ヤシカのLynx-14です。

 

 

ひたすらに大きいレンズです。

この大きさのおかげでF値1.4という固定レンズ式のレンジファインダーカメラの中では最も明るいモデルとなっています。

コンセプトは同社のハーフサイズカメラ「ハーフ14」に似ていますが、こちらはマニュアルフォーカスですから「ハーフ14」のようなオーバースペック感はありませんが

この巨大なレンズのおかげで総重量が重たくなり重量バランスがレンズ側に偏った

『フロントヘビー』になっております。

私はこのカメラを目玉のオヤジと呼んでいます。

 

 

画像のレンズ左下にあるボタンを押し続けることで露出計にスイッチが入ります。

 

 

軍艦上部に露出計のインジケーターがあります。

このインジケータの指針の動きはミラーを介してファインダー内に反映されるのでファインダーから目を離さずに露出調整ができるようになっているのが本機の優れた部分です。

 

本機は以前に分解・修理をしているのですが、露出計の動作が非常に不安定であり時によってはインジケーターの針が全く動かなくなったりします。

組立直後は正常に動作していたのですが…。

ということで再び分解をして原因を探ります。

やはりヤシカは一筋縄ではいきませんねぇ。

 

 

インジケーターの針が思いっ切りOVERに振り切れる状態になるように絞りを開放にしてからゆっくり絞り込んでいくと普通ならば絞り込みに比例して段々と針がUNDERに振れていくのですが、この個体は絞り込み当初は全く反応しないのですがある位置まで絞り込むと「ピコン」といった感じで一気に反応してUNDERに振れる動きをします。

こういった場合はインジケータの針がインジケータの枠またはその周辺の何処かに接触していてスムースに動かないというケースがよくあるのでまずは軍艦を外してチェックします。

しかしインジケーターの針の周囲には充分なすき間がありどこにも接触していません。

 

 

次に考えられる原因としてインジケーターの針が取り付けられている露出計のコイルの中心軸の動きが渋くなっているケースがあります。

コイルの中心軸はガタつきを押さえるために上下にある軸受にある程度のプリロード(負荷・荷重)がかけられています。

このプリロードの荷重が大きすぎるとインジケーターの針がスムースに動かなくなります。

工場出荷時には適切なプリロード設定であっても50年後の現在に至っては経年劣化などにより不適切になっている場合があります。

そういう時は画像の赤矢印の位置にあるネジを緩めたり締め込んだりしてプリロードの調整ができます。

普通はこのコイルの中心に調整用のネジが一個あるだけなんですが…。

 

 

このLynx-14には黄色→のプリロード調整用のネジの外周にナットが取り付いています。

このナットは直上にある黒い電線(コイルへの給電用)の取付のために存在しているようです。

分解当初はプリロード用のネジと外周のナットのマイナスの溝が一直線に並んでおり一体品のように見えましたのでナットと一体で緩めていました。

どうやらそれが悪かったようでコイル軸上下のプリロードを緩めるだけでなくコイル軸左右のガタまで大きくなってしまったようです。

今回はまず、一体になったナットごとキチンと締め込んでナットを取り付けた後に

ラッカーシンナーをプリロード調整のネジに染み込ませてプリロード調整のネジ単独で緩むようにしました。

それからインジケーターの針が動きやすい最適なプリロードに設定したら問題は解決してインジケーターの針がスムースに動くようになりました。

 

 

露出計の動作チェックをしていた際にピント合わせ用の二重画像の上下がズレていたので再調整しました。

なんか最近こればっかし対処しているような気がします。

二重画像は前回の分解時に調整したはずなんですがねぇ…。

lLynx14はレンジファインダーのミラーの後ろにあるこのネジで調整できます。

意外と良い造りをしています。

 

今回の不具合の原因は思ったよりも簡単でした。

前回の分解・組立時に行ったプリロード調整に問題があったわけで私のケアレスミスが原因でした。

別の原因として他の部分の接触不良&通電不良も疑っていました。

Lynx-14はシャッターリングと絞りリングの内側に抵抗となるカーボンのようなものが塗布されていてブラシのような接点を介して通電されておりシャッターリングと絞りリングがそれぞれ回転する事によって抵抗に通電される距離が変わることによって抵抗値が変わる(可変抵抗)ことによって電圧が変わることで露出計が動くという非常に凝った造りになっています。

この抵抗が分解時に擦れてしまったり剥離してしまうとインジケーターの針がまともに動かなくなる可能性があるのです。

コレが原因だと私には修理する事が出来ません。

最悪のケースですね。

 

今回は大事には至らなかったものの、もう一つ別の問題を発見しました。

それは露出計の値が+2オーバーという事です。

ですがコレはカメラ側のASAの設定を2段階落とせば対処できます。

ASA400のフィルムを使用する時はASA100に設定

ASA100のフィルムを使用する時はASA25に設定すれば良いわけです。

組立完了後にこの方法でテスト撮影を行います。