キャノンのデミ EE17です。

 

 

昨日はこの個体がどのくらいのコンディションなのかを確認するため検品してみました。

検品の結果はとてつもなく程度がよくフィルム室などはフィルムが装填されたことが無いのではないかと思えるほどきれいでした。

こんな極上品が自分の物になった。

そんな理由で感動して喜んでいるのではなく

60年近くにも亘って良くもこのような程度を維持して生き残っていてくれたことに喜び感動して興奮しています。

 

また検品の結果、AUTO時の絞り羽根の動きが渋かったので、前板に手を触れる事ができるレベルまで分解するつもりです。

 

 

シャッターレバーを取り付けてる化粧ネジをカニ目スパナで外します。

この時にカニ目スパナを滑らせてネジに傷を付けないように注意します。

 

 

ネジを外すと複数のワッシャー類が出てきますので、順番を忘れないように撮影するのもアリです。

 

 

レバーを外すとワッシャーが出てきます。

これはすき間調整用のシムワッシャーのようです。

大体は一枚なのですが今回は二枚入っていました。

 

 

フィルム巻上げハンドルの軸部が二つに割れている部分に画像尿にピンセットやドライバーを差し込んでハンドルを緩めます。

 

 

こちら側のワッシャーはすき間調整用ではなく既定のようです。

 

 

タイマーのレバーを取り外します。

 

 

軸部に画像のようなスペーサーが入っているので紛失防止のために取り外しておきます。

 

 

革を剥がします。

冬場など寒くて剥がれにくい時はヘアードライアーで暖めると剥がれやすくなります。

剝がれやすいようにとシンナーを併用されている方をたまに見ますが、私の経験ではシンナー(有機溶剤)を併用すると革がかなり傷みました。

ですから私は有機溶剤は使いません。

 

 

時間をかけて丁寧にゆっくりとやればこの様にカバーを傷つける事無く綺麗に剥がせます。

四本のネジを緩めてカバーを外します。

 

 

上側は簡単に外れます。

 

 

下側はタイマーのシャフトがカバーに接触するのでコツがいります。

カバーを傷つけないように慎重にゆっくりと。

 

 

カバーが外れたらお次は軍艦です。

もう外してしまいましたが後三本と左右の側面各一本の合計五本のネジを外します。

そしてフィルムカウンターの爪を中に押し込んで右側だけを上に引き上げるような感じで取り外していきます。

取り外したらシャッターボタンを回収しておいてください。

 

 

これで裸になりました。

こうして各機構の部品を見ると恐ろしいほど綺麗です。

信じられません。

 

 

底蓋の取り外しは最初に電池室の蓋を取り外してから四本のネジを緩めます。

 

 

外すとこのようになります。

いやぁ~、なんですかコレ?

各部がピカピカですよ!

ASAダイアルの接点部分なんか汚れどころかスライド(回転)させた傷痕すらすらありません。コレ、本当にデットストックの新品に近い状態なのではないでしょうか。

あと矢印の部分にある黒い物体はモルトの残りカスです。

 

 

 

このようにASAダイアルの外周に沿ってモルトが貼り付けてあったのですが、遮光のために貼ったというよりもゴミや異物の混入を避けるためだったように思います。

モルトは経年劣化で加水分解を起こして周囲の金属を腐食させてしまいます。

一番有名なのがオリンパス OM-1のプリズムの腐食です。

遮光の為(本当に必要なのかな?)にプリズムの外周部に貼られたモルトが加水分解する際にプリズムの蒸着部を腐食させてしまいます。

ですから私は遮光の為に貼られたもの以外、今回のような場合や遮光を防ぐために予備的に貼られたようなモルトは再貼り付けはしません。

 

 

電池室の電極と電線コードのハンダ付け部です。

これまた新品かと見紛うような美しさです。

 

 

前玉部の分解はまずこの薄いリングをカニ目スパナで緩めます。

 

 

リングを外すと

 

 

絞りリングが外せます。

そしてその下にあるもう一枚のリングも外します。

 

 

次に前玉を外します。

今回はやりませんがレンズを分解する際は矢印の部分に接着剤の後があるのでシンナーを数滴垂らしてから緩めた方が簡単です。

 

 

カニ目スパナで緩めます。

結構固いです。

 

 

菊ナットを緩めて鏡胴を外すのですがその前に矢印のネジの頭が半月上になっているので平らになっている部分を菊ナット側にしてから緩めます。

 

 

シャッターダイアルを外します。

 

 

シャッター羽根の一部に汚れが確認できます。

 

 

シャッター機構の動きを確認するため一時的にシャッターレバーを取り付けます。

 

 

あれっ、AUTO時のB(開放)でもチャンと動作すようになちゃった!

チャンと動くんだったらこれ以上分解する必要は無いかなぁ…。

と思ったのですが絞り羽根に油染みのような汚れがあります。

この状態でシャッター羽根ごとベンジンで洗浄しようかとも思ったのですが

そうすると後玉を外さなければならないのですが、この状態で取り外そうとするとカニ目スパナが引っ掛かる部分がダメージを受けます。

ここまで程度が良いのだからそれは避けたい。

となると前板を外す の一択です。

 

 

前板を外す前にまず巻上げレバーとの連結を解除します。

矢印のスプリングとEリングを外します。

 

 

このように前板側から出ているバーをフリー状態ににします。

 

 

配線コードに余裕を持たせるために電池室をフリー状態にするため日本のネジを緩めます。

 

 

前板を取り付けている四本の内の一本が露出計の裏にあってアクセスできません。

結局露出計を取り外すために三本のネジを緩めます。

 

 

ストロボの配線もファインダー下のこの銀のプレートで留められているためファインダーも取り外します。

ヤッパリ横着は出来ませんねぇ。

結局いつもと同じ作業工程となってしまいました。

 

 

このフォーカスインジケーターの針を曲げてしまいやすいので保全のため前板から取り外します。

 

 

このように取り外してケースに入れておきます。

 

 

前板が外れました。

 

 

後玉を抜きます。

ですがこのままだとカニ目スパナが掛かりません。

 

 

そこで内側の溝を少し緩めて外側の溝と一直線にしてからカニ目スパナで緩めます。

 

 

後玉が撮れました。

 

 

やはり絞り羽根の後ろ側にも若干の油染みがありますね。

この状態でシャッター羽根諸共洗浄します。

 

 

シャッター羽根の洗浄完了です。

 

 

絞り羽根の洗浄も完了です。

 

 

後玉を挿れます。

 

 

フォーカスインジケーターの指針を取り付けます。

 

 

前板を乗せて四本のネジで固定します。

 

 

露出計に付いている二つのレバーを連動するようにセットして露出計を取り付けます。

 

 

電池室を二本のネジで取り付けます。

 

 

巻上げレバーと前板のリンケージをEリングで繋ぎます。

リターンスプリングを前板のバーに引っ掛けますが、外れないように引っ掛けた部分に接着剤を塗布します。

 

 

 

さて、ここでEE17の無限遠の調整について考察します。

 

 

部品取りになてしまったEE17の前板をつかって考察していきます。

 

オリンパスのペン や コニカ アイ シリーズのフォーカス機構は前玉がヘリコイドに直結していて前玉自身が回転する事で前後に動いてピントを調節しています。

ですから前玉を回転させることで無限遠の調整が簡単に行えました。

 

しかしヤシカのハーフ シリーズやEE17は画像の様に前玉はシャッターユニットに乗っかって取り付いていてヘリコイドとは繋がっていません。

フォーカスリング=ヘリコイドが回転すると前玉はシャッタユニットと一緒に前後する事でピントを調節します。

 

 

 

このようにシャッターユニットと一緒に前玉が前後しています。

無限遠の調整は簡単に言ってしまえばフォーカスリングとヘリコイドの連結を解除してヘリコイド=前玉の位置を前後にズラして調整するという事です。

しかし、

この構造だとフォーカスリングの連結を解除してしまうとヘリコイドに直接アクセスるのが非常に難しく、ましてや回転させる力をヘリコイドに与えるのは非常にむずかしくなります。

前板だけの状態にすればアクセスは可能ですが、フィルム室と前板を分離してしまっては本末転倒です。

以上の理由からヤシカでは無限遠の調整が出来ませんでした。

 

 

ですがEE17の場合フォーカスリングの連結を解除してもヘリコイドリングにアクセスできそうなのです。

画面赤←の部分にある程度すき間があり水色←のヘリコイドリングが現出しています。

更にヘリコイドリングとフォーカスリングを連結している三本のネジにもアクセスできそうです。

黄←はその三本の内の一本です。

 

 

前板をボディに搭載した状態の実機です。

ヘリコイドリングに手が届きそうです。

 

 

 

フォーカスリングとヘリコイドリングを連結させている三本のネジにも手が届きそうです。

部品取りにな

ってしまったEE17の前板でリハーサルをしてみます。

 

 

それではまず、現在の無限遠を示す「合わせマーク」ケガキ針でケガキます。

それから三本のネジを緩めてみます。

その前にフォーカスリング側の無限遠の位置はこの二つのピンで決められています。

 

 

ヘリコイドリングをフリーにすることに成功しました。

画像では見えにくいですが「合わせマーク」がズレています。

 

これで無限遠の調子は可能である事が判明しました。

今日はここまでです。

次回は実機にて無限遠の調整にトライします。

 

 

追伸なんですが

部品取りの前板と

実機の前板部分を比較してもらえば

実機がいかに綺麗なのか、そのオーバースペックぶりが判ると思います。