ヤシカのハーフ14です。

 

 

前回の無限遠調整から10日近くたってしまいしたが何もしていなかった訳ではありません。

実は3回もテスト撮影をしていまして全て失敗しているのです。

無駄にしたフィルム&現像の費用を悔いて絶望に打ちひしがれていました。

一たび自分には理解し難い想定外のトラブルが発生してしい失敗のスパイラルに陥り絶望の沼にはまり込んでいく姿をこの記事で読んでいただいて笑ってやってください。

さぁ、絶望のデスマーチが始まります。

 

 

まず2回目のテスト撮影のネガです。

まともに写っているコマが殆どありません。

露出計は動いているので私はこの時点でフィルムの巻上げ不良と判断しました。

 

 

フィルム巻上げの動作確認をするために期限切れフィルムを使います。

これからは修理が完成した後の動作確認にこの工程を追加します。

結果巻上げの異常はありませんでした。

 

ということで3回目のテスト撮影を行ったのですが、今度はフィルムの装填に気を遣い過ぎて装填に失敗してしまい撮影後の巻取り時にフィルムが切れてしまいました。

またもや失敗です。

なんか露出計の針の動きが怪しいのですが、光の明暗には反応しているので動いているとは思うのですが…。

 

 

今までのフィルム&現像代の金額を計算してガッカリしながら

4回目のテスト撮影にトライです。

しかし結果は2回目とほぼ同じでした。

 

 

ただ上から5段目のこの位置にこのコマがあることから

フィルムの巻上げがキチンと動作していることが確認できました。

それでは数少ないまともに写っているコマはどんな状態なのでしょうか。

 

 

ウォッ!

なんだこれ、素晴らしい映りをしています。

無限遠の調整をした成果が現れています。

 

 

こちらはピントが少し甘いですが暗い場所での撮影だったのでこの写りなら充分合格です。

特に右はへの中なのでシャッタースピード1/30秒以下で絞りは開放状態ですから立派なもんです。

 

 

なかなかシャープに写っています。

でも黒くなっているのは何故でしょう?

 

 

近接して撮影すると開放値F1.4らしくピントの合っていない周囲がボケます。

しかしこの黒くなるのは何故なんでしょう?

 

 

黒くなった原因を究明するために失敗して視るに堪えないネガフィルムを撮影した順番通りに並べ直してから凝視します。

ネガは反転してるので左右が逆になっています。

そしてどうやら光が少ないとフィルムは白く(色が薄く)なって

光が多くなるとフィルムは黒く(色が濃く)なるようです。

ここまでで私の頭はかなり混乱しているのですが、プリントアウト(画像に)すると光の量も反転します。つまり白黒が反転します(自分で書いていて非常に解りずらいというか混乱します。)

つまりフィルムの映像が明るい時は露出がアンダーで暗い時はオーバー気味になるという事です。

 

 

ですので件の黒い画像の意味は露出がアンダーだということが判りました。

さらに真っ黒けで映像が取り込まれていないということは『そもそもシャッターが開いていない!』という事になるはずです。

 

 

ということで電池を挿入してAUTOの位置に設定して露出計が動作しているのを確認してからシャッターを切ってみるとやはりシャッターが『全く開いていません!』

なんじゃコリャァ?

ワケガワカラン…。

そういえばシャッターの音が「カシャッ!」とか「パシャッ!」ではなくて

「ポシュン⤵」といった情けない音でした。

露出計も常時1/250秒を指しておりたまに/125秒になりますがレンズを太陽に向けても露出計は高速側へ変化しません。

ただ暗くすると低速側に変化します。

マスマスワケガワカラナイ…。

更にはたまに露出計が動かなくなります。

電池室の蓋を少し緩めると復活します。

やっぱり何かが変です。

イッタイナニガワルイノダロウ…。

 
 
念のために電池を外してAUTOの位置に設定したままで露出計が動作しない状態でシャッターを切るとなんと!1/30秒で絞り開放状態で『シャッターは正しく開きました!』
ナニソレ?
モウイヤニナッチャウ⤵⤵⤵
マニュアル状態ではB(開放)からF16まで全て正しく動作します。
以上の事から『露出計に通電されると異常が発生する』と考えられます。
露出計に通電されると書いたのは露出計本体だけではなく電池からの配線系統に問題がある可能性があるからです。
また、露出計とEE機構をリンクする部分の機械的なトラブルであればマニュアル状態での操作にも影響が出るはずです。
それにしても『電池を入れてAUTOにするとシャッターが開かなくなる』という現象は初めてのことです。
実に摩訶不思議です。
 
 

正直3回目のテスト撮影の失敗で今までかかった費用を考えるとこれ以上修理しても黒字にはならなさそうなので諦めてもうジャンクにしてしまおうかとも思ったのですが写りも良好だしマニュアルでB(開放)でもしっかりと動作しているのでもう一度分解してみることにしました。

おそらく今回もシャッターユニット辺りまで分解する事になるだろうと考えるととても気が重たくなりますが⤵⤵⤵

幸いにも部品取りが一台格安で入手できたこともありますのでダメな部品を交換する事が可能になりましたので、まぁいいでしょう。

 

 

まずは軍艦を外します。

そして電池を装填して通電させてから露出計の動きを確認してみましょう。

 

 

ン?露出計本体の針の動きがなんか変だぞ。

 

 
光を当てたら針が左に振れてくれたのだけど、光を遮っても針が右の定位置に戻りません。
 
 
どうやらシャッターボタンを押し込んだ時に針を挟み込むレバーの位置が低いようで針がレバーに引っ掛かってしまって右に戻れないのですね。
本来なら針を挟み込むレバーは矢印の方向にもっと上がっていなければなりません。
だから露出計を太陽に向けても1/250秒を示していたんです。
もっと針が左に動きたくてもレバーに邪魔されて動けなかったようです。
そして光を遮ってから何度かシャッターボタンを押してガシャガシャすると針が低速側に動く(戻る)。だから露出計がまともに動作していると思い込んでしまっていたわけです。
 
 
そこで露出計本体を固定している二本のネジを緩めて露出計を左にズラしてみました。
このネジの穴がバカ穴になっていて露出計本体が左右にズラせるようになっているのですが、一度取り外してしまうと「合わせマーク」を付けておかないと正規の位置がわからなくなります。
ですが…。
そもそも他のメーカーならこんな重要な場所をバカ穴なんかにしませんよ!
そんなことをしたら個体ごとのEE機構の露出値がズレてしまう可能性が出てきてしまいます。
おそらく細かい個々の部品の精度が悪いために露出計本体の歩留まりが悪くなってしまいその制度の差を修正するためにここをバカ穴にして左右に微調整できるようにしてたのではないかと推測するのですが、そんなことをしてしまったら誤差の範囲内で組み立てる工場の作業員さんの加減で数値が変動してしまいます!
そんな人手の手間をかけるのなら個々の部品の精度を上げて歩留まりを良くした方が製造工程での生産性が上がるような気がするのですが…。それよりも当時の人件費の方が安かったんでしょうかねぇ。なんにせよコレがヤシカのクオリティなんでしょうねぇ。
やっぱりこのバカ穴は私にとって鬼門になりました。
 
 
 
精算時にネジの緩み止めに塗布された接着剤の痕を「合わせマーク」にして露出計本体を左にズラしたらなんと針を挟み込むレバーが上がりました。
下の画像と比較してみてください。
 
 
インジケーターの針も光を当てればちゃんと高速(1/500秒以上)で止まります。
 
 
光を遮ればインジケーターの針はしっかりFlush(アンダー)の位置まで動きます。
 
そしてシャッターもキチンと開くようになってしまいました!
しかもインジケーターの針=光の量に連動してシャッター羽根の開度=絞りも変動します。
つまりたったこれだけの事で摩訶不思議な問題は解決してしまった!というわけです。
 
 
次に電池室の蓋を強く締め込むと露出計が動作しなくなる件なのですが、
ハーフ14は電池のプラス・マイナス他のカメラとは逆でマイナスアースになっています。
それが原因となっておそらく電池室の矢印の部分が破損しているため蓋を強く締め込むと電池のプラス側の電極が電池室の蓋に触れてしまい短絡(ショート)していたのではないかと思われます。
これが普通通りプラスアースになっていたら電池の構造上マイナス側の電極が電池室の蓋に触れる事はないんですけどねぇ。
 
 
左は部品取りから拝借した電池室です。
これに対して現在付いている電池室はかなりボロボロになっています。
 
 
ということで部品取りの電池室と現在付いている電池室のプラス側電極を使って程度の良い電池室を組上げます。
 
 
電池室に電線をハンダ付けします。
 
 
電池室を組付けます。
 
 
底蓋を付けて完成です。
案の定、今度は電池室の蓋を強く締め込んでも露出計は通常運転をするようになりました。
露出計本体の取付ネジの緩み止めに接着剤を使ってしまったので軍艦は明日組付けます。
 
既に3回もテスト撮影に失敗している中AUTO時だけシャッターが開かないという摩訶不思議な症状に、過去にオリンパスTRIP35であった『マニュアル時なのに赤ベロが出る』というこれまた摩訶不思議な症状に酷似していたので相当てこずるかもしくは修理不可能なのではないかとビビりまくっていたのですが、いざ蓋を開けてみれば原因は故障というよりも私自身のケアレスミスでした。
なんとも冴えないオチです。
2度目のテスト撮影の時に現像したネガフィルムと真摯に向き合って凝視してネガフィルムが白くなったり黒くなったりした原因を究明していればこれほどの大金を無駄にしなくて済んだのにと悔やまれます。
 
ということで近日中に5回目のテスト撮影をおこないますが、現在もよりもリーズナブルなお値段で現像を承ってくれる業者さんに依頼する予定なので結果は1週間以上先となります。