本日は天気が非常に良いのでテスト撮影に行くつもりだったのですが、

ヤシカハーフ14にフィルムを装填してカラ撃ちをしていたらシャッターユニットが動く(回転する)事象を発見しましたので急遽、前板が外れるところまで分解してシャッターユニットの締め付けナットを増し締めする事となりました。

このためテスト撮影は中止となりましたので

残った時間で本記事を投稿させていただきます。

 

 

露出計とASA感度は切っても切れない相関関係にあります。

という事で今回は露出計とカメラ本体にあるASAダイアルの関係について考察します。

付帯して後半で水銀電池1.35Vとアルカリ電池1.55Vの関係に付いても考察したいと思います。

 

 

中古(ジャンク)フィルムカメラを修理していて常々考えている事の一つに『露出計の露出は正しく合っているのか?』というのがあります。

というのも、レンジファインダーカメラを多数修理していると機種によっては露出計に関する同じ部品であっても歩留まりや精度の関係からか長さ・角度・厚さなどといった寸法が微妙に違っている場合があります。

また露出計ユニットをボディに取り付けるネジ穴がワザと楕円形になっていて左右方向にずらして露出計ユニットを取り付けられるようにバカ穴になっていたりします。

これらはいわゆる『誤差の範囲』と言われるもので製造上問題の無い事象なのでしょう。

しかし「塵も積もれば山となる」ということわざの如く、わずかな誤差の範囲であってもそれがたまたま積み重なってしまえば露出計のような繊細微妙でデリケートなユニットであれば正常値に対し±0.5~2.0位の露出のズレが発生する可能性があると思われます。

 

 

次にASAダイアルです。

画像は一眼レフカメラのオリンパスOM10のASAダイアルです。

基本的に25~1600までキッチリと倍倍で表示されています。

一応中間の目盛りもありますが表示の必要性を感じさせていません。

 

 

対してこちらはレンジファインダーカメラカメラのヤシカエレクトロ35のASAダイアルです。

25から800の倍倍となる値はオレンジとはなっていますが、それ以外の中間の数値も一眼レフカメラと違ってしっかりと表示されて主張しています。

一体この違いはなぜでしょうか?

私は常々この違いに疑問を持ちながらASAと露出の関係性について考えていました。

が、結論というか答えに達することはできずにいました。

 

そんなある日、

 

セミクラシックカメラの使い方動画 チャンネル紹介 Japanese Semi Classic Camera World (youtube.com)

 

というYouTubeにて1950年代後半から1970年代後半までに生産された各種カメラの使い方をうぷ主さんが自らコレクションしているであろう実機を用いて紹介してくださっている『集めるより使うクラシックカメラのキコ』というチャンネルに遭遇しました。

電池の入れ方や露出計やタイマーといった通常の使い方や構造が判らなければ修理や

分解なんてできません。

そんな時にこの動画は非常に参考になります。

この方(うぷ主)の説明を聞いいていると、この方は絶対自身でカメラの修理をしているんだろうなと思います。

おそらく当時からカメラをよく知るとてつもない技術力とノウハウを持った大先輩だろうと思います。

 

それ程の方があるカメラの使い方を説明する動画で以下の様におっしゃいました。

『実際に撮影してみて暗いなぁ、と思われましたらASAダイアルの感度を一段か二段下げてください。明るいなぁ、と思われましたらASAダイアルの感度を一段か二段上げてください。そうやって自分好みの写りになるASAダイアルの位置をみつけてください。』

と。

エッ!やっぱりそうなの?

やっぱりASAダイアルで露出の微調整(補正)をしても良いんだ!

これで私の疑問は解決しました。

 

 

今迄カメラのASAダイアルというのはカメラがフイルムの感度に合わせるためだけのものと思っていました。

45年前はエクタクローム64やコダクローム25といった変わったASA感度のリバーサル(ポジ)フィルムというのがありましたのでね。

 

ということで今まで独自に考えていたASAダイアルを使って露出の微調整(補正)をするという方法が正しいと判れば更にいろんな事が見えてきます。

 

 

当時レンジファインダーカメラやハーフサイズカメラは一般大衆向けとして安く販売して大量に生産する必要がありました。

そのためコストを優先するために各部品の品質や歩留まりについてはある程度妥協をせざるを得ません。

結果上記の様に露出計の精度にバラツキが出てしまったのではないでしょうか。

そのバラツキを補正するためにカメラのASAダイアルを使としてはうために倍倍だけではなく中間のASA感度もしっかりと表示されていたのではないでしょうか。

対して一眼レフカメラは当時としては超高級品ですから歩留まりがを良くして品質や精度もかなり高くできたかと思います。ですからASAダイアルで微調整する必要が無いので中間の数値を敢えて表示する必要が無かったのではないでしょうか。

また機種によっては「露出補正ダイアル」という露出補正専用の別の機構が付いているモデルもありましたから。

 

 

ASAダイアルで露出を補正できるとなればもう一つの問題も解決できそうです。

 

 

そうです、電池の電圧問題です。

昔から巷間で語討論されていた問題、当時の水銀電池は1.35Vだったのに

現在のアルカリ電池は1.55Vと当時より電圧が高い。

この差が露出に影響されるのではないかと。

という問題です。

 

 

じゃぁ、電圧の違いでどれくらいの誤差が発生するのか?

計算式を用いて換算値を算出してみると…。

1.35V ÷ 1.55V ≒ 87%

87% ÷ ASA100 ≒ ASA115

87% ÷ ASA200 ≒ ASA230

87% ÷ ASA400 ≒ ASA460

 

または

1.55V ÷ 1.35V ≒ 115%

115% X ASA100 = ASA115

115% X ASA200 = ASA230

115% X ASA400 = ASA460

 

となります。

まぁ、ASAダイアルを一目盛り上げれば良いのかなぁという感じになります。

ですが電線や接点が経年劣化により電圧降下を起こしている可能性があるので

この程度の電圧差であれば1.55Vで通常使用しても問題ないのではないかと私は考えています。

厳密に真剣に考えるレベルではないのではないでしょうか。

それでも気になる方はASAダイアルで更にある程度補正可能ということです

 

要するに正規な方法にのっとってオーバーホールや修理をしたからといっても露出計の精度がが100%になるとは限らないという事です。

元々の精度が100%だったかどうか自体が不明なのですから。

故に露出が合っていない時はカメラの使用者がASAダイアルで補正してください。

という事なんでしょうね。

それが当時の性能・技術という事まのでしょう。

 

巷間で語られているで古いカメラの機械式露出計とASAダイアルの相関関係に対する認識というか概念は少々違うのではないでしょうか?

機械に人間の考え方(理想)を押し付けるのではなく、人間が機械に寄り添うことで機械の足りない部分をフォローしてあげるべきではないのかと思います。