キャノンの7Sの続きです。

 

 

接着剤の説明書によると、気温20度の状態で接着剤塗布後およそ10時間で実用強度に硬化しおよそ24時間で最終的な強度に硬化するそうです。

接着剤を塗布後20時間以上経過しているので強度的にはもう良いだろうと判断して

最終的な二重画像をチェックしました。

 

結果はズレる事無く上下左右ともバッチリと合致していました!

ファインダーから見える景色は調整前とは見違えるようなスッキリ感が出ました。

 

 

念のためもう一本別のレンズでも試してみました。

先程はニコンの50mmでしたが今度はキャノンの35mmです。

こちらも二重画像はピタリと一致しました。

これで二重画像の調整は完了です。

 

 

話がズレてしまいますが、

二重画像の調整の際に使ったこのNippon Kogaku Tokyo NIKKOR-S・C 5cm F1.5というレンズは1949年におよそ800本ほどしか生産されなかったとても貴重なレンズでしてその後の5cm F1.4とは全く違うレンズです。

このレンズなんですが操作していて不思議に思う事がありました。

フォーカスリングを最短~∞mまで回すと最短距離から途中半分ぐらいの位置まで二重画像が全く動きません。

そして何故かある場所だけでフォーカスリングの動きが固くなって止まってしまいスムーズに∞mまで回せません。

 

 

不思議に思ってフォーカスリング付近を精査してみると、画像のように真ん中にあるネジより左側の距離の刻印は黒色なのですがネジより左側の刻印は赤色になっています。

そして二重画像が動き出すのが黒色の3.5辺りからだという事が解りました。

最短距離が3.5mだって? そんなに遠いの?

ワケガワカリマセン

さらにフォーカスリングのピント調整位置に画像のようにネジが来る位置で急に固くなって回転が止まってしまうのです。

ジツニフシギデス

 

 

さらに精査していくとフォーカスリングにINF.=∞ の刻印がありその右にfeetと刻印されています。

ん?フィートだって?

あぁ、そうか!距離の表示はメートルじゃなくてフィートだったのか!

ということは最短距離 3.5 feet ≒ 1.05m だったんだ。

そして 50feet ≒ 15m 以上で ∞m になるという事ですか。それなら納得できます。

1949年当時日本はまだアメリカ軍(連合国軍)の占領下(Occupied Japan)にあったためヤード・ポンド法のフィートだけを使ったのかもしれません。

 

 

そして赤色の刻印と二重画像が動かない理由もわかってきました。

ピント調整=レンズ側と二重画像の合致=ボディ側との動きの連動は矢印のマウントの内側にあるヘリコイド部分の前後の動きを

 

 

ボディ側の矢印のローラーが受けて前後する事で連動します。

 

 

ところが画像のように赤色刻印の 1.5feet ≒ 45cm の位置だとヘリコイドがマウントの中に入り込んでしまっています。

これではボディ側は連動できませんから二重画像が動かないのです。

 

 

そして赤色刻印と黒色刻印の分岐点であるネジの位置がヘリコイドとマウントが面一(ツライチ)になる部分なのでしょう。

このことからフォーカスリングの赤色刻印はボディ側の二重画像(レンジファインダー)が連動しない距離(警告の赤色)を示し黒色刻印はレンジファインダーが連動する距離を示しているみたいです。

更にネジの位置でフォーカスリングが一時的にワザと止まるようにして目だけではなく操作感覚的にも解るようにクリック感を出して注意喚起しているのでしょう。

非常に凝った造りをしているのではないかと思います。

 

 

さて話を元に戻しまして、これからミラー部分を清掃してからキャノン7Sを再び組上げていきます。

これでもう三回目みたいなもんですからおっかなびっくりしながら作業するわけではありませんが、タイマー部の組み立てが面倒ですね。

 

 

ハイ!組み上がりました。

やはりこのカメラはタイマーの組み立てというかレバーの取付にクセがあります。

レバーの角度を合わせにくいというか、正しい位置に設定できないとシャッターが切れなかったり、タイマーを巻き上げても止まらずに走り出してしまいます。

 

組み上がったわけですから当然テスト撮影を行います。

このカメラのテストと共に

キャノンの35mm F1.5 と ニコンの50mm F1.5レンズのテスト撮影も兼ねます。

 

キャノン7Sは1965年の販売とレンジファインダーカメラとしては新しく、時代的にはもう一眼レフカメラに移行している時期でしょう。

そのせいか販売台数は16,000台程度と少なかったとか。

 

分解していて感じたことはとにかく造りが良いことです。

設計が古いせいなのかかなり面倒な構造をしている部分もありますが

1959年から1962年頃に生産されたホンダのバイクのように品質の良さと一緒に造り手の熱い想いが感じられました。

 

 

レンジファインダーカメラと云えばライカですよね。

画像はライカM5との比較です。

M5は1972年の販売とキャノン7Sよりさらに新しいですがcds素子の露出計を内蔵していて能力的に似ていると思われます。

好みは分かれると思いますが、私にはキャノン7Sのブライトフレームの方が使い易くて見えやすいです。ライカM5のブライトフレームは薄くて見えにくいです。

 

このライカM5は連休前にヤフーオークションに出品して落札されたのですが落札者よりブライトフレームが動かないのとファインダーの二重画像の動く方にカビが有るという事で返品されてしまいました。

戻ってきたカメラをチェックすると(この時にはもうキャノン7Sを分解していた)確かにカビは確認できましたが、ブライトフレームの方はは正常に動作していました。

ライカはキャノンと違ってレンズを装着するとレンズの長さに合わせて自動的にブライトフレームが変化します。

ですからレンズを装着しないとブライトフレームの確認が難しくなります。

落札様はその辺の事情を知らなかったようです。

当時の私はまだキャノン7Sを分解していませんでしたから「ブライトフレーム」という言葉の意味も構造も動作も全く分からなかったので検品が出来ませんでした。

ということで返品を無条件で受け入れました。

6月以降に改めてヤフーオークションに再出品するつもりです。