』の個体ですね。
さて、前玉を取り付けたのでこの状態で無限遠のピントを測ります。
ピントグラスを貼り付けて
こんな感じです。
まぁ、大体O.K.と言えるレベルですね。
もう少し追い込めそうですけどね。
今回は無限遠の再調整はしないでこのままにしておきます。
ではヤシカのLynx-14の無限遠のピントはどうだったのでしょか。
測ってみました。
ドンピシャですね。
全く手を加える必要がありません。
以上の結果から『マニュアルフォーカスのレンジファインダーカメラの無限遠のピントは合っている』という判断ができると思います。
後玉も外してクリーニング液で清掃します。
ついでにシャッター羽根と絞り羽根もベンジンで清掃しておきます。
cdsの取付穴にヒビが入っていました。
プラスチック製なので経年劣化によるひび割れは仕方がない出しょう。
ネジで強く締め付けることができないので緩み止めの接着剤を塗布しておきます。
次にファインダー内の清掃を行います。
ゴムでシャッターレバーを固定しているリングナットを外します。
フィルム巻上げレバーを外します。
左右と後に1個ずつあるネジを外して軍艦を外します。
ファインダーの上にある黒いセルロイド製のような蓋を外してファインダー内の各レンズやミラーをクリーニング液で清掃します。
メチャクチャ綺麗になりました!
とても気持ちがイイです。
と、ココでフォーカスリングの奥を清掃しようとしたら気になるネジを発見!
これはフォーカスリングとヘリコイドを連結固定するネジのはずです。
デミEE17はこのネジがフォーカスリングの三カ所に付いていました。
これだと鏡胴内を分解せずに前板を外すだけで無限遠のピントの最調整が出来るかもしれません
という事で底蓋を外して確認すると同じネジ(赤矢印)がもう1個出てきました。
更にもっと興味をそそられるネジ(黄矢印)を発見!
これこそが無限遠調整のためのロックネジではないでしょうか?
フォーカスリングを連結固定するネジがもう1カ所あるのではないかと思い革を剥がして前板を外してみたのですが連結固定するネジは先の2カ所だけでした。
余計な作業を増やしてしまいましただけでした。
でもこれで無限遠のピントの再調整が出来る可能性が出てきました。
本日はここまでとなります。