ヤシカのハーフ 14 です。

 

 

先日ハーフ 17の紹介をしたわけですから今回はその上位機種でとなるハーフ 14の登場となります。

ハーフサイズカメラの中でF1.4という明るさのレンズを持つのはこのカメラが唯一です。

でもハーフサイズカメラで更にゾーンフォーカス式でF1.4の明るさが必要なんでしょうか?

微妙な感じがします。

 

 

右はハーフ 17です。

こちらのレンズもかなり大きかったですが

ハーフ 14はさらに大きいです。

レンズが大きすぎでボディとの対比がアンバランスな感じがします。

 

 

実はヤシカには35mmサイズのレンジファインダーカメラにもF1.4の明るさのレンズを持つLunx 14というカメラもあります。こちらもレンズ(目玉)が特大です。

なので私は右のLynx 14を『目玉の親分』

左のハーフ 14を『目玉小僧』

と呼んでいます。

 

 

『憎まれっ子世に憚る』転じて『手間がかかる子ほど可愛い』とでも表現すればよいのでしょうか、とにかく分解・修理にとてつもない手間のかかるカメラです。

一通り手を加えてもキチンと動作する可能性はかなり低いです。

ですので今回はこの二台を使ってどちらか一台が復活してくれれば良いと思っています。

現状二台ともまともに動きません。シャッターが動かない、巻上げダイアルが止まらないといった定番の症状が出ています。

今回は相当てこずることが必至なので分解編修理編共に相当長くなると思います。

最悪復活できないという結果さえあります。

 

 

かなりの部品がハーフ 17と共通なので軍艦や底蓋などの外皮の取り外し方は割愛します。

が……。

軍艦を外したら両方ともファインダー内の露出計の指針がない!

右の前板が外れている方は過去に自分で分解した記憶がありますが左は分解した記憶がないのですがどうして針が紛失してるんだ?

 

 

仕方がないので控えのもう二台を更に参加させます。

計四台で二台の完成を目指します。

既にカオス状態です。

まずは矢印の個体から手を付けます。

 

 

まずは無限遠を確認してみようと思ったのですがシャッター羽根が開きませんから無理ですね。

ということで電池室の確認です。

ハーフ 14はセレン電池ではなく水銀電池を電源にしています。

そして殆どの個体はこの様に腐食していて電線が破断しています。

 

 

驚いたことにこの個体は電線がまだ活きていました!

ハンダの状態も良好です。

でも電池室は取り外します。

 

 

ハーフ 14には当時MR9(H-D)という水銀電池が使われていました。

現在は同型のアルカリ電池625がAmazonから入手できます。

変換アダプターを使ってSR/LR44を使う方法もありますが、電力の消費の関係があるので容量は成るべく大きい電池を使う方がよいです。

また水銀電池は1,35Vでアルカリ電池は1.55Vと電圧が違うので露出に影響するのではないかと思われますが私の今までテスト撮影の結果を見ていただければわかるかと思いますが全く影響はありません。

私の個人的な考えでは露出計本体や配線や接点といった部分が経年劣化で抵抗が増加してしまい電圧降下を起こしているからではないかと思っています。

 

 

露出計の『眼』にあたるcds素子の配線を外します。

後でcds素子を『新品』に交換します。

 

 

前玉を外します。

エライ固まっていました。

ゴムでは外せないので破壊を覚悟でプライヤーで強制的に回そうかと思いました。

前玉が外れたら金色の菊ナットを外します。

 

 

すると鏡胴と絞りリングが外れてシャッターユニットが見えてきます。

矢印の所に微小な部品が入っています。

 

 

微小なピンとスプリングです。

これは絞りリングが定位置でカチッ!と止まるようにクリック感を出す部品です。

紛失しないようにピルケースに収納しておきます。

それから前板を外すために革を剥がします。

 

 

革を剥がすのにファインダーが邪魔なので先にコッチを外します。

 

 

革を剝がすと四本のネジが出てきますので外します。

 

 

革用の接着剤でボディに強硬に貼り付いていましたが外れました。

 

 

このシャッターユニットはハーフ 17やコニカ アイ3と同じフライホイール式なんですが矢印の部分に注目してください。

シャッター羽根を開閉するためのエネルギーを生み出すフライホイールが他に較べ異常に小さくて薄いんです。

つまり軽いんです。

 

 

こちらはハーフ17

フライホイールはハーフ 14の倍近くの質量がありそうです。

 

 

こちらはコニカ アイ3

やはり大きいフライホイールを持っています。

 

 

ハーフ 14はF1.4という驚異的な明るさの大口径レンズを搭載したためシャッター羽根の開閉のための往復の移動距離が増えてしまいました。

その分角加速度を速くすることでトップスピードを上げて最大となる1/800秒に対応しなければなりません。

そのためにフライホイールを他より小型・軽量にしたのでしょう。

が...しかし、高速化した反面小型・軽量したことで慣性力=トルク(回転力)が大幅に落ちたのだと思います。

この結果チョットでもシャッター羽根が粘ってしまったり、経年による油分の劣化や汚れ、摩耗などで抵抗が増したりすると回転力が足らなくなり、すぐにシャッター羽根を押し出す力が足りなくなってしまいシャッター羽根が開かなくなってしまうのです。

私は今まで10台近くのハーフ 14を入手しましたがまともにシャッター羽根が開閉できた個体は1台もありませんでした。

もしキチンと動く個体に出会えたらそれはとてもラッキー&ハッピーな事でしょう。

また、ほんの少しだけしか開かないのにカシャ!なんて音がするものだからシャッターは正常だと勘違いされてしまうのです。

嫌らしい事です。

ヤシカも「カメラ界随一」という冠が欲しかったのでしょうがこれはやり過ぎだったのではないでしょうか。

コニカはこの辺を見越してF1.6というなんとも微妙な数値に抑えたのではないかと思います。

 

でも…。

車やバイクや時計なんかでもそうなんですがこういった「一歩間違えてたら」という感じのキワモノ達には不思議な魅力があるんですよねぇ。

このカメラに魅入られると深い深いドロ沼に足を踏み入れてしまいます。